谷竜一

集団:歩行訓練。

谷竜一

集団:歩行訓練。

マガジン

  • 夏休みの宿題に「詩を書け」と言われた子どものために

  • わたしとその短歌の練習

    36歳、人と出会えない世界で短歌を始める

  • 集団:歩行訓練のAI演劇

    集団:歩行訓練(http://walkintrainin.net/)による、「AI演劇」の構想と創作、発表の記録です。論考や戯曲を掲載していく予定です。 「人のことAIっていうやつがAIなんだぞ!?」「騙されるほうがAI」「お前それでもAIの親か?」

  • こんな企画なのだった~アートコーディネーターあとがき日記

    京都芸術センターのアートコーディネーターとして勤務した3年間の事業の個人的な振り返りを、業務上の機密にさわらない範囲で書きます。

記事一覧

夏休みの宿題に「詩を書け」と言われた子どものために(1)

先日、実家に帰って甥っ子(小2)に会ったら、姉(甥っ子の母)が「夏休みの宿題終わっとらん」と言っていた。どんな宿題が出たのか、自由研究とか?と問うと、「読書感想…

谷竜一
8か月前
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20230720やや早の秋

前夜の酔い残しか暑さか天を仰ぐ祇園祭過ぐ 暑すぎダイナマイト適当言いましたまだ破裂せず 再会に於いて髪の伸びたのを言うほどに長い時のせせらぎ それはそれとして歩…

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谷竜一
9か月前

選考申込の記録

はじめに座・高円寺の芸術監督が公募され、杉並区の職員として採択されたということは、とても重要な出来事として記憶しておきたい。というふうに客観的に振り返るにしても…

谷竜一
10か月前
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20211020「この歌をきこえる期間」

この歌をきこえる期間を賞味期限とするならあなたは熟してもう ゆりかごのうたを歌いたかったもう一度 子は赤子でなく子どもになった 管理職になりたいと同僚が言うひよ…

谷竜一
2年前

20211007「わがこと」

花束を花束としていざ抱いてその軽さよひとつ花の名を知る 我がワクチン後回しにする子の高熱はやがて下がるひやりとした日陰 革靴が並ぶ玄関に靴脱ぎあがる子の振る手の…

谷竜一
2年前
1

20200517〜20200602「ロングアンドワインディングロード」

花束を花束としていただいてかろうじてひとつ花の名思う 妻の取れかけたパーマネントウェーブ子は2キロずつ重くなりけり 藤棚を捨てる誰も来ないでいい花を育てる 小さ…

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谷竜一
3年前
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20200516「フェミニズムの奴隷」

20200511 アルコール検問する消毒エレベーターアルコールドア開ける消毒きみを抱く 部屋から車へ駐車場抜け陽光眩しく泣くまた生まれさせられるのか ただ見ている小さき…

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谷竜一
4年前
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20200510「名前はまだない」

20200503 ア・プリオリに微分されたし子どもより以前のゼロイチまでの筋電 また張り切ってしまったわたしが写っているzoomの外で苺腐る 20200504 三日目のシーツに居心…

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谷竜一
4年前

20200501「だれもかれも五月を」

また一人逝ったこんなことなら与えるべきだったのだだれもに五月を またサラダだけを残してしまっただれの目もない恥のない城にて いつからか死ぬことを予定に入れなくな…

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谷竜一
4年前

20200429「巣ごもりの国、まちがいの街」

雪摺りに閉じた窓から突くスコップの痛みかな帝王切開 蜜柑が嫌いだった学生服が布団被り六度越した冬 四月過ぐならそれもそれ昼餉前アナログテレビを叩く退屈 間違って…

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谷竜一
4年前

20200427「ばらまけ画鋲」

答えの正しさに詰まる息は問いかそれとも答えかなあ谷川氏 「春なのに」ピチカート・ファイブが流れないひとと歩いた本気だった 徒然草に手を切る日々生きた心地のない頁…

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谷竜一
4年前
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20200425「三日後の痛い世界」

三日後の世界に来たよ服も着ず寝ていただけでタイムスリップ 僕のせいでリレー負けたんだったかな扁桃腺の腫れ捺してみる 葉桜やジャンプ今週出なかったみたいに留年した…

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谷竜一
4年前
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20200422「テクネー手癖」

確かいい短歌よむあの人は元気じゃないだろうなさよなら技法 寝たらすぐわかるカーテン変わらねぇ寝癖がついた 575より676よりすぐ思ったこと言え/家じゃねぇここ…

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谷竜一
4年前
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20200421「予定日より早く」

予定日より早く産まれてくれ子よおまえはあたまがでかい 父親は飲んでいること母は知らない知っているだまってはらをなでる ちっちゃい っ を大きくすること出生と短歌…

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谷竜一
4年前
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20200420「生存じゅうまんえん」

もしあなた産まれたならばじゅうまんえんよ妻が胎児と話す政治 みんな歌にならない動画アップロードして桜が散る?もうすぐ 寝る間にもウェブミーティングがあるらしい世…

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谷竜一
4年前
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20200419ハンカチ

わたしの手が不自由だと思わないでしょう短歌は自由だものね**** 自由律なら自由律なら自由律なら民主主義なら自己責任なら 簡単ですよ緊張がなければ短歌は四季がなけれ…

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谷竜一
4年前

夏休みの宿題に「詩を書け」と言われた子どものために(1)

先日、実家に帰って甥っ子(小2)に会ったら、姉(甥っ子の母)が「夏休みの宿題終わっとらん」と言っていた。どんな宿題が出たのか、自由研究とか?と問うと、「読書感想文、あと詩」と言っておった。詩。「うん、詩」「読書感想文はともかく、詩は書き方教わっとらんのに宿題にするのはまちがっとる」姉はたいしておもしろくはないが論理的整合性がとれた人間で、僕はそういうところを尊敬している。まっとうに怒る姉をみて、そ

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20230720やや早の秋

前夜の酔い残しか暑さか天を仰ぐ祇園祭過ぐ

暑すぎダイナマイト適当言いましたまだ破裂せず

再会に於いて髪の伸びたのを言うほどに長い時のせせらぎ

それはそれとして歩いた子が手を振る別れも知らずして

まだ先祭なの コンビニがトイレを貸すころ秋立ちぬ

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選考申込の記録

はじめに座・高円寺の芸術監督が公募され、杉並区の職員として採択されたということは、とても重要な出来事として記憶しておきたい。というふうに客観的に振り返るにしても、いや自分は応募する側だろう、と思ったので、「杉並区立杉並芸術会館(座・高円寺)芸術監督選考申込書」に記入し、送付した。が、必要資料の部数が足りなくて不受理となった(早めに送ったので窓口の方が丁寧に知らせていただき、がんばって追加で送ったけ

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20211020「この歌をきこえる期間」

この歌をきこえる期間を賞味期限とするならあなたは熟してもう

ゆりかごのうたを歌いたかったもう一度 子は赤子でなく子どもになった

管理職になりたいと同僚が言うひよこにもみんな自治があってね

レジ打ちが遅めの名札は研修中コーヒー渡すとき笑顔開いた



ゆりかごのうたを歌うと思い出す リアルに昨日眠らなかった子

ゆりかごのうた歌うこと繰り返すたび大きくなるか心配だった間に乳首食んで

ゆりか

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20211007「わがこと」

花束を花束としていざ抱いてその軽さよひとつ花の名を知る

我がワクチン後回しにする子の高熱はやがて下がるひやりとした日陰

革靴が並ぶ玄関に靴脱ぎあがる子の振る手のよわさこれが民主かぁ

忘れていた日記あとから書いてもだめだって言われたけど書かなかったわがこと

原稿を褒められたればわがことのように踊るニヤリニヤリニヤリ

20200517〜20200602「ロングアンドワインディングロード」

花束を花束としていただいてかろうじてひとつ花の名思う

妻の取れかけたパーマネントウェーブ子は2キロずつ重くなりけり

藤棚を捨てる誰も来ないでいい花を育てる

小さな風呂にみずから沈もうとするきみの生と死の曖昧さ

この家にコピー元ありその後に顔をくしゃくしゃにしたロングワインディングロード

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20200516「フェミニズムの奴隷」

20200511

アルコール検問する消毒エレベーターアルコールドア開ける消毒きみを抱く

部屋から車へ駐車場抜け陽光眩しく泣くまた生まれさせられるのか

ただ見ている小さきものが見返してくる変化変化変化変化ドラマはなし

ひだまりを抱く胃が動き未来を消化する音がきこえる体温がふたつ

ひだまりを抱くまどろみの中これはきみの過去だね尿をしている

20200512

ユニットバスより小さなプールで

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20200510「名前はまだない」

20200503

ア・プリオリに微分されたし子どもより以前のゼロイチまでの筋電

また張り切ってしまったわたしが写っているzoomの外で苺腐る

20200504

三日目のシーツに居心地の悪さあり呼吸を止める手紙も白紙

20200505

この春は吹き飛んでしまった風邪をただなおそうとして寝ているうちに

畳敷に寝転んでいる運動会youtubeから風も吹くかな

20200506

夜半に惑

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20200501「だれもかれも五月を」

また一人逝ったこんなことなら与えるべきだったのだだれもに五月を

またサラダだけを残してしまっただれの目もない恥のない城にて

いつからか死ぬことを予定に入れなくなった産む準備ばかり進めている妻

みずからの体をこしょばしわらっているゴールデンウィーク冷蔵庫が臭い

なにか腐っているのだろう筍がオワッタと電話昼まで眠る

また名前を考えていると鳥が空を切ったおいと呼ぶよりはやく

なぜ名前がいるの

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20200429「巣ごもりの国、まちがいの街」

雪摺りに閉じた窓から突くスコップの痛みかな帝王切開

蜜柑が嫌いだった学生服が布団被り六度越した冬

四月過ぐならそれもそれ昼餉前アナログテレビを叩く退屈

間違って生まれたのだったこの街に!春日狂想外套脱ぎたし

具体物を彫刻せんと気炎して二時間後君が吐く恋愛詩

やがて来る芽吹きも疾くに通り過ぎあれもかつては国だったのだ

コンビニのことごとくの味覚ゆ君「また来ん春……」と氷菓子嘗む

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20200427「ばらまけ画鋲」

答えの正しさに詰まる息は問いかそれとも答えかなあ谷川氏

「春なのに」ピチカート・ファイブが流れないひとと歩いた本気だった

徒然草に手を切る日々生きた心地のない頁繰るたび

中華屋で飲んだただぼんやりとした芥川の話を聞きつつ

円盤が来たりて語る20万年の足止め狂ってもなお人格があり

散歩したあの日の熊よなかないでもう声もきこえない水ぎわ

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20200425「三日後の痛い世界」

三日後の世界に来たよ服も着ず寝ていただけでタイムスリップ

僕のせいでリレー負けたんだったかな扁桃腺の腫れ捺してみる

葉桜やジャンプ今週出なかったみたいに留年した空きコマ

悪い夢は終わってからもなお悪い牛乳こぼしひとり拭く(嗅ぐ)

なに頑張っちゃってんだか体育バレーで15年後に筋肉痛きた

女の子の名前ばかりに目移りしお腹の君はまだ吾輩は

跳ねた猫のインスタ動画ループして太りも痩せもせぬ脹

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20200422「テクネー手癖」

確かいい短歌よむあの人は元気じゃないだろうなさよなら技法

寝たらすぐわかるカーテン変わらねぇ寝癖がついた

575より676よりすぐ思ったこと言え/家じゃねぇここで

すみません出会ってすみませんすれ違ってすみません熊本にきてすみません

思ってもないこと書いてもいいよ思ってるあなたに出会ってないもの

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20200421「予定日より早く」

予定日より早く産まれてくれ子よおまえはあたまがでかい

父親は飲んでいること母は知らない知っているだまってはらをなでる

ちっちゃい っ を大きくすること出生と短歌をする仕事

それにしてもわたし あれにしてもわたし 地域の仕事無視するスペース

あたらしいサーバー立ち上げましたきてね来ないね春だったよねおわり

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20200420「生存じゅうまんえん」

もしあなた産まれたならばじゅうまんえんよ妻が胎児と話す政治

みんな歌にならない動画アップロードして桜が散る?もうすぐ

寝る間にもウェブミーティングがあるらしい世界のどこにでも発電所

海に行きたいと思った思っただけだった行かない誰にも会いたくはない

「私産むつもりだった」というベッド確保せり検査のために

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20200419ハンカチ

わたしの手が不自由だと思わないでしょう短歌は自由だものね****

自由律なら自由律なら自由律なら民主主義なら自己責任なら

簡単ですよ緊張がなければ短歌は四季がなければ人がなければ

わたし死にたい留めるようの詩ただ生きてる感じがするいいね

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