ラヴィル

謎 オバサンであることは確か。そのほか様々です。 散歩が趣味です。過去一興奮した散歩は…

ラヴィル

謎 オバサンであることは確か。そのほか様々です。 散歩が趣味です。過去一興奮した散歩は秋の上野恩寵公園散策。楽しかったなぁあれ…と今も興奮が胸に蘇ってくるほど楽しみました。 音楽も大好きです。 ただいま恋愛してない今は。

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連載小説。①仮題:「網代裕介」

(今書いています。 具合もよくなってまいりました。イントロダクション、読んでね) 「網代裕介」  以前は夫がいて、黄色いセキセイインコとトラ柄のメスの猫の世話をしながら暮らしていた。  空気は黄色っぽくて、少し濁る。性格の明るいインコの鳴き声や食器と食器のぶつかる音、夫の背中の向こうのテレビからゲーム音楽が流れている…私の暮らしだ。通学路のような日常的なもの。怖さなどないはずの暮らし。けれど、今思い出すと怖くなる。当時は怖さが隠れていただけだろう。  私に栓がされてい

    • 君がいて僕は嬉しい②

       クリーム色のシーツの掛けられた広いベッド、アンティークな水色の3人掛けのソファ、白っぽい木製の背の高い本棚、小さなテーブルと2客の椅子…が静かに、落ち着いて置かれている。部屋は生まれたての赤ちゃんのように明るい。まるで明るい光が今にもあふれ出しそうなのだ。壁際に置かれたベッドの上の方に窓があり、水色の空が映る。空間がそこだけ裂けているようにも見える。  この部屋のように私も落ち着いている。それなのに、今にも気を失いそうな上ずった気分もある。うかうかした奇妙な気分だ。 「俺の

      • 君がいて僕は嬉しい①

        寝ていたら起こされたという感じだ。とても明るい、気持ちのいいところで目覚めた。目を開けるととても真剣な表情の佐伯君が立っていた。 「あら?」 「起きた?おそらくずいぶん長く寝ていたんだよ。気分はどう?」 「それが…ちょっと信じられないくらい気分がいいの。端的に言って気持ちいい。びっくりだわ。だってね、私気分がよかったことなんて生まれてから1度もなかったんだもの」 「それは…寝ているときも?」 「わかんない。だってその時寝ているもの」 「まあ、そりゃそうか」 私は急に汗をかきだ

        • 連載小説。仮題「網代裕介」⑬(最終話)

           翌日の午後のことだ。ナースステーションの脇に患者が数人集まり、笑い声が起きていた。明るい笑い声だった。デイルームがペヤングの匂いでいっぱいだと言って笑っているらしかった。網代君がいつもの席でうつむいて割りばしで焼きそばを食べていた。私は立ち止まることなく網代君に近づいて、「お帰り」と言いながら、正面の椅子に座った。 「やっぱりあのお湯は100度ないな。だけどそういうお湯で作ったペヤングがダメかというとそうじゃない」 網代君はデイルームにある給湯機のお湯でペヤングを作ったらし

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        連載小説。①仮題:「網代裕介」

          連載小説。「網代裕介」⑫

           網代君を見送り、ひとりで病棟に引き返した。建物のドアの前で立ち止まり、なんとなく空を見上げた。空が高いなと思う。田園の秋の空だ。憂鬱な関東のはずれ。どんな季節にも贅沢さなど感じることもない。そこまで惨めでもない。そういうものだと言いたげな、水中に沈む田園の都市に建つ精神病院で暮らしている気がする。ドアがやけに重かった。 その日、私は静かだったと思う。言葉が口まで上ってこないのだ。まあ、言わなくていい…そう思ってしまう。口を結んで過ごした。しゅんっとした気持ちで自分を守って

          連載小説。「網代裕介」⑫

          連載小説。仮題「網代裕介」⑪

           旅行の日の朝も網代君は早朝の勉強を欠かすわけではない。コーヒーを飲み終わるころ、デイルームは昇り詰めるみたいに明るさが増し、ごちゃごちゃと散らかり、賑やかになる。二つ置かれたテレビから、朝のテレビ番組が流れる。その日の占いについて、誰かが不満を言い、誰かが歓声を上げる。じゃんけんに生真面目に応じる中年の男性がいる。いつも通り朝食を済ませ部屋に戻り、膝を立ててベッドに座った。外を眺めると、明るいひらけた景色が見える。職員も患者も車で来る人が多く、広い駐車場に様々なステイタスの

          連載小説。仮題「網代裕介」⑪

          連載小説。仮題「網代裕介」⑩

           網代君の、「兄貴と結婚してくれ」という言葉を聞きながら、顔を上げて網代君を見た。私もよく若いと言われる。網代君の顔付きに幼さが残るのはなぜなのだろうと考える。きっと私にもこんな幼い印象があるだろうなとも思う。  すぐに思い出せる実家の雰囲気がある。リビングのフローリングの種類、その色合いや、素足でそれを踏んだ時の足の裏の感触や温度、そこに流れていた通俗的なドラマの効果音。奇妙な覚醒がある。当時家中の灯りをLEDに変えたばかりだった。暗いような気も、明るすぎるような気もする。

          連載小説。仮題「網代裕介」⑩

          連載小説。仮題「網代裕介」⑨

           私がスタッフのひそひそとした会話によく登場したのは仕方がなかったのかもしれない。私だけが朝から夕方まで外出し、髪の毛を染めて病棟に帰ってきたりした。たまにネットカフェで1日中寝ていたこともあった。S医師は私に依怙贔屓をした。それは関係のせいというより、教育的な気持ちからだ。特別な扱いがその時の私にはおそらく必要だった。けれどそれは私に副産物をもたらした。しばらく自意識を持てあました。あの快感を知っている幼女みたいな苦しみと似ていたかもしれない。  崩れそうになることがよく

          連載小説。仮題「網代裕介」⑨

          連載小説。⑧「網代裕介」

           何かのはずみに傷つく私の「傷ついた」という顔が、人を辛くさせることを自覚していた。我慢し、傷ついていないという顔をする。その頭痛を堪えているような表情が私をいまにも壊れそうに見せてしまう。それを自分でよくないと思うのに自分でもどうにもできない。  こっちへ寄るなとヒステリックな気持ちで頭を抱えることがよくある。意識がふと途切れるような頭の痛みをいつもどこか遠くに感じている。しょうがないと溜息をついてみせるとか言い訳だとか偽ることで自分を守るとか…そんなごちゃごちゃした乾いた

          連載小説。⑧「網代裕介」

          連載小説。⑦「網代裕介」

           自分の潔癖さの原因はおそらく幼児期の性的な体験だ。幼女の私はその快感を知っていることを隠していた。知っているという意識が自分という存在に価値があるような高揚に繋がることもは稀で、常にあったのは、汚いトイレの踏むのが嫌な汚れが自分みたいなものだという、人や世の中への引け目だった。この先は何もかもが枯れるのだし、もう諦めるしかないのだという憂鬱の下で耐えていた。それを隠さなくてはと思って無邪気さについて研究し、振舞った。一人で田んぼの蓮華を見ているのが好きだった。  東北のイタ

          連載小説。⑦「網代裕介」

          連載小説:⑥「網代裕介」(改訂したもの)

           作業療法で私はお正月のイラストに絵を塗っていた。男の子の着物を紺色で塗っていると、何か大きなものが床に倒れるような音がした。見ると、手芸をしていた石井君が床に首から血を流して倒れていた。首が曲がり顔は横向きだ。目は開いている。石井君は名簿に石井と書き、鋏を受け取ると、そのまま首を切ってしまったらしかった。M医師とS医師がすぐに現れ、石井君の首の処置を始めた。「えらいことだ」と言いたそうな顔のスタッフが救急車の話を口早にする足下で二人の医師は床にしゃがみこんで泣きべそをかく子

          連載小説:⑥「網代裕介」(改訂したもの)

          連載小説。⑤「網代裕介」

           建物の1階には職員の休憩所や食堂、検査室がある。検査室の前に長いソファが2つ続いて並び、ソファのある壁の上部には名画のレプリカが立派な額に入れられ飾られていた。モネ、セザンヌ、ピカソ。モネは睡蓮のだし、セザンヌは幼い女の子のいつもの肖像画だ。ピカソは比較的写実的な女性の絵だった。そしてそれはとても素晴らしい絵だった。そのソファにいつも中年の菊池さんという女性が座っていた。菊池さんは痩せて背が高く、リュウマチを患っていた。子供のような可愛い人で、主治医を心から愛していて、主治

          連載小説。⑤「網代裕介」

          連載小説。④仮題:「網代裕介」

           栄養を摂り、ぐっすり眠り脳の細胞を育む。それが病気を治すコツだ。陽が沈むと、脳の神経細胞が伸び始める。神経細胞は曲がりつつ伸びていき、隣と繋がったり、絡み合い、ほどけなくなったりもする。  静かな植木のその地中に伸びる根。鉢から抜き、その根が頑丈に、意固地に、憎たらしく絡み合うのを見た時、我に返り、心臓が脈打った。本音とか夫婦のセックスみたいなもの。脳の神経細胞はまるでそんなふうなものなのだ。  消灯後の静かな病棟の様子を知ることは誰にも稀なことだった。睡眠薬がよく効くから

          連載小説。④仮題:「網代裕介」

          連載小説。③仮題:「網代裕介」

           その川口市のサイゼリアでは、音が束になって空中を行き交う。たまには私めがけて飛んできたりもした。見えるものと聞こえるものが混ざり始めたらしかった。私はテーブルの上のホットコーヒーを眺めているように見えたかもしれないが、実は脳が狂っていただけだ。ノートを広げ小説を書こうとするが、文字がやけに書きにくいと焦ったり、困ったりしていただけだ。  すると、S医師から電話があった。受話器からS医師が汗をかきつつ、「スポーツマン」の真似をする声が聞こえる。スポーツマンの物真似で私

          連載小説。③仮題:「網代裕介」

          ②仮題:「網代裕介」

           昼間の鬼怒川行きのバスに乗った。次の暮らしは和服を着て小走りに走り、痩せた女に虐められながら暮らすしかない。泣きながら窓の外を見た。  つい、川口市のイオン前で降りてしまった。人通りの多い道に、安い下着屋、UQモバイル、3階建てのマクドナルド、角にサイゼリアが並んでいる。その中をぐんぐん歩く。 下着屋で靴下を買った。やけにカップの大きなブラジャーが窒息しそうに陳列されている。歩き通しだったので、UQモバイルの店内のソファで休んだ。眠かった。とても暑いし、皮膚がすっかり干

          ②仮題:「網代裕介」

          静かなる情熱

          めっちゃ書きたい。 ドーパミンの異常がそもそも私の病気なので、アートは体によくなくて。不安定になる。 感情が動くとドライブかかっちゃって滑っていく、のぼっていく、落ちていくという具合。 数年前の出したいけど推敲してると寝込んでしまう。働けなくなって死にそうになるし。 そのうち…書きたい。 今駒沢公園そばに住んでます。 では、またお会いします。 元気でいてね!

          静かなる情熱