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note創作大賞中間発表と、文学フリマ札幌
note創作大賞の中間発表が公開されましたね。
初参加ですが、通過した作品はありませんでした……残念。
記念受験のつもりで臨んだ作品も多い中、本命は『とうきび畑でつかまえて』でした。
この話が書きたいがために、実際に半年ほどですが富良野地方に住んでいたこともあり、なんとか日の目を見せてあげたいなと思っていたお話しです。
いろんな出版社に営業をしてみましたが、良い返事をもらえぬまま時間が
夏の思い出盛り合わせ、RSR2024
「お前にライジングは無理だよ」
20代前半、当時付き合っていた恋人にそう言われたのをいまもよく覚えている。
6歳上だった彼はライブが好きで、モッシュやダイブは当たり前。対してわたしは田舎生まれ故ライブハウスというものに行ったことがなく、札幌に住み始めてようやく好きなアーティストのコンサートに行けるようになった初心者中の初心者でした。
8月のお盆は毎年実家に帰省していたわたしと、仕事でイベント
note創作大賞2024投稿を終えて。
こちらで作品やエッセイ以外の文章を投稿するのははじめてかもしれません。
お読みいただきありがとうございます、田丸久深です。
以前からアカウントを作っていたものの、どう活用したらよいものかわからず稀にしか更新していなかったnote。2024年のnote創作大賞に合わせてようやく動かしてみました。
しかし、〆切が終わるととたんに更新しなくなり、これはだめだなと……普段はXであれこれお話しして
アメイジング・レイニー・ソング④
○○○
狙い通りまっすぐ飛んだ水は、ピアノよりも少し手前で四方に跳ね返った。
しぶきを受けたストーブから蒸気が上がる。こたつも濡れ、電気カーペットが水浸しになる。室内にできた水たまりは、水滴が落ちると小さな波紋を作っていた。
「……アメ兄」
その波紋の上で、アメ兄はきょとんと、わたしを見つめていた。
彼は気づかれないと思っていたのだろう。息も気配も殺して、わたしが探し回
アメイジング・レイニー・ソング③
「……ん」
いつの間にか眠っていたようだ。
涙が乾いて、目じりがパリパリする。休みの日はいつも遅くまで寝ているため、早起きには慣れていなかった。
雨はあいかわらず降り続き、からくりの音楽も繰り返されている。ぴちゃん、ぽちゃんと低い音はバケツやお鍋にたまった水に。ちん、とん、しゃんと高い音はガラスのコップやプラスチックのカップに。雨の音色だけは、いつ訪れても変わらない。
身体を起こすと、ひや
アメイジング・レイニー・ソング②
○○○
わたしがアメ兄と初めて言葉を交わしたのは、みぞれまじりの雨が降る初冬。彼のお父さんのお葬式のときだった。
葬儀は地域の生活館で行われ、アメ兄のお父さんがまだ若かったこともありたくさんの弔問客が訪れていた。通夜振る舞いは宴会のような賑わいで、あちこちで酒瓶が空いていた。お通夜は亡くなった人が寂しくないよう賑やかに過ごすのだと、お酒で顔を真っ赤にしたお父さんが教えてくれた。
アメイジング・レイニー・ソング①
七月はにわか雨の子犬のワルツ。
八月は天気雨の愛の挨拶。
九月は台風の幻想即興曲。
毎月変わるその音楽を聴けるのは雨の日だけだった。
さて、今月の曲は何だろう。わたしは傘をくるくるとまわし、放課後から降り始めた雨音に耳をそばだてる。
中学校から歩いて十五分。町営団地の並びを抜け、住宅街を歩くとやがて現れる日本家屋。町でも五本の指に入る大きな家には、手入れの行き届いた広い庭があった。