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頭の中を整理するところ。

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これまでに書いたことや思ったことをつらつらと.
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建築は社会の中でどこにいるのか

建築は社会の中でどこにいるのか

つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝「欅の音terrace」が2019年のGOOD DESIGN AWARDにおいてBEST100にノミネートされました.
今年は応募総数4,772件で,そのうちグッドデザイン賞は1,420件,さらにそのうちの100件ということで,これは大変光栄なことなのですが,GOOD DESIGN AWARDは大賞・金賞・グッドフォーカス賞と,BEST100の中からさらに選考されるわ

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パラレルセッションズ2019を終えて

パラレルセッションズ2019を終えて

もうかれこれ一ヶ月経ってしまうんですが,11/20(日)に開催されたパラレルセッションズ2019の振り返りをしようと思います.

パラレルセッションズは2016年から毎年,日本建築学会の主催する建築文化週間の一環で開催されているイベントです.今年は「メタなカタ」をテーマに第一線で活躍する建築系の方々が60人近く集まり,熱いトークセッションを繰り広げていました.

今回自分が参加したのは,セッション

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「汎-島嶼論」@群青建築展

「汎-島嶼論」@群青建築展

群青建築展19.10.18(金)~10.20(日)の3日間,Arts Chiyoda 3331にてグループ展「群青建築展」に出展しました.主催は超細密ペン画家・姉咲たくみさん.超未来建築を研究することを目的にANOMaRY Studioを設立し,日本のみならず海外でも活躍するお方.
そんな彼が設定したテーマがこちら.

3.11をきっかけに建築は大きく変わった。 震災以前は創造的で挑戦的な建築が多

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「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」

「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」

2019.08.29(Thu.)
「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」
@国立新美術館

死,宗教,超越性といったテーマが,人物写真と照明,映像,インスタレーションによって表現される.鯨とコミュニケーションを取る装置を用いたインスタレーション<ミステリオス>が一番良かった.金属的な音が鳴き声に聴こえる.クセナキスの曲に用いられる電子音に通じる音.工業的な物質から生命を感じるというの

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LOCAL REPUBLIC AWARD 2019を終えて

LOCAL REPUBLIC AWARD 2019を終えて

LOCAL REPUBLIC AWARDとは?
主旨はこちらのHPをご参照ください.
https://localrepublic.jp/

ものすごくかいつまんで説明すると,近代社会が前提としてきた「1住宅=1家族」に対して,経済圏を介した「地域社会圏」を実践する建築を表彰するもの.今年で2回目となるこちらのアワードですが,非常に素晴らしい作品ばかりがノミネートされたので,ぜひご注目いただきたいと

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住宅建築賞2019入賞レセプションを終えて

住宅建築賞2019入賞レセプションを終えて



つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝「欅の音terrace」が2019年の住宅建築賞を受賞しました.
2019.06.19(Wed.)~2019.07.05(Fri.)の間,東京都・京橋にあるAGC Studio 2Fにて模型&パネルの展示をしております.無料ですので,ぜひお気軽に足を運んでみてください.

初日は審査員の建築家である乾久美子・青木淳・福島加津也・長谷川豪・中川エリカ(敬称略)という

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ナリワイながら暮らすとは

ナリワイながら暮らすとは

つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝によって手掛けた練馬の職住一体型アパートリノベーションプロジェクト「欅の音terrace」。晴れて『新建築2019年2月号』に掲載していただきましたが、そこに載っている解説文とは違う文脈の、このプロジェクトの背景となる思想について個人的にまとめました。

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住居と労働を切り分けるという都市計画の機能的分離が推進されたのは、1933 年に実施されたCIAM 第

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都市的人間<ホモ・ウルベ>はサプライチェーンに飲み込まれる

都市的人間<ホモ・ウルベ>はサプライチェーンに飲み込まれる

最近よく考えている都市/集落とナリワイ、そこから見えてくる接続性/切断性について。

■ 新しいこと=古いこと?『建築ジャーナル2018年2月号』の情報ポストにて、「「集落」という実験場、やいか」という記事を書かせていただいた。

詳しくは内容を拝読していただければと思うが、ざっくり言えば、集落では今なお当たり前のように行われている、例えば家を建てたり作物を育てたりするようなナリワイ(=生活と仕事

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デザインとアートの境界

デザインとアートの境界

普段生活している中でも、<デザイン>という言葉に触れる機会はとても多い。
つまり<デザイン>は世の中で市民権を得ていると言っても差し支えないだろう。

どこで聞いたか忘れてしまったが、<デザイン>とは「整えること」だという定義の仕方がある。ばらばらなものを整理する、ずれているものを修正する、雑然としたものをシンプルにする、といった具合だ。

それに対して、<アート>はよくわからないもの、というニュ

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建物か建築か Building or Architecture

私は、建築至上主義者である。

建築によってだいたいのことは解決できると思う。例えば、建築によって人を健康にしたりだとか、幸福にしたりだとか。
一方で、こと日本社会において、建築の位置づけはというと、あまり芳しくない。だいたい話題にのぼるときは、悪いニュースの場合だ。建築の吉報は滅多に訪れない。

しかしながら、私たちは常に建物に囲まれている。今こうしてこの文章を書き記している時も、"家"という建

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利己的な遺伝子とその射程

利己的な遺伝子とその射程

利己的な遺伝子とは、リチャード・ドーキンス著『利己的な遺伝子』によるものである。
すべての生物は、その遺伝子を保存し継続させるために、利己的に活動する。いっけん利他的に見えるような行動も、本質的には利己的な要因によるものである。例えば、群れを成す草食動物は、捕食者である肉食動物に捉えられる確率を出来る限り減らすためにそれを行う。群れることで、孤立しているときより生存確率を上げるのだ。

人間も"情

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身体の境界、あるいは個人の領域

身体の境界、あるいは個人の領域

身体の境界はいったいどこにあるのか。あるいは、個人が管轄する領域とはどこまでなのだろうか。
文化人類学者Edward Hallのパーソナルスペースに関する理論はあまりにも有名であるが、今回は個々人における境界の規定について考えたい。

電車に乗っていると、よく「リュックは前に抱えるか網棚に置いてください。」というサインを見かける。
なぜこのようなことが注意喚起されるのか?
それは、リュックを背負う

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新たなる建築をめざして

新たなる建築をめざして

私は、昨今の「建築」に失望している。

かといって、建築に見切りをつけたわけではない。

事実はその逆で、建築の力を信じているが故に昨今の「建築」に失望しているのである。

それはなぜか?

実社会において「建築」を建てるとき、その殆どが施主の意向に即して、与えられた敷地境界線の中に設計をする。そこではその「建築」を建てる必然性も、本来はどのような用途が必要なのかも、社会に対する影響力も問われるこ

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