若林拓哉|ウミネコアーキ

1991年神奈川県横浜市生まれ.ウミネコアーキ代表/つばめ舎建築設計パートナー/SIT…

若林拓哉|ウミネコアーキ

1991年神奈川県横浜市生まれ.ウミネコアーキ代表/つばめ舎建築設計パートナー/SIT赤堀忍研卒業→SIT西沢大良研修了/『建築ジャーナル』「現代建築家宣言」/汎 - 島嶼論/港湾都市

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最近の記事

文字には質量がある

これまで機会があって、雑誌の連載をいただいたり、書籍を制作したり、エッセイ的なものを書いたり、趣味で思ったことを書いたり、色々なタイミングで様々な内容を書いてきました。 傾向としては大きく3つあると思います。 フランクに思ったことを書き殴れるこんな感じの文 エッセイ的に言い回しや表現、内容を気にしながら書く文 学術的にハードコアな文 もう少し具体的に言うと、 1はSNSや2の文章のラフで書くもののイメージ、 2はコラムとかソフトめの媒体に載るもののイメージ、 3は論考

    • 建築は社会の中でどこにいるのか

      つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝「欅の音terrace」が2019年のGOOD DESIGN AWARDにおいてBEST100にノミネートされました. 今年は応募総数4,772件で,そのうちグッドデザイン賞は1,420件,さらにそのうちの100件ということで,これは大変光栄なことなのですが,GOOD DESIGN AWARDは大賞・金賞・グッドフォーカス賞と,BEST100の中からさらに選考されるわけです.ということは,良くも悪くもBEST100止まりだったと.ということは,他

      • パラレルセッションズ2019を終えて

        もうかれこれ一ヶ月経ってしまうんですが,11/20(日)に開催されたパラレルセッションズ2019の振り返りをしようと思います. パラレルセッションズは2016年から毎年,日本建築学会の主催する建築文化週間の一環で開催されているイベントです.今年は「メタなカタ」をテーマに第一線で活躍する建築系の方々が60人近く集まり,熱いトークセッションを繰り広げていました. 今回自分が参加したのは,セッション30「デザインとオペレーションの相互フィードバックの可能性とは?」でセッションリ

        • 「汎-島嶼論」@群青建築展

          群青建築展19.10.18(金)~10.20(日)の3日間,Arts Chiyoda 3331にてグループ展「群青建築展」に出展しました.主催は超細密ペン画家・姉咲たくみさん.超未来建築を研究することを目的にANOMaRY Studioを設立し,日本のみならず海外でも活躍するお方. そんな彼が設定したテーマがこちら. 3.11をきっかけに建築は大きく変わった。 震災以前は創造的で挑戦的な建築が多かったが、あの日をきっかけに人々は強固で強い建築を求める方向に進んだ。そしてもう

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        • 若林拓哉の個人的雑感
          1本
        • メモ
          1本
        • 頭の中を整理するところ。
          13本
        • 読書とは旅である。
          11本
        • 何処かで誰かが語っていた。
          12本

        記事

          「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」

          2019.08.29(Thu.) 「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」 @国立新美術館 死,宗教,超越性といったテーマが,人物写真と照明,映像,インスタレーションによって表現される.鯨とコミュニケーションを取る装置を用いたインスタレーション<ミステリオス>が一番良かった.金属的な音が鳴き声に聴こえる.クセナキスの曲に用いられる電子音に通じる音.工業的な物質から生命を感じるというのは,恐らく彼の作品に通底しているものの一つとしてあるのではないか. ヤニス・ク

          「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime」

          グレゴワール・シャマユー著『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』

          ドローンを用いた戦争による死倫理学についての哲学的探究.非常に面白い.建築民には,Forensic Architectureのエイヤル・ワイツマンの言説の参照が複数ある点も見所かも. 本書が扱うのは,「武器を装備した飛行型ドローン=ハンター・キラー」について. その技術を〈持つ者〉と〈持たざる者〉に分断してしまったことで,これまで戦争が暗黙裡に相互承認していた“殺しあうがゆえに”無罪化されていた人殺しの権利が失効することになった. 本来,ハンター・キラーは,戦闘員の死を回

          グレゴワール・シャマユー著『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』

          LOCAL REPUBLIC AWARD 2019を終えて

          LOCAL REPUBLIC AWARDとは? 主旨はこちらのHPをご参照ください. https://localrepublic.jp/ ものすごくかいつまんで説明すると,近代社会が前提としてきた「1住宅=1家族」に対して,経済圏を介した「地域社会圏」を実践する建築を表彰するもの.今年で2回目となるこちらのアワードですが,非常に素晴らしい作品ばかりがノミネートされたので,ぜひご注目いただきたいところ. ちなみに審査委員長である山本理顕さんが提唱する「地域社会圏」はこちらの

          LOCAL REPUBLIC AWARD 2019を終えて

          住宅建築賞2019入賞レセプションを終えて

          つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝「欅の音terrace」が2019年の住宅建築賞を受賞しました. 2019.06.19(Wed.)~2019.07.05(Fri.)の間,東京都・京橋にあるAGC Studio 2Fにて模型&パネルの展示をしております.無料ですので,ぜひお気軽に足を運んでみてください. 初日は審査員の建築家である乾久美子・青木淳・福島加津也・長谷川豪・中川エリカ(敬称略)という錚々たる面々から直々に講評,審査の経緯,金賞の境い目などを議論する入賞レセプショ

          ¥100

          住宅建築賞2019入賞レセプションを終えて

          ¥100

          『ウェルビーイングの設計論ー人がよりよく生きるための情報技術』

          ラファエル・A・カルヴォ/ドリアン・ピーターズ著、渡邊淳司/ドミニク・チェン監訳『ウェルビーイングの設計論ー人がよりよく生きるための情報技術』通読. ウェルビーイングとは何なのか?原題の通り,ベースにはデジタル・テクノロジーにおけるポジティブ・コンピューティング――心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーのデザインおよび開発(p.13)――があるが,題材的には広く一般に理解できる(というか誰もが考えるべき)内容を取り扱っていて面白い. この心理的ウェルビーイ

          『ウェルビーイングの設計論ー人がよりよく生きるための情報技術』

          『nyx 第五号』

          〈聖なるもの〉とは何か『nyx第五号』通読.第一特集の聖なるものがお目当て. 〈聖なるもの〉という概念は,神秘的なものや超越的なもの,あるいは言語化不可能なものを,内容を十分に分別することなく投げ入れる「ゴミ箱概念」(p.8)として便利に利用されている節がある. それに対して〈聖なるもの〉と何か,その可能性と限界について様々な方が議論している. 佐々木雄大氏は〈聖なるもの〉がなぜそのように使われるかの理由を次のように解釈する. なぜこの言葉を選ぶのかというと、恐らく「俗な

          カトリーヌ・マラブー著『新たなる傷つきし者――フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える』

          <可塑性>というキーワードを展開し,<可傷性>や<不安定性>を提示するジュディス・バトラーとも近いテーマを取り扱っている哲学者カトリーヌ・マラブーの著書.この<可塑性>を取り巻く概念が興味深い. 「新しい傷つきし者」とはまず,「新しい傷つきし者」を彼女は次のように定義している. (…)さまざまな脳疾患や脳損傷の被害者のことである。頭部の外傷、腫瘍、脳炎、髄膜脳炎等々の神経変性疾患の患者、パーキンソン病やアルツハイマー病もこのカテゴリーに入る。精神分析が治療を試みて失敗した

          カトリーヌ・マラブー著『新たなる傷つきし者――フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える』

          柳宗悦の「直観」美を見いだす力

          日本民藝館の特別展「柳宗悦の「直観」美を見いだす力」で配布される,柳宗悦が晩年病床で書いた『直観について』というA3両面刷りほどの短い文章が熱い. 直観はものを、「そのままの相」で「そのままに観る」こと であり, それ故見ることにも、見られる相手にも囚われず、又自らにすら囚われない自在さに入ってこそ、初めて直観が可能になる。 直観の根のない知識ほど、美に向って力の弱いものはない。かくして直観は初めからものに判断を加える作用ではない。又判断されたものを受取るのが直観でも

          柳宗悦の「直観」美を見いだす力

          ナリワイながら暮らすとは

          つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝によって手掛けた練馬の職住一体型アパートリノベーションプロジェクト「欅の音terrace」。晴れて『新建築2019年2月号』に掲載していただきましたが、そこに載っている解説文とは違う文脈の、このプロジェクトの背景となる思想について個人的にまとめました。 ***** 住居と労働を切り分けるという都市計画の機能的分離が推進されたのは、1933 年に実施されたCIAM 第4 回会議における成果である「アテネ憲章」に依るところが大きいだろう。 ここで都

          ナリワイながら暮らすとは

          「インポッシブル・アーキテクチャー:もうひとつの建築史」

          19.02.11(Mon.) 「インポッシブル・アーキテクチャー:もうひとつの建築史」@埼玉県立近代美術館 五十嵐太郎さんと建畠館長のクロストークを拝聴しに. ImpossibleはUnbuiltを包含しつつ,よりスリリングで様々な価値も含意している.加えてpossibleすらも内包しており,それはポスターの否定線に端的に現れている. 展覧会の枠組みはタトリンの第三インターナショナルを入口とし,ザハの新国立案を出口としたもうひとつの建築史.建築史は建たなかった建築も含む

          「インポッシブル・アーキテクチャー:もうひとつの建築史」

          【2018年の読本リスト&ベスト5】

          【2018年の読本リスト&ベスト5】 1年を振り返って読んだ本を.今年は1級建築士の勉強にだいぶ時間を割いたため,去年より少なめ. ***** ◆ベスト5 何かしら内容が思考に響いたものをリストアップ.21世紀の建築において,不安定性precarityがテーマになりうる. ・『我々は人間なのか?』ビアトリス・コロミーナ、マーク・ウィグリー著 ・『アセンブリ 行為遂行性・複数性・政治』ジュディス・バトラー著 ・『平均思考は捨てなさい』トッド・ローズ著 ・『読んでいない本につい

          【2018年の読本リスト&ベスト5】

          「平成の建築を考える」

          18.10.28(sun.) 「平成の建築を考える」@建築会館ホール 鼎談:八束はじめ×豊田啓介×市川紘司(敬称略) 建築学生サミットの一部でお三方の鼎談の場があるということで,そこだけ拝聴しに.以下遅れた実況(抜け落ち気味)と雑感. ***** 【スライドプレゼン】 <八束> 1945年と2011年の動向を比較.原爆―原発,平和記念資料館/丹下健三―みんなの家/伊東豊雄ほか 一見共通しているようにが,かなり様相が異なるのではないか? <市川> 平成の建築は以下の3つの徴

          「平成の建築を考える」