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医療・介護

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記事一覧

高知と酒と集落の看取り

高知と酒と集落の看取り

 高知では、安易に口に出すべきではない言葉がある。

「僕、お酒けっこう飲めますよ」

 講演のために伺った高知。
 その懇親会の席で、僕が何の気なしに、そうまさに無邪気にそんな言葉を口にした瞬間、高知の方々の顔色が変わった。

「こいつ、酒が飲めるって言ったぞ」

ざわ・・・・
ざわ・・・・

 カイジもおののくそんな雰囲気の中、僕もさすがに「ただごとではない」と感じ、

「いや~、飲めると言っ

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認知症と安楽死~安楽死制度を議論するための手引き12(前編)

認知症と安楽死~安楽死制度を議論するための手引き12(前編)

論点:認知症になる前に書いた安楽死の希望は、認知症後の患者さんにとっても有効か?

 さて、前回の記事では「認知症をもつ方の意志決定はどうすれば良いのか」を考えるため、まずは現在における「人生会議=Advance Care Planning」について見直してみたのでした。

 では今回は、さらに考察を深めて「認知症をもつ方に対して安楽死制度は適応とすべきかどうか」を考えてみましょう。

オランダで

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【心得27】あなたは幸せになっていい

【心得27】あなたは幸せになっていい

『あなたは幸せになっていい』

これは僕が改めて、これから医師になる人・今まさに医師として働いている人に伝えたい言葉です。

「こんなこと言われなくても、人は勝手に幸せになる。」
「余計なお世話だ。」

そんな風に思う方がいるかもしれませんが、
それでもやはり、僕はこの言葉を医師として働くあなたに届けたいのです。

なぜ、こんな当たり前のことをわざわざ言葉にして伝えるかというと、
医師というのは、

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間接的安楽死と終末期の鎮静~安楽死制度を議論するための手引き10-1

間接的安楽死と終末期の鎮静~安楽死制度を議論するための手引き10-1

論点:鎮静は安楽死制度の代替となり得るか

 日本緩和医療学会が発行している『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き』が2023年に改訂されました。
 そもそもこの手引きは、終末期における鎮静(苦痛緩和を目的として鎮静薬を用いて患者の意識レベルを下げること)に対し、2004年に「ガイドライン」として発行されていましたが、他のガイドラインと異なり論文などの体系的な収集・分析が

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安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き05(第2部)

安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き05(第2部)

 今回は「新しい人権」についての話です。
 前回は「死の権利」が新しい人権として認められるかどうかが問われる、と書きはしましたが、実際に法的根拠をもって「死の権利」が新しい人権となれるかは、かなり困難な道と言わざるを得ません。

 日本国憲法が成立して以後、「新しい人権」として法的に認められた人権は、4つあるそうです。 内容は、こちらの行政書士さんのブログからです。

 逆に言えば、「新しい人権」

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安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き05(第1部)

安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き05(第1部)

論点:議論は国家・個人的信条・社会的慣習などから自由であるべきである

 前回の記事では、「医師はそもそも安楽死制度の実行に関わるべきでは無いのではないか」というテーマについて議論の進め方を書きました。

 今回の記事では、安楽死制度を議論する上での最大のタブー「個人的信条を安楽死制度の議論に持ち込まない」について取り上げます。

わかりやすいタブー:経済と安楽死を結びつける議論

 いきなり「個

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