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SF - Sumo Fiction

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狂気に満ちた相撲SFの世界(手動収集)
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#航空力士

『闇太陽と摺り足のプリンス』 0場所目

『闇太陽と摺り足のプリンス』 0場所目

(ぺターン、ぺターン)

支度室内の「テツポウ禁止」「満員御礼」の札が色あせている。

東京大深度力士力発電所。注水され人心地ついた力士達で支度部屋はごった返している。「ごっつぁんです。」「ハァーハァー自分の相撲が取れました」「ごっつぁんです」思い思いに休憩時間を過ごす力士達。[関][電]と刻まれた明荷に腰を掛けるのは彼らの中でも上役の関脇関電関である。

「お前ら……」

「ウッス」「ウッス」「

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【つの版】非実在力士名鑑06・航空力士編

【つの版】非実在力士名鑑06・航空力士編

ドーモ、三宅つのです。ここが何なのかは下記マガジン等をご覧ください。あなたはこれを自由に素材として使用できます。

逆噴射小説大賞の開催に先立って、胡乱海では「航空力士」という胡乱存在が流行し、つのもなんか書いてしまいました。ついでに非実在力士名鑑の続きをいくつか書きましたので、ここに収録します。天高く力士肥ゆる秋……ふと秋の空を見上げれば、力士が空を飛んでいるかも知れません。すなわち力士とは秋の

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きみと、力士の彼方の夢を見る

 地球外気圏内へ到達したケプラー442b星人達は驚愕した。青く緑豊かな星だと推測されてきたこの惑星は肌色だった、より正確に言えば、地球の上空が肌色の何かによって完全に覆われていたのである。

 「どうなってる、まさかこれが"地球人類"なのか……?」

 調査員の一人が表面拡大映像を見て慄く。そこに映っていたものは、幾重にも重なり密接し合いながら地球上空を飛行する無数の成人男性。彼らの人種は様々った

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魔法航空力士少年┳聖丸

聖丸は空に浮かぶ巨大な球体を睨む。半径およそ100mの蒼い球体型土俵(エンゲージリング)、中央に仕切る河童力士は聖丸を見下ろして仕切りを誘う。
「気合い入れていくでゴワス!」
力士妖精オヤカタが聖丸の背中に回り、角融合八卦炉(かくゆうごうはっけろ)に力水を注ぐ。
「おう!!」

聖丸の『友を助けたいという覚悟』が角力(かくりょく)に変換され、角融合八卦炉(かくゆうごうはっけろ)を回す。
ギュン……

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暁星をもう一度

暁星をもう一度

「爺さんの『切札』か。あれは使わせねぇぞ」
誠は、「来訪者」にすげなく言い放った。
「だいたい今の航空相撲にあれは無理があるだろうが」
しかし、来訪者もまた決然と言い返す。
「『あの手』を上回る初速を出すRTUはこの世に存在しません。だからこそ、なのです」
「おめぇさん、まさか」
誠の顔が俄に曇る。この男の……角光関のやろうとしていることは、本物の狂気の沙汰に他ならない。
「二段加速射出式立ち合い

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闇太陽と摺り足のプリンス

闇太陽と摺り足のプリンス

 びゅうびゅうと吹きすさぶ風に耐え兼ねて千切れた藁の塊が転がりながら街道を横断していく。砂塵の先に列をなす荷役の摺り足が見え始めた。彼らは一様に裸で腰に一本の布を廻しただけの軽装である。ズリッズリッと彼ら荷役特有の足音が聞こえてくる。「ちゃんこ」の到着だ。

 クーデター以降、前政権に見捨てられた寒村ハカタにもこうして食糧が届けられるようになった。村長は、ほっと安堵して間近に迫った護送荷役力士群(

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僕らの場所は大空だ。

 雲一つない晴天に恵まれた千葉市美浜区、幕張海浜公園。
 20万席が用意された特設スタンドはすでに満席。
 チーズバーガーを頬張りながら「パパ、今日は誰が勝つかな?」と尋ねる子供、「そうだな、一番速い奴がここでは勝つんだ」と含蓄がありそうでごくごく当たり前のことを答える父親。家族団欒!

 ここはエナジードリンクメーカー「レッドべこ」が主催する世界最高峰の航空モーターショー「エア・ファイト」の会場

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大天空大相撲取組帖 発機良揚―ハッキヨイ―【初日・一番目・夕羽 対 猛雲】

大天空大相撲取組帖 発機良揚―ハッキヨイ―【初日・一番目・夕羽 対 猛雲】

天高く力士肥ゆる秋。
令和元年九州場所初日の空は、十五日間の健闘を祝うに相応しい快晴だった。

大天空大相撲の会場である九州国際体育塔から響き渡る櫓太鼓は、福岡市の秋の風物詩。世界最大の自立型相撲塔である両国国技塔に高さでは劣るものの、街の熱気は負けていない。

市街にかかる九体塔の影も短くなった。
地上十階、満員の観衆が見守る中、夕羽関と猛雲関が睨み合う。

両者は各々のルーティンを執り行う。そ

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航空力士・不破斗武

航空力士・不破斗武

「にぃ〜し〜、不破斗武(ふぁんとむ)ぅ〜、ひがァ〜し〜、原雷火(ばららいか)ァ〜」
 ベトナム場所六日目。この日結びの一番は大関同士であった。
 西大関、不破斗武は大きく息を吐き、相手を見やる。原雷火は近年頭角を表した若き東大関。その表情に曇りはなく、気力体力の充実が見て取れる。
 成績は互いに全勝。恐らくは、この一番を制する者が今場所を制する。
「見合って見合って……」
 廻しに装着された二つの

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ちいちゃなオスモウ♡エンジェル ふらいんぐ・りきしぃず

ちいちゃなオスモウ♡エンジェル ふらいんぐ・りきしぃず

わたし、幕内このみ13歳!

そしてこの肩の上にいるのがわたしの航空力士スモモ山!

航空力士は最近みんなの間で流行ってるペットみたいなものなんだ!色々デコったマワシで着せ替えしたり、チャンコフードを与えて育てるの!それでね!トリクミ・デュエルて遊ぶんだよ!

「このみちゃーん!おそいおそい!次のトリクミあたしたちじゃん!」「ごめーん、マイちゃん!ミント海も待ってた?」「わー!スモモ山、新しいマ

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天空力士伝 どすこい翔太!

天空力士伝 どすこい翔太!

「おーい!翔太ァ!!」「はっ、はいーっ!!」

闘天鳳部屋の朝は早い。未だ機動まわしを付けることを許されていない新弟子たちの朝の仕事は、激しい稽古に疲れた兄弟子たちの為のチャンコの支度である。

チャンコとは、ChunkAll…つまり全てをぶつ切りにぶった切った塊…を語源とする、航空力士たちの聖なるエネルギー源だ。鶏肉は飛べない鳥の肉なので、ゲンを担いでチャンコには使わない。出汁は勝つからカツオで

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スモーガールズ・イン・ザ・スカイ ゼロ ザ・ファースト・チャンピオン

1944年、シベリア某所。
耳をつんざく警告音が意識を撹乱する。
視界は完全なホワイトアウト。白い嵐のなか時折腹にこたえる雷鳴。
無線から聞こえてくるのは、悲鳴、悲鳴、絶叫。
精強無比のルフトヴァッフェ、総統の旗のもとに共産主義者を打ち破った栄光ある空軍が、いま、紙切れのように落とされていく。
……ムッター、ムッター、こわいよ、ああ、くそ、何も見えない。
だがホワイトアウトは残酷な世界の最後の慈悲

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空を行くもの

空を行くもの

荒涼とした土地。乾燥して寒く、足元は石ころだらけ。彼方の山々には万年雪。あまりにも長い距離を進んで来たため、みな疲れて無口だ。

「あの山は、世界の果てだそうですが」誰かがぼつりと言った。

「そうか。その向こうには、何があると思う?」馬上の男が嬉しげに問う。

「……何もないと思います」男はぶっきらぼうに答えた。「何も」

「そうではあるまい。あの彼方にも鳥獣は棲み、人が暮らしている。そのように

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ストライク★航空力士ーズ

ストライク★航空力士ーズ

廻しだから恥ずかしくないもん!

◆◆◆

魔角力(まりょく)が存在する20世紀初頭、突如出現した異形の敵「根虚力士(ねうろりきし)」の圧倒的な魔角力と魔塩の汚染による欧州侵略が進んでいた…。
人類は唯一の希望として魔角力エンジンを搭載し、魔角力によって駆動する「航空力士ユニット」(両足に自我を漂白した航空力士二体を抱きつかせるユニット)を唯一駆ることのできる魔角力を持つ少女「魔女力士(ウィキシ)

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