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下駄華緒の弔い人奇譚

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怪談最恐戦2019の怪談最恐位、送り人ミュージシャンの下駄華緒が送る連載企画です。火葬場・葬儀屋の赤裸々事情、日常生活では知り得ない葬礼やご遺体の話、はたまた不思議な体験まで、余…
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2020年3月の記事一覧

はじめに ―僕が火葬場・葬儀屋で働いた理由―

はじめに ―僕が火葬場・葬儀屋で働いた理由―

まずはじめに、僕は元火葬場職員として働いたその後、葬儀屋に転身した経緯があります。

こういう話になると必ずと言っていいほど聞かれることがあります。
それは「なんでその仕事をやろうと思ったの?」です。

ある人は言います、そんな仕事してて怖くない?と。またある人は腐乱死体とか見るのキツそう、と言います。
確かに子供のなりたい職業ランキング上位に入ったことなんておそらく無いだろうし、大人からしてもな

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【第1話】死体が動いたっ!? 新人火葬場職員、驚愕の初出勤【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第1話】死体が動いたっ!? 新人火葬場職員、驚愕の初出勤【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第1話――

ぼんやりと葬祭業という場所に飛び込んでみたいと思いを馳せていると、神のいたずらか天の采配か、知人が火葬場職員として働いているという情報を得ました。
早速相談させていただき、晴れて面接を経て初出勤の日がやって来ました。

「当日持ってきてください」と電話越しに言われたのはメモと筆記用具、そして勤務開始にあたっての書類や印鑑などごくごくありきたりなもので、これから働く「火葬場」という

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【第2話】火葬した子どもが枕元に… 夢うつつで交わしたあの世とのしりとり【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第2話】火葬した子どもが枕元に… 夢うつつで交わしたあの世とのしりとり【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第2話――

ある日、火葬場に子供がやってきました。
やってきたと言っても、遺体として、です。
火葬場職員は常になるべく冷静に対応するようにしています。見方によっては冷たい印象を与えてしまうかもしれませんが、職務であるボタン操作ひとつで火葬が出来ていなかった、途中で火が止まっていた、などという重大事故を防ぐ為に、あえて感情移入しないよう努めているのです。

ですが、人間ですから心の中は常に揺れ

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【第3話】人が焼けるとどんなにおい? 火葬場職員しか知り得ない強烈な嗅覚体験談!【下駄華緒の弔い人奇譚】

【第3話】人が焼けるとどんなにおい? 火葬場職員しか知り得ない強烈な嗅覚体験談!【下駄華緒の弔い人奇譚】

――第3話――

においというのは記憶にとても印象が残るようで、葬祭業から離れた今でも道端で寝ているホームレスの人を横切ったときに「あ、もう亡くなってるかも」と分かるようになりました。遺体のにおいを覚えているからです。

くさい、という言い方は不謹慎かもしれませんが揺るぎない事実ですのであえて申し上げますが、くさいのはなかなか辛いものがあります。

火葬場でよく遭遇するくさい場面は火葬中に起こりま

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