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自律型人材をつくるのに重要な問いの設定力と問いの設定を補完するマネジメント方法~信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方Vol:11~

こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表の堀内猛志(takenoko1220)です。
このシリーズでは、「信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方」について、50名から4000名まで成長した企業で、各ステージの人事組織戦略の遂行に人事役員として奔走した自身の経験をもとに、人事トップになるために実行したことや、意識していたマインド、経営や現場とのコミュニケーションのtipsなどをお伝えしていきます。

私の経歴詳細は以下からご確認ください。

それでは、今回のアジェンダです。
今回は自律型人材をつくるのに重要な問いの設定力と問いの設定を補完するマネジメント方法を解説します。


AI時代に人間に求められるのは問いの設定力

友人でグロービス学び放題の責任者である鳥潟幸志さんの著書『AIが答えを出せない 問いの設定力 AFTER AI時代の必須スキルを身に付ける』を読み、自分なりに考えていたAI時代の自律型人材とマネジメント手法の変化に共通する部分が多かったので、参考にさせてもらいました。

こちらの本では、AI時代に必要なスキルとして、問いの設定力、決める力、リーダーシップの3つが重要であり、これらを身につける方法が詳しく解説されています。

「問いの設定力」を巡る全体イメージ ※問いの設定力から引用

本書の結論は上記の図になります。
正解がある時代であれば、正解に向かって全員でまとまって向かう方が強いチームを作れましたし、プロダクトも正確且つ生産的に創れました。また、リーダーの決定に従う方が早いし間違いがなかったわけです。

一方で、正解がない(≒正解が複数ある)現代では、個人が決め、正解を見つけるよりも正解を作ることが求められるようになりました。顧客のニーズの移り変わりが早く、また、個々人のニーズに多様性が尊ばれるようになったので、チームで同じものを作り続けることが必ずしも正しくなくなってきたわけです。

つまり、自分自身をリードし、自分自身の意思決定に従って必要なチームを作り、早く動くことが正解を作るための一番の近道になったということですね。

この行動を行うための一歩目が「自分らしい問いを設定すること」であり、また、一連の活動の中で、常に問いを設定し続けることが道なき道を進むための推進力であると読み解きました。

「良質な問いの有無」で人の成長は大きく変わる

何によって憶えられたいかその問いかけが人生を変える
                        ピーター・ドラッカー

ドラッカー名著集『非営利組織の経営』より

ドラッカーも問いの重要性を謳ってますね。本書でもいくつかの偉人が自身へ立てた問いを紹介していました。

どのようにすれば、日本が国家として独立し続けられるのか?
                              福澤諭吉

問いの設定力から引用

肌の色で差別される日常が正しいのか?
                         ネルソン・マンデラ

問いの設定力から引用

真実を貫くことと、自らの命はどちらが優先されるべきか?
                             ソクラテス

問いの設定力から引用

時代の岐路で歴史を変えた偉人たちはなぜそんな決断や行動ができたのか、その意志の源泉は何なのか、などを考えることがありましたが、その初手には「問い」があるということは非常に納得がいきました。

おそらく偉人たちにも恐怖はあり、実行しないという選択肢もあったはずです。そういう選択を迫られる中で、自分自身の中で上記のような問いを設定し、その問いに人生をかけて挑むことこそが自分の人生であると定義し、腹を括ったのではないかと想像します。

問いの質が人生の質を決める
                        アンソニー・ロビンス

問いの設定力から引用

良い問いを自分に投げかけることで、思考が変わり、行動が変わり、人生が変わるという意味のようです。

自分自身の人生をかける問いは何か?それが見つかった人から人生が変わるということでしょう。私自身もまだまだ自分自身への問いを磨き続ける必要があると本著を読んで思いました。

若手の成長サイクルの中心にあるのが「問い」

さて、問いの重要性について書いてきましたが、ここからは本noteのテーマである自律型人材育成のために「問い」をどのように扱えばいいか、ということを解説します。

ひとつの正解がある時代とない(≒正解が複数ある)時代では当然人の成長プロセスは変わります。成長ステップを図解すると以下のような違いがあるイメージです。

正解がある時代とない時代のプロセスの違い

ゴールや正解が一つだと人は迷いません。その道が苦しくても超えた先に絶対に幸せになるとわかっていれば頑張れます。「24時間働けますか?」のCMが流れていた時代は、有名大学に入り、有名企業に入り、早く出世してマイホームとマイカーを買って家族で週末を豊かに過ごすことが全日本人の幸せの象徴だったのです。それを手に入れるためであれば、24時間働くことも、上司のパワハラも、環境や倫理に反した事業展開にも耐えられたし、疑問を唱える人もいなかったわけです。

一方で、ゴールが一つではないため、自分にとっての正解の道が複数ある現在では、常に決断の分岐に迫られます。「この働き方は正しいのか?」「この事業は社会を善くしているのか?」「このチームにいることがベストなのか?」「自分のやりたいことは何か?」「もっと家族に時間を使うべきでは?」「会社員でいることが本当に安定なのか?」このような問いを常に自分に投げかけられているわけです。

正解がある問いであれば情報を集めれば外さない判断ができます。しかし、人によって幸せの形が違ってきた多様性の現在では正解がありません。言い換えると、正解は自分が決めていいのです。でも、それが簡単なようで難しいのです。だって今まで生きてきてほとんどの判断は他人の評価をもとに決めてきましたからね。

成績をあげたい
有名企業に入りたい
高い時計が欲しい
かっこいい服が欲しい

本気で自分の評価だけで決めてきたものはありますか?みんながそれを欲しがるから自分も欲しい気になっていませんでしたか?仮にみんなが欲しがらない社会でもそれを必要としますか?おそらく難しいですよね。

そうなんです。正解を自分で決めなければいけない場面になって気づくのですが、今までの選択はほとんどが判断、つまり様々な情報(≒他人からの評価)の中で最適解を選んできただけなんです。しかし、自分で決めるという自分軸に従った決断をしないといけない場面で、自分の軸がわからずに決められない人が多いのです。

判断:過去の事象について検証すること。正解がある。
決断:未来の事象について方向性を打ち出すこと。正解がない。

よって、いい大人になっても決断力が磨かれておらず、いざという場面で決断ができずに現状維持を選ぶ人が多いのです。

こういう大人にならなために大事なのが『問い』であり、常に自分に問いを設定し続けることで自律型人材になっていくわけです。

フレーム&比較で伝えた方がわかりやすいと思うので図解化しました。

正解がある時代とない時代の思考プロセスの違い

PDCAが有効なのは、ゴールと正解があるためにプランをきちんと作ることで、効率を上げることができたからです。しかし、ゴールと正解がない時代では、悠長に計画を立てている暇があれば実行し、学び、本質に立ち返り、その都度決断しながら進み続けるしかないのです。

PlanではなくDecideなのは、正解がない中で自分で腹を括って一歩目を進むことを決めないといけないからです。これはAIではできません。

DoではなくTryなのは、AIと違って人間は失敗することができて、確率が低いことでもやってみることができるからです。

CheckではなくReflectなのは、単なる実行への改善策を出すことではなく、実践から得られた知と、その間に座学で得られた知を掛け合わせ、さらに、自身の価値観や感情を踏まえて、次の一手を考える必要があるからです。LearnはAIにもできますがReflectができるのは人間だけです。

ActionではなくMetacognizeなのは、生産性を追いかけるためにすぐに実行するのではなく、一度立ち止まり、実践から得られた知やそこから見いだせた次の一手を選んだ自分をさらに抽象度を上げてメタ認知し、自分は何者か?自分は何を大事にしているのか?という人生をかけて解くべき問いに近づくために、常に自分への問いを磨き続ける必要があるからです。

そして、そのド真ん中にあるのが、Wait&FollowではなくAsk&Leadです。上司からの指示を待ち従うのではなく、自分を導くために問いかけるのです。

正解がある時代とない時代の起点の違い

それぞれの項目について詳しく書き始めるとnoteが冗長的になりそうなので、別のnoteに分けて解説したいと思います。

自ら良質な問いを立てられる人材に育成することがマネジメントの役割

言うまでもなく自立と放置は大きく違います。よって、個人に自立が求められる時代だからと言って個人に任せっきりでマネジメントが関与しないわけにはいきません。マネジメントにも「ひとつの正解がない時代に個人の思考プロセスの醸成に働きかけるマネジメント手法」があります。

ひとつの正解がない時代に個人の思考プロセスの醸成に働きかけるマネジメント手法

それぞれのマネジメント自体は昔からあるものです。ひとつの正解がない時代のマネジメントのポイントは「個人が問いを立てやすくするためのマネジメント」であることです。

従来の手法は以下の通りです。

■任せるマネジメント
 └相手主導で進めさせる
 └仕事上の冒険を推奨する
■励ますマネジメント
 └背中を押して進めさせる
 └仕事を褒めて支持する
■教えるマネジメント
 └具体的な手順を指示する
 └有無を言わせず実行させる
■引出すマネジメント
 └相手の中にある答えを導く
 └相手が気づいていない視点を気づかせる

これらを全て、自身に問いを設定させることで自立的に思考させるように導きます。

■任せるマネジメント 
 └相手主導で進めさせやすくするための問いを立てる 
 └仕事上の冒険をしやすくするための問いを立てる
■励ますマネジメント 
 └推進しやすくするための問いを立てる
 └自信を持ちやすくするための問いを立てる
■教えるマネジメント
 └具体的な手順を考え出しやすくするための問いを立てる
 └迷わずに実行しやすくするための問いを立てる
■引出すマネジメント
 └相手の中にある答えを導きやすくするための問いをたてる
 └相手が気づいていない視点に気づきやすくなるための問いを立てる

相手の自立性を高めるために「与える」のではなく「自立的に考え、実行しやすくしてあげる」ことが重要です。そして、それこそが問いのチカラであり、マネジメントには問いの設定力が必要になるわけです。

ChatGPTに求める答えを出させるためにプロンプトを磨くのと同じですね。問いの立て方が間違えていたり、わかりづらいと、相手のアウトプットは全く意に反するものになるのです。これは人もAIも同じですね。

ただし、目的のアウトプットを出しやすくするだけではなく、個人の自立性の醸成にも寄与しなくてはなりません。これがAIへのプロンプトと人への問いの設定の違いです。ゆえに、単に問いの設定力を磨くだけではなく、場面に応じたマネジメント手法とセットで問いを立てる必要があるのです。

これは掛け算の考え方ですね。どちらかの手法や力がゼロであればアウトプットはゼロになります。

様々なマネジメント手法 × 問いの設定力

今回のnoteはマネジメントの具体的手法にを解説するものではないので割愛しますが、上記4つのマネジメント手法は是非押さえておいて欲しいものです。

良質な問いを立てられる人材、及びマネージャーを育成できるように人事施策をデザインするのがCHROの仕事

上記の内容をさらに俯瞰して考え、デザインするのがCHROの仕事です。個人の4つの力を外や上から囲うように存在するマネジメント手法のさらに外や上に、それらの力を醸成するための環境、仕組、制度作りのデザインがあります。

ここまでメタで考えることをCHROには求められます。メンバー育成、管理職育成は人事の領域です。よって、CHROはさらにその上の視点で、それらがしやすくなるための環境、仕組、制度作りをデザインする必要があります。

人事や現場がメンバー育成、管理職育成をしやすくなるための環境、仕組、制度作りをデザインするために自分は何が求められているのか?

これがCHROが日々自分に投げかけ続けるべき問いですね。問い続け、問いを磨き続け、考え続け、そして実行し続けましょう。

今回のnoteのテーマは「問い」なのでこの辺で。

より詳しい内容が知りたい、自社で戦略人事思考を持った人事責任者を採用したい、育てたいがうまくいかない、という経営者の方はご連絡をください。CHRO採用とCHRO開発を承っています。
takenoko1220


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