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詩20230626-

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詩 20230626-
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#眠れない夜に

詩:ほくろ

詩:ほくろ

そんなところにほくろがあるんだね君は

男はほくろにキスをしようとした

いやよ変態
いいじゃないか減るもんでもなし
いやよ
いいじゃないかなくなるものでもなし
……あなたあたしのことどれだけ好き?
めちゃくちゃ好きだ
それじゃあいやよ
大大大好きだ
……
わかったほくろにキスしたいぐらい好きだ
まったく……いいわキスしても

男はほくろにキスをした

ほくろが消えた

詩:走って撃って止めて

詩:走って撃って止めて

走る
走る
走る
夜の闇を走る
機関車のように走る

走る
走る
走る
鉄橋まで走って
鉄橋から飛び降り
機関車の屋根に

走る
走る
走る
機関車の屋根を走る
手には拳銃
運転席からわらわらとマフィアたち

走る
走る
走る
弾丸の雨をくぐり抜け走る
銃を撃ちマフィアたちを倒しながら

走る
走る
走る
運転席まで辿り着き
ブレーキをかける
機関車の走りが止まる

詩:おたまじゃくし

詩:おたまじゃくし

夢の中でおたまじゃくしが宇宙を泳ぐ

男はおたまじゃくしを愛でていた
女はおたまじゃくしはもう勘弁という顔をしていた
女のそばで蛙が卵を産んでいた
女はそれをじっと見つめていた
蛙の卵がどんどん長くなっていく
しばらくすると女はときめきの動悸を抑えられなくなった
女は男におたまじゃくしをねだった

しかし男はおたまじゃくしをただただ愛でていた

詩:夜を駆け抜けていく

詩:夜を駆け抜けていく

夜を駆け抜けていく

思わず悪夢を見たよ

夜を駆け抜けていく

悪夢を次の夢で塗り潰す

夜を駆け抜けていく

夢が消えていく

夜を駆け抜けていく

童話詩:くるみ割り人形のおじいさん

童話詩:くるみ割り人形のおじいさん

腰の曲がったくるみ割り人形のおじいさんがいました。

おじいさんは口をガタガタ何かを言っています。

でも歯がないので何を言っているかわかりません。

そこでぼくはおじいさんの口にくるみを入れました。

おじいさんは口をガタガタして見事くるみを割りました。

おじいさんはぼくに向かって大きな声でこう言いました。

わしはくるみ割り人形じゃない!

残念ながらおじいさんはくるみ割り人形ではなかったの

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詩:沈黙から

詩:沈黙から

光の先に

夢の先に

希望の先に

いつも死があった

いつも戦争があった

いつも悲しみがあった

それを人は絶望と言ったり

苦悩と呼んだり

残酷だと罵倒する

しかし……

人には可能性がある以上

愛された記憶がある以上

何もできなくはないはず

詩:書けるような書けないような

詩:書けるような書けないような

映画の感想文は書けない

本の感想文は書ける

本の批評は書けない

映画の批評も書けない

映画の紹介文は書ける

本の紹介文も書ける

ついでに詩も書ける

何が書けるというのだろう

自分に

まあ

そう思いながら

今日も何か書いている

詩:夜

詩:夜

夜は

涼しいを通り越して

寒い

深夜風にあたろうと

外に出たら

震えがとまらなかった

ふと

頭をよぎる

最近読んだ小説の

全く書かれていない

一節

詩:死の流れ

詩:死の流れ

人は自分の死も他人の死も予知できず

人は等しく死に対しては無力である

そして無意味でもある

死に接して

感情的になろうが

冷静であろうが

死はただそこにあるだけで

人はただただ流されるように生きていく

詩:ガラスの階段

詩:ガラスの階段

君と歩くガラスの階段

登る度

ひびが入ってきて

ふたりは次第に堕ちてゆく

しかし

君は隠していた翼を拡げ

上へ空へと飛んでいく

僕はゆっくりゆっくり

ガラスの破片と共に

静かに堕ちてゆく

君は上へ空へと飛んでいく

僕はゆっくりゆっくり

ガラスの破片と共に

静かに堕ちてゆく

詩:約束

詩:約束

どうしようもない不安に襲われた時

私はあなたとの約束を思い出して

ゆっくり眠る

悪夢を見てつらい汗をかいてしまっても

かたく結んだ約束を抱きなおして

ふたたび眠る

詩:残暑の壁

詩:残暑の壁

壁によりかかると

汗がふきでる

残暑厳しい

この日

壁も暑そうです

九月のある日……