第4章 共存共栄 (1)明朗会計 (2023.9改)
富山県内の流通業界の変化を伝えていたメディアが、東京都大田区の流通の様変わりについて、取り上げるようになった。
8月が近づく頃、ジリジリとガソリン価格が毎週の様に上がるのが例年の傾向となっている。
石油会社各社が夏の帰省客の消費増を見込んで儲けようと卸価格を上げるからなのだが、今年は帰省が出来ない可能性が高くなっている。・・・話の主題はガソリンだ。
PBエナジー社は「来月8月もレギュラー120円で提供します」とアナウンスする。全国平均でリッター160円になろうかと言うのに、40円も安い理由は一体なんだ?となる。
理由は簡単なのだが社外秘としている。
PBエナジーの流通部門PBマートが販売する東南アジア製物産や食品、飲料、ビール、ロシア産海産物、乳製品、食肉などの利益から補填している。
それだけの高い利益率を誇る背景には、第一に物流倉庫が人手が掛からず完全自動化している。第二に、PBロジスティクス社の各店舗への配送トラックにAIナビが搭載され、トラック1台づつにドローンが割り当てられている。この2点が収益増に貢献している
PBマートの物資を運搬中のトラックの頭上500m上空で、ドローンが道路の混雑状況を把握している。トラックに搭載されたロードマップを表示しているAI端末に、ドローンが周辺の道路情報を転送し、その時間のベストな道をAIが表示する。
「決まったルートを配送する」のが、現状の物流システムなのだが、従来のシステムに警視庁の道路情報が反映されている訳でも無い。
ちょっとした事故や、路上で荷卸する駐車車両のせいでバスやダンプカーなどの大型車両が動けないなどの要因で渋滞がその都度発生する。
その車両の進行方面のリアルな情報を収集してベストなルートをドライバーに表示する。ドライバーはAIの指示どおりに運転すればよい。無駄な時間の削除に繋がる。
富山県内と大田区の道路情報がAIに蓄積されてゆくと、渋滞情報や頭上からの映像から、道路の改善計画をAIが別枠として纏めてゆく。
「平和島交差点の信号のタイミングを送らせて、歩行者用信号の時間をその分増やす」とか、
「田園調布X丁目XXの歩道を広げるために右折レーンを撤廃、車両右折のために対向車線の赤信号停止時間をXX秒伸ばす」など、具体的な提言となる。
大田区選出の都議であるモリは、蒲田にある大田区役所を表敬訪問し、大田区議会の交通部会に「現地視察報告書」と「道路、信号改善案」を膨大なデータをもとにして提出すると、その足で警察署の道路担当者にも同じ提案を行う。
都議の交通部会に属しているので当然の仕事と言える。しかし選挙区内の道路事情の改善提案は、都議ではなく、大田区と区議の成果となる。
モリはタダ働きを承知で作業したのだが、下心は隠さない。
都議会選挙時に同じ区内の応援団として支援してくれなければ、今後データの提出はしない。区議の選挙の際にはモリが教え子を擁立をするかもしれないとやんわりと伝える。脅しと解釈するかもしれないが、大田区と区議には値するデータであり、提案内容になるという話だ。
やがて、PBロジスティクスの車両は隣の品川区、川崎市へと広がってゆくだろう。ガソリンスタンドとミニスーパーが増えるからだ。
新しいエリアを獲得して、AIはどんどん賢くなってゆく。そしてモリは品川の都議、川崎の市議に考えが似通った人物を立候補させる。品川と川崎に、安いガソリンスタンドとミニスーパーが一定数まで増えてゆく。
太田区内もそうだが、プルシアンブルー社の事業で一色に染め上げてはならない。区内のガソリンスタンドの3割、コンビニの3割のシェアを獲得すればそれで十分だ。
大手の石油会社と大手コンビニ会社の「日本全国の売上を若干奪う程度」で留めておく。
大手企業は全国に展開しているのだから、売上規模も店舗数もプルシアンブルーの事業など比較にもならない。しかしモリの関係者が議員となっている選挙区内ではプルシアンブルーは一定のシェアを占めている状態に留める。ロシアとベトナムとのビジネス規模が、現状の10倍になるまでが精々限界として留めるべきだろう。プルシアンブルーはガソリンスタンドとミニスーパー以外の事業を起こして、アジアの新しい調達先から物資を仕入れてゆく。
日本の大企業には出来ない小回りの効く身軽さで、事業を多角化してゆくのがプルシアンブルー社の活きる道となる。無人化技術力と低コスト運営で圧倒的な競争力を誇りながら、石油産業と流通スーパー事業でトップ企業にはならない。大手企業が大勢の従業員を抱えている限り、高コスト体質は維持される。高いガソリンと高い食料品を販売し続けてくれるからこそ、プルシアンブルー社のガソリンスタンドの事業が成功する。大手と持ちつ持たれずの関係「共存共栄」を維持してゆく。
ここでプルシアンブルー社の石油事業、サハリン、ベトナムと日本間のタンカー輸送コストについても触れておく。
ベトナムとロシアから見ればプルシアンブルー社は石油だけでなく、食料品も仕入れるし、農業支援や漁業支援も行うので、優遇してくれる。
本来ならばロシアやベトナムのようにトータルで購入できる近場の油田の方が理想なのだろうが、日本全体となると調達量が巨大すぎるので、中東のように「石油かガスだけの国」で調達するしかない。「遠かろう、メリットなし」の2重苦なのだ。
富山県と東京都大田区全体で200万人分が必要とする食料と石油を購入し続けるので、ロシアとベトナムからの調達で事足りる。しかも120円のガソリンなので、目立つし売れる、それ故に直ぐに売り切れるし、商品の現金化も利益確保も早く済む。売れるから店舗数が増えてゆく。
日本全体で見れば些細な話でしかなく、特定の地域だけが例外であって、大多数に影響は及ばない。
川崎方面から国道1号線の多摩川大橋を渡って大田区入りして品川区大井町までの区間に、PB Enagyのガソリンスタンドが3箇所、国道15号と首都高の下を走る産業道路の大田区区間内に7箇所のPB Enagyのガソリンスタンドが出来ている。ガソリンスタンド併設のミニスーパーPBMartは東急目黒線、南武線、京浜東北、京浜急行の太田区内の各駅の駅前や商店街内に進出、夏本番なので東南アジア製造の炭酸飲料、ビールが売れまくっていた。
太田区内の個人経営の酒屋さんには東南アジアの各ブランドビールや富山県産の日本酒を格安で卸すようになると、太田区内では発泡酒や第三のビールが全く売れなくなってゆく。
日本政府のビール酒税と、ガソリンに盛られた様々な税金のバカバカしさを間接的に非難、財務省の底の浅い課税方式を嘲笑う。
また、政府が小麦の需要が高く、仕入れ単価の上昇により8月から小麦価格を上げると報じると、富山に本社があるプルシアンブルージャパンは富山県と東京大田区の商工会に提供する小麦を8月から値下げすると報じて、小麦を利用する店舗で阿鼻叫喚の声が起きているのを各メディアが報じた。
「なぜ、プルシアンブルー社は小麦を安く提供できるのか?」
英国BBCの日本駐在のアランホワイト記者が富山と大田区を羨むように報じる。価格低減の理由は獣害対策にあった。
オーストラリア産の小麦が生育中で穂が実り始めたのだが、その実りはじめた小麦を狙ってエミューが小麦畑に容赦なく侵入して捕食する。エミューが壊した柵や網からはウサギが進入して麦を食べてしまう。そんな2重の獣害対策に、プルシアンブルー製の2種類のドローンがクイーンズランド州の農場で大活躍しており、エミューは絶滅危惧種なので麻酔矢で眠らせて保護し、ウサギは投擲ネットで一網打尽にして、スーパーの精肉コーナーで格安肉として売られるまでになった。
プルシアンブルー社のノウハウの一部を紹介すると、ウサギは水場に集まる習性があるので小麦畑の周囲からやや離れた場所に、投擲ネットを落下させるポイントに水場と餌場を作る。地下水や井戸が有るのが望ましい。
ドローン自体がウサギに警戒されるとのが最も悪手なので、地上1500m上空を飛翔し、水場に対象のうさぎが多数集まっているのを確認すると、ほぼ無音のまま800mまで垂直降下し、落下の勢いを活かしてバスケットボールサイズのネット弾丸を火薬爆発で発射する。
「バン」という音が地面に到達している時には放射状に広がった網の中で身動きできないウサギが150匹ほど捕獲できる。プルシアンブルー社の従業員2人がネットの上からピックでうさぎの頭を刺して絶命させると、シートを敷いたトラックの荷台にうさぎを放り込み、シートを閉じる。そしてトラックとドローンを搭載した四駆車輌で食肉会社に向かいうさぎを納品する。
エミューは麻酔矢で眠らせて、動物愛護団体や保護団体に運ぶ。エミューは保護されるがウサギは2〜3億匹いるとも言われているので、毛皮と食肉に転ずる。
うさぎの妊娠期間は30日で、一回の出産で6〜12頭の子供を産む。60日くらいで親から離れて独り立ちする。年に4回繁殖した場合、一年で一頭のメスが40頭に増える。半数の1億匹がメスなら、策を何も講じなければ直ぐに40億匹になってしまう。半数としても凄い増殖率だ。日々捕獲し続けないと作物被害は増えてしまう。
プルシアンブルー社のクイーンズランド州の従業員給与は日々3万匹のうさぎの肉の卸値が原資となる。10チーム20人で各チーム3000匹が目標だが、これは水場と餌場が20ポイントもあれば容易に捕獲できる。頭をピック刺しなので毛皮の状態もよく、1匹あたりの販売額が0.5~1ドルとなる。安く見積もって0.5ドルとしても日々1500ドル、20日間で3万ドル、オージー1ドルあたり95円で換算するとチームで285万円,一人142万5千円から車両リース月額料、月額燃料費、ドローン整備、維持管理費を除いて月給が支払われる。ウサギ駆除で高給が得られると人材が集まる。
プルシアンブルー社のドローンは自動制御なのと、操作が分からなければベトナムと日本のスタッフがリモート形式で対応して、10チームのサポートを行っている。
当面採用も教育もOJTも、リモートで行ない、更にクイーンズランド州にお住まいの方を対象に20チーム40名の増員を行う予定だ。
オーストラリア政府はウサギ対策で年間160億円掛けても作物被害が減らない状態が続いていた。害獣被害による小麦の全体被害は2〜3割程度と見ていたが、クイーンズランド州の一部に10チーム投入してテストしたことで対象エリアの被害が止まった。
プルシアンブルー社はドローンによる成果を費用で求めずに、被害分の小麦損失を収量の2割相当と判断し、収穫量2割を成果収入とみなしてプルシアンブルー社の小麦の卸売価格を下げて欲しいと要求、了承を得て、オーストラリアの穀物会社と契約を交わした。
それ故に、プルシアンブルー社は安く小麦を調達できるとBBCcがスッパ抜いた。モリは記者会見でのアランホワイト記者との約束を守った。
「不当に安く仕入れている訳ではなく、双方が利を得ている合法的なもので、消費者もその恩恵を被る」とBBCcは言及した。
与党が強く言えないのが、富山で商工会に卸しているのが自民党の県会議員で、東京都議会では、モリ議員と特別会派を結んだ自民党都会議員の選挙区内の商工会に小麦を提供する動きをし始めている。東京都与党の都民セカンド(本当はふぁあすと、らしい)が来年の都議会選挙で勝てないと都知事に泣きつき、都知事は日本政府に「国民生活の窮乏期なのに、小麦の値上げは生活を脅かす」と抗議し減税策も含めて早急に動いてほしいとするが、自民は世論を見誤ってしまう。
「10万円支給金の配布が全国で完了の見込みです。生活資金の補填として有意義に使って下さい」として燃料、穀物などの値上げや減税策は打ち出さずに終わる。そもそも国会はいつまで立っても開かれない。そこに沖縄と北海道の観光地のコロナ患者が急増し、新たな問題となりつつあった。
都議会では富山県議会同様に自民党の勢いが増し、都知事と都民セカンドの旗色が明らかに悪くなっている。与党である都民セカンドの法案は修正に次ぐ修正で、骨抜きとなり廃案となったり、完全に別物として成立するようになる。
「法案修正案を作成しているのは自民ではなくモリ議員だ」と、都議会を監視している市民団体が公表し、ニュースになった。
与党にしても、都民セカンドの議員や秘書がやっている訳ではなく、都の職員に丸投げしているだけなのだが、「自民党都議連の参謀の座に、モリ都議が居て、議員本人が手掛けているか、かなり優秀なスタッフを抱えているか、何れかだろう。議会が適切に機能するようになり、具体的なプランに進化したのは、ひとえにモリ都議が当選したからであり、存在と結果は絶大なものがある」と市民団体は評価した。
そこまでおだてられると、市民団体にお弁当をご馳走して懇親会をして、都の職員の誰が市民団体に好意的かを聞いて、飲みに行こうと提案する。都の職員の味方作りもしなければならない。
東京都の番記者は議会終了後にモリ都議を囲んで取材するようになり、2日に一度の割合でモリは記者会見に応じた。毎日会見して中身のない話をしている醜女を牽制するためだ。
内容と質の高さを見せつけるのが狙いだった。
モリの会見のある日は、都知事側の記者会見に集まる記者が居なくなり、都知事の会見はモリの会見の無い日に行われるようになった。
モリの会見は2時間平均と長く、自前の通訳も居るので海外紙の記者も集まり、人気を呈するようになる。「どちらを都知事と呼ぶに相応しいか、わずか10日間ではっきりした」と海外メディアが辛辣な記事を書くと、日本のメディアも都庁内のパワーバランスが変化したと判断して、「自民党と無所属同一会派」を取り上げるようになる。
やがて「都知事の心身状態が悪化中?」と囁かれるようになる。都の幹部職員に無茶な指示を出しているとか、職員を怒鳴り散らしているご機嫌斜めな実態を、オブラートに包んで報じているだけなのだが。
そして都議会最終日の午前中に、満を持したように、食品メーカー大手のケルビーと日々清食品、製粉大手の日々清製粉の3社が会見を開いた。
「8月1日以降の小麦調達はプルシアンブルージャパン社に一本化し、国の調達からは撤退いたします。企業努力で価格を維持するのが難しい段階に来ており、安価な小麦調達を実現したプルシアンブルーさんの協力支援を仰ぐことにしました」と述べた。
食品メーカー、製粉メーカーの反乱と後に言われるようになる。知らされていなかった経産省や政府は大騒ぎになる。当然ながら、追随する企業は数社どころの話では済まなくなる。
プルシアンブルージャパン社はこの日、東証に10月株式上場を申請する。
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「働かずして、労せずして利を得る仕組みは、我が国では不要になって欲しいですね」
先週週明けから黒縁スクエアの眼鏡と白髪姿となったモリは、記者から「食品・製粉メーカーの反乱」の感想を求められたので応えた。
また、お疲れの様ですが大丈夫か?と記者に問われて、
「書類作成に忙殺される日々でした。都の与党の作業代行している職員さん達よりも忙しかったと思います。当方は同一会派を組んでいると言っても、私一人でやってますからね。
それでも、同一会派を組んだ意義はありました。与党、都民セカンドと都知事の好き勝手を阻止したばかりか、新人が手掛けた法案が通るんですから感無量ですし、満足しています。
9月の議会でも同じスキームで望みますが、手慣れてきましたので更にアグレッシヴに取り組んで行こうと考えています」
「プルシアンブルー社の日本法人が上場の申請を出しました。モリさんも株主なのですか?」
「いえ。私は持っていません。そうか、まだ議員資産の公開がされていないんですね?なぜタイムリーにできないんでしょう?お役所仕事ってヤツなんですしょうか?」
「しかし早い上場です。なにか一言お願いします」
「もう退任していますので、コメントは出来かねます。上場する会社を歓迎するのは日本政府の関係者だけだと思います」
この時点で石油事業もミニスーパー事業も大手企業に比べれば、僅かな売上でしかない。
その一方で農作業用バギーや狩猟用バギー、警備用バギー、魚群探知機などの製品は輸出で売上拡大を計る「戦略的製品」プルシアンブルー社の基幹事業となる。
輸入品で小銭を稼いで、輸出で大貨を得るこの両輪で会社を成長させる。しかし、表向きはモリは経営にも、事業にも関与しない。プルシアンブルーからは1円たりとも貰わない。
内縁の妻たちが経営者であり、事業者として収入を得る。それから特許収入だ。バギー関連のアイディア提供に伴う費用だけがモリの懐に入る。
海外へ出掛ける口実を、「特許が絡んでいる」と回答する為だ。
政治家は明朗会計が求められる。過剰なカネが明細の項目に載るような事態は避けねばならない。
モリと金森鮎の政治活動を明朗会計でクリーンなものとして維持してゆく。一方で養子縁組と擬似的な大家族制度は、効果的な隠れ蓑として機能してゆく事になる。
(つづく)
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