見出し画像

[そうなの?] Googleでの英語の苦労と学習法

こんにちは、tacox です。本日は、Google に入社してもっとも困ったこと、英語について、お話ししたいと思います。

一口に英語と言っても、そのスキルはいろいろある

Google 面接と転職」で書いた通り、2007年に Google Japan に Google Analytics の Support Specialist として入社します。入社後、Google AdWords も担当するようになり、毎日、カスタマーから多数寄せられるプロダクトのお問い合わせに対応する日々が続きます。適切にカスタマーにサポートを提供するには、とてつもないスピードでアップデートされるプロダクト情報に追いつかなければいけません。プロダクト開発は、原則、本社に centralize されていたため、英語で流れてくるメール、アーカイブされている資料は全て英語ドキュメントです。Google 以前に外資系経験はなかったものの、受験英語を pass して来たので、正直、英文を読んでプロダクト知識を吸収することで困ったことはありませんでした。

ところが、reading 以外となるとちょっと事情が変わります。メールに対して質問したり、ドキュメントに書いてある以上の情報を得るため、ping をしたり、call をしたりしなければならない場合、躊躇するメンタリズムが生まれます。聞きたいことがギクシャクした英語文法では伝わらないのではないか?、辞書引くのが面倒臭い、発音が悪かったり聞き取れなかったりすると赤っ恥をかく、などが主な理由です。仕事をする上で必要最低限の英語のスキルとメンタルセットが欠如していると認識したのと同時に、一口に英語力と言っても、「読む」、「書く」、「話す」、「聞く」という、4つの異なる能力があること、それぞれの学習方法は異なり、話すために書くための学習を続けても効果的でないこと、別物であるがゆえにパラレルに勉強できること、ビジネスをする上で、「読む」だけでは、限界があることなど、すぐに気づくようになります。

英語学習へのモチベーションの作り方

英語能力の欠如は、業務遂行を阻害するだけでなく、Google と言うグローバル企業で多様で優秀なタレントや個性から学んだりコミュニケーションをとったりするチャンスを失います。特に後者は非常に当時の僕にとって大きかった記憶があり、英語勉強のモチベーションの源泉になりました。Japan オフィスとは言え、本社 Mountain View や他の region からの dispatch や visitor が多数出入りし、とてもインターナショナルな環境でした。加えて、会社として、多様なバックグラウンドを持つ人材がカジュアルにコミュニケーションできるように、フリーランチが提供されたり(外に行かず社員食堂で食事を取るため)、オフィスにマイクロキッチンがあり社員の minglingを促進したり、何と言っても金曜日の17時からは happy hour (TGIFと言います)がありました。ここで英語が話せる話せないで、Googler として Google ライフを満喫できるかどうか全く変わります。単純に、もったいない!と思ったわけです。

また、Google 独自のカルチャーとして、全社員を全面的に信頼し、性善説に基づくコミュニケーションを大切にしていました。自分が属する広告事業のカスタマーサポート部門以外の他部署、他部門の情報やプレゼン、他の国や Larry Page と Sergey Brin から直接のアップデート(TGIF の場で全社員向けに毎週あります) も頻繁にあり、英語情報を取得できないと全く楽しくありません。「世界を変える、そんなプロジェクトの最先端を理解できない!」。そんな劣等感に似た焦りを感じ、そこでこれは早急にキャッチアップしないと行けないと奮起します。

実践的英語の学習方法(1) 読む・書く

読む、書く、話す、聞く、それぞれの現在のレベルがどれくらいで、レベルを上げるためにどんな勉強やトレーニングをしないと行けないかまとめました。「読む」ことは、もともとある程度できていたので、業務のメールや資料を読んで英語に触れながら、足りない部分は、通勤途中で英単語帳を使ってボキャブラリーを増やすことを徹底しました。「書く」ことは、これも業務でキャッチアップしていくのがもっとも実践的と判断しました。とにかく、辞書を引く面倒臭さは捨て、聞きたいことや確認したいこと、あるいは説明したいことを正しく表現するために時間をかけてでも一通のメールを辞書を使って丁寧に仕上げました。

毎日流れてくる英語メールで、ネイティブの文章表現や業界特有の語彙や abbreviation を何度か復唱し自然と使えるように学習しました。メールに慣れてくると、もう少し迅速なインタラクションが求められる instant message でも積極的に英語を使うようにします。mail と違い、instant message の方が会話調のカジュアルな感じでやりとりでき、堅苦しい文法はある程度許されるので、メールから instant message への移行は苦労しましませんでした。また、instant messageで流暢にやりとりできる訓練は、verbal communication の下準備になりました。

実践的英語の学習方法(2) 話す・聞く

「話す」について、Google の環境は非常に恵まれていて、多数のネイティブがオフィスにいましたので、ランチや TGIF で積極的に交流しました。ただこれはスピーキングやリスニング能力を向上させるというよりも、どちらからというと、ネイティブと話すこと、文法を間違うことに恥ずかしがらないこと、発音が悪いことに恐れいないこと、などのメンタルトレーニングに非常に役立ちました。ちゃんとした話し方の学習は、一人で行えない唯一の勉強方法で、英会話教室に通うことで対応します。英会話教室は、ビジネス英語に特化したベルリッツのようなスクールや、英語を英語で理解させることにフォーカスしたリンガフォン(商材が高額でしたが、、)や、会社が提供してくれる英語研修まで、ありとあらゆる物を試しました。フォーマットもプライベートレッスン、グループレッスン、オンラインまで色々です。

英語力を飛躍的に向上させてくれたのは、日本人講師が日本人のために教えるスタイルの NCC 綜合英語学院でした。しかも”三密”状態の超グループレッスンでした。とにかく構文を覚えて、それを授業でリピートするという、どちらかというと、受験英語のようなスタイルですが、こういうことを言いたい時はこの英語表現という風に、体系的に相当の数の構文パターンとそれを使った幾通りもの例文が整理されていて、自然と口から出るまで暗唱させられます。フレーズや表現や文法のストックを口からスラスラ出るまで自分のものにすることで、瞬発的に答える必要があるときにスラスラ言える場面が急激に増えました。

また、独り言英会話といって、毎週、A4サイズの日本語の物語を配布され、それを辞書を見ずに、蓄積しているボキャブラリーでなんとか表現する通訳の練習を一人でするのですが、不思議と初見より、例えば20回目の方がナチュラルな英語が出てきます。独り言英会話の利点は、同じ日本語文章を何度も辞書を引かずに英語に直すことで、限られたボキャブラリーから英文をひねり出す発想の訓練になることと、一人でできなかった唯一のトレーニング「話す」を一人でできるようになり、スピーキングの学習時間を確保できたことでした。英会話スクールで講師と話すのはせいぜい週一回か二回程度ですので。このような訓練で話すことをスキルアップさせて行きました。

最後に、「聞く」ですが、これはもっとも楽しい学習でした。まず聞き流すだけなのでラクです。pod castや youtube、あるいは TED talkなどから、動画を毎日聴くということを続けました。続けていると、listening 能力が上がりますが、効率を上げるためには、字幕付きがベストです。流れてくる音声と文字を一致させないと、意味がわからず、次流れてきても理解できないからです。Netflixは英語字幕にできるので、ドキュメンタリーや映画は英語字幕をつけて視聴します。これは今でも続けています(映画はスラングも多くコンテクストを共有しないと理解しづらいため、ニュースやドキュメンタリー、Ted talkなどが仕事英語向上には向いています)。

そして、英語学習においてもっとも大事なこと

モチベーションで触れましたが、勉強しないといけない、というネガティブな理由で英語学習をスタートさせると継続しないので、やめた方が良いと思います。Google に入社してから、業界を離れて別の会社にいる今でも、英語学習は続けていますが、これは、世界を牽引するサービスやソリューションを生むのは、残念ながら現状では米国であり、そのような企業のミッションやプロジェクトに一員として参加するためには英語が必須です。Google で世界を変えるというエネルギーと一芸に秀でたタレントや個性と働けた経験は強烈で、今後もそのようなワクワクする企業で仕事したいというモチベーションが英語学習を続けさせてくれていました。

また、ネガティブということと逆になりますが、思いっきり恥をかく、という経験も、その後の英語学習の継続にプラスです。初めての出張で、上司より「今回は一緒についてきなさい」と言われ、お客さん気分で出張を楽しみにしていたことがあります笑。ところが、出張四日前くらいに、「急遽、Japanの現状を本社の開発に伝えないといけないから、日本のカスタマーの状況を分析してプレンゼして」と指示を受けます。入社間もない頃です。寝る間も惜しんで英語プレゼンを準備ましたが、当日は、ご想像の通り、ほぼ話せず、全く伝わらなかった経験があります。この経験が、非常に悔しく情けなく、出張中も落ち込んでいたのですが、帰国後、英語に力を入れる強い動機になりました。

そして、英語学習は、会社研修などで自己投資なしで済まさない方がいいでしょう。会社研修のクラスは、業務にかこつけて、欠席率やリスケジュール率が高くなり、英語学習のペースを乱す上、宿題などもまともにしません。その点、自己資金の場合、高額だったリンガフォンや他の英語スクールでは、やはり毎回出席しましたし、宿題量が膨大にある NCC 綜合英語学院もこなしていけました。将来のキャリアオポチュニティ、年収レンジなどを考えると、英語学習にかける投資は、reasonable で、努力分、かえってきますので、ぜひ投資と思って、自己資金を使って英語にチャレンジしてみましょう。

さて、本日は以上となります。次回は、もう少し Google のことや Google AdWords のことまで踏み込んで、僕のキャリアについて話したいと思います。よろしくお願いします。

コンテンツ
1. はじめに(キャリアの作り方連載します)
2. チャンスをつかむ必勝法とは
3. 検索連動型広告との出会い
4. Google 面接と転職
5. Google での英語の苦労と学習法
6. Google で学んだ仕事術
7. 目標管理ツール OKRs について
8. 35歳からの営業職への転身
9. GAFAはなぜ企業文化を大切にしているか?
9. Facebook への転職とモバイルシフト
10. Facebook は広告の強さとコマースへの進出!?
11. 決済とはマーケティングだ!
12. 変化とグロースの世界で生き抜く方法

もし記事を気に入っていただければ、サポートして下さると非常に嬉しいです。執筆活動の励みとさせて頂きます。