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強すぎる数え歌|毎週ショートショートnote

真っ直ぐ行けば、遠回り。

右に曲がれば、鉢合わせ。

左に曲がれば、真っ逆さま。

昔、俺が住んでいた田舎にあった歌だ。でも、この歌が何を意味するかは知らない。

中学の時、通学路の途中に小高い丘があり、その丘は雑木林になっていて、不気味なので、みんなその丘を迂回する小道を通っていた。
ある時、付近一帯が再開発されることになり、例の丘の木々はほとんど切り倒され、前よりも不気味さはなくなった。部活の帰り道、何となくその丘を自転車で走っていると、突然光る眼と遭遇した。

――猫か?

そう思った瞬間、2つの光る眼はくるっと回転してこちらに近付いてきた。

――うわ!?

驚いてバランスを崩し、自転車ごと倒れた。

帰宅して、母は俺の顔を見るなり、鬼のような形相で俺を近くのお寺に連れて行った。住職は俺の顔を見て少し眉をひそめ、母に「たまたまでしょう。大丈夫です」と言った。

母と住職は俺に聞こえないようにひそひそと話をして、結局、俺には何も話してくれなかった。

俺は回転する光る眼を思い出し、同時に祖母が言っていたことを思い出した。昔、罪人の首を切る処刑場が近くにあり、あの丘が「首切り山」と呼ばれていた、と。

俺が遭遇したのは猫ではなく、切り落とされた……。

真っ直ぐ行けば、遠回り。
――丘へ入る道は、あの世への入口。

右に曲がれば、鉢合わせ。
――丘を通ってしまって、光る眼と「鉢合わせ」してしまった。

左に曲がれば、真っ逆さま。
――光る眼に、あの世へと連れて行かれてしまう。

なるほどね。

(了)


たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「強すぎる数え歌」です。

お題の難易度が上がっているな…。
実は「首切り山」に関しては、母方の祖母(茨城)が同じようなことを言ってました。その丘は今もあります。


先々週(先週はパス)のお題は「ご飯杖」でした。

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