IT道場 エスワイシステム

未経験者から開発エンジニアになりたい方向けのプログラミングスクールを運営しています。こ…

IT道場 エスワイシステム

未経験者から開発エンジニアになりたい方向けのプログラミングスクールを運営しています。ここでは未経験の方の背中を押せるような発信ができたらと思っています。私たちはやる気と覚悟があれば誰でもエンジニアになるチャンスがあると確信しています!

最近の記事

エピローグ

とあるオフィスの日常。 「先輩、このテスト工程が上手くいかなくて……」 「えっ? ああ、それは本番と検証の違いがあるから読み替えが発生するんだよ」 「すみません! お客様から連絡が入っていて」 「あー、はいはい。ちょっと待って、あ、新島さん? いつもお世話になっております。堂城です……」  堂城一斗はWBSとガントチャート、TODOリストを見ながら、苦笑いを浮かべる。毎日が慌ただしく過ぎ去り、気づけば5年という歳月が流れていた。  正直に言うと『なんとかやれている』。  

    • 33.マイインターン

      「堂城ちゃん、待ってたよ」  営業担当の相原さんが、机の上に広げた資料は、私の今までの記録と特徴、そして様々な就職先だった。 「ウェブでもよかったけど、こういうのって雰囲気も大事だと思うんだよね」と、二人で資料を囲みながら内容を吟味していく。  就職活動と言えば、孤独な戦いだ。  エントリーシートやSPA、グループディスカッション……挙げ始めたらキリがないような、重箱の隅を楊枝でほじくるようなことまで想定しておかなければならない。  そのように考えていた。 「でも結

      • 32.何を伝えたいか--終着点--

        「それじゃ良さが生きない」  私はもう何度目かわからないダメ出しを受けていた。 「どういう思いがあってその機能を実装したのか。それをプレゼンターとして訴えかけないで、機能の説明だけをされても『おっ?』とは思わないし、オブザーバーの方が質問したくなるような気持ちにはならないよ」  大島英雄塾長。普段は講師の岡田先生に一任している姿しか見ていなかったが、今日この日は違った。 「堂城くんはロジカルシンキングができている。でも『ここは目玉だよ』と思わせることで、『質問を局所化

        • 31.明けない夜はない

           どんなバグにも明けない夜はない。  回避するのか保有するのか、移転か軽減か。それは時と場合によるが、私はリスクを回避(解消)する茨の道を突き進んだ。なぜならこれは課題であるからだ。    一つ一つを紐解いていく道は、膨大な時間を要したが決して遠回りではなかった。きっと顧客目線で考えた時には必ずしも正解ではないだろうし、上手く伝えられる自信はまだないが、一つの武器を持った瞬間であった。 「すべての工程が完了いたしました」 「堂城くん……おめでとう」  無事にやりきった時は

          30.強くてニューゲーム_3

           私は自宅でキッティングを終えると、翌日には教室へと向かった。  通いなれた道に、こじんまりとしたビルの2階。最初は入るのに躊躇した扉の中には見慣れた仲間たちがいた。  岡田先生、楊さん、晴子さん……。    つい、晴子さんを見たとき、声を掛けそうになってしまった。  当然のことながら、彼女や彼らは私のことを知らないだろう。 「今月から入った堂城くんだね。俺は講師の岡田です。さっそくだけど自己紹介してくれるかな?」 「今月からIT道場に通います、堂城一斗です。最強のエンジ

          30.強くてニューゲーム_3

          29.強くてニューゲーム_2

          「では堂城さん、こちらが端末となります」  IT道場に通うと決めた日、受付担当の上村さんから私にとって相棒と言ってもよいPCを借り受ける。 ――ここから先、待っているのは『あの』キッティングだ。  Java Development Kitのパスに半角スペースが足りなかった日のことを思い出す。 「すごく黄昏れた顔をしていますが、何かありましたか……?」 「い、いえ、以前使ったことがあるPCに似ていまして」 「そうでしたか、珍しいですね。では端末とキッティングの資料の方を

          29.強くてニューゲーム_2

          28.強くてニューゲーム_1

           毎日課題に励み、泥のように眠りにつく。  これはそんな日々を過ごしていたある日のことだ。  自室には私のパソコンが煌々と明かりを放っている。  部屋はどこか薄暗く、私自身の身体も若干重いように感じた。   (いけない。昨日パソコンつけっぱなしで寝てしまった)  エンジニアへの就職、JAVA、機械学習、AI……。  ブラウザ上ではネットサーフィンをした残骸が残っていた。    そう、これは私が過去にITジャングルへ彷徨った時の記憶だ。あれから3か月、本当に色々あった。何度

          28.強くてニューゲーム_1

          27.NeverEndingStory

          「あ、そろそろ部屋閉めるよ?」  確かに毎日同じような言葉を言われているが、これは決してループものの物語ではない。  テストの消化率は上がっているのにバグの数は依然として放物線を描いてはくれない。まるでこれは私の伸びしろだと言わんばかりに右肩上がりの真っすぐな線が引かれている。  私はウォーターフォールモデルにいる魚であり、何度目かの滝登りを成功させている。鮭界隈ではきっと期待のホープだろう。  そんなこんなで日々は無情にも流れていった。 「僕は堂城さんの課題を最後

          26.ひたすら地味な攻略

           私は淡々と画面を見ていた。  そう、『エラーが表示される画面を』だ。  正しく設計した【つもり】であってもどこかしらにケアレスミスは生じる。  むしろ「エラーが表示されてくれてありがとう」と端末に向かって感謝のような感情が芽生え始めている。今、見逃してしまったら最後まで気づかずに進んでしまう可能性がある。今ならわかる、それはとても恐ろしいことだ。 「堂城くん、もうそろそろ閉めなきゃいけない時間なんだけど……」  時刻は22時を回っていた。  岡田先生はこの時間まで何

          26.ひたすら地味な攻略

          25.BOSS戦

           木の棒を片手に小鬼を退治していた村人は、見守ってくれる仲間を増やし、装備を集め、技術を磨き、気づけばリーダーになっていた。  道中に蔓延るバグの群れや迷宮の罠に苦戦を強いられながらも、辿り着いた部屋はBOSS部屋と呼ばれる本番(環境)での戦い。 ――何も恐れるものはなかった。  やれるだけの準備はしてきた。あとは自らが作った攻略本とともに正しいことを証明するのみだった。しかし、想定外というのは想定していないことが起こるもの。それはこれまでの旅路の過程で嫌というほど体験

          24.QOL

           楽しいと感じたことはこれまでにもたくさんあった。  ただ、それはどれも一時のことで、例えばゲームをしている時だったり、美味しいご飯を食べている時、休日を満喫できたと感じた時だったりする。  そして、また変わり映えのない日常が待っていた。  でも最近の私は少し変わってきた気がする。  確かにゲームをするのは息抜きになるし今も大好きだ。でもずっとしていたいか、何かを犠牲にしながらしたいかと言われると違う。  あくまでも頑張った自分へのご褒美として、価値がある行為になった。

          23.軽自動車の旅

          「よしっ」  久しぶりの自信がこもった一言。  そう、私だけの設計書が完成したのだ。  私はスペックの高いスポーツカーを乗りこなせる自信はない。それなのに、覚えたことを利用したいがため、無駄に難しいことをしようとしていた。  自分にとって乗り心地がよい、使い勝手がよいものを突き進めていった結果。 ――コスパよし、燃費よし、長距離OKの軽自動車のような設計書ができた。  軽自動車の作りが簡単というわけじゃない。  要求したい操作にあった仕様にすることが大切だという意味

          22.別れは突然に

          『晴子さん、ご卒業おめでとうございます。とても親身なってくれてありがとうございました』  この言葉を私は伝えたかった。  でも伝える時はやってこなかった。  受講者のタイミングは様々だ。一人一人いつ入ってきて、いつ去っていくのかわからない。だからこそ、「晴子さんいつ卒業ですか」と聞いておけばよかった。後悔とはこのことだろう。  でも最近はプライベートなことを聞こうとすると、セクハラだとか、モラハラだとか、パワハラだとか、『何とかハラ』で溢れている。だからみんな臆病にもな

          21.足が痺れる

           長い時間、正座をしているとどうなるか。  感覚を失っていることに気づきもしないまま、いざ立とうと思った時に立てないはずだ。  ――集中することの沼がここにある。  立ち上がるという、ついさっきまでできていたことすらできない。  人はこれを笑って見ているけれど、自分にとっては笑いごとではない。為す術もない時間を過ごすしかなく、なによりも恥ずかしい。  途方にくれながら過ごす一週間はあっという間であり、私の足を痺れさせるには十分な時間だった。 「進捗は何も進んでいません

          20.ただいま屈伸中

           堂城一斗(たかぎ かずと)は焦りに焦っていた。  それはあっという間に2ヵ月という時が過ぎようとしていたからだ。 ……  私がやってきたことは、本当に『社会』で、『IT』で戦えるのか。  そう思わずにはいられない。なぜなら、スライムやゴブリンを倒す実戦経験をしていないからだ。木人に剣を振りかざしていても、人斬り抜刀斎にはなれないでござるよ。IT道場どの。  まあ木人抜刀斎にはなれているかもしれない。恐るべしスギ花粉め!成敗してくれる!  って考えていた私がいた。  

          19.ステータスウィンドウ

           ロールプレイングゲーム風の世界なら、「ステータス、オープン」と呟くだけで、自分の能力が見られるだろう。ではもし現実でそれができたのなら私はどんな能力値でどんな技術を持ち、どんな特性があるのだろうか。 「ステータス、オープン」 堂城一斗 経歴 ・IT関連のスキル未経験から開始。 ・JAVA歴 1ヵ月と10日 能力 ・課題の進捗△ 少し遅れ気味 ・忍耐力○ 諦めずに取り組んでいる ・傾聴姿勢◎ 講師や他の生徒のアドバイスを聞ける ・ビジネスマナー○ 筋書さえ想像できれば対応

          19.ステータスウィンドウ