29.強くてニューゲーム_2

「では堂城さん、こちらが端末となります」

 IT道場に通うと決めた日、受付担当の上村さんから私にとって相棒と言ってもよいPCを借り受ける。

――ここから先、待っているのは『あの』キッティングだ。

 Java Development Kitのパスに半角スペースが足りなかった日のことを思い出す。

「すごく黄昏れた顔をしていますが、何かありましたか……?」
「い、いえ、以前使ったことがあるPCに似ていまして」
「そうでしたか、珍しいですね。では端末とキッティングの資料の方をお渡しいたしますので、内容を見てキッティングからよろしくお願いいたします」
「はい、任せてください」

 自然と出てくる言葉には自信が伴っていた。
 クエスチョンマークだった日々ではなく、やるべきことがわかる世界というのは、なんて楽でいて、心地よいのだろうか。

「リモートや教室にきての学習がありますが、堂城さんはどうされますか?」
「私はなるべく教室に来たいと思っています。一人で黙々と作業をすることも大事ですが、少しでも色々な方と話して刺激を受けたいです」
「わかりました。大変ご立派な考え方ですね」
「あはは……そうですかね?」

 つい、乾いた笑いが出てしまう。
 教室の講師や仲間たちから様々なことを教わってきて、私は私自身を決して立派と言われる人物ではなかったと思っていた。何度も失敗を繰り返しながらやってきたにすぎないからだ。

 でも今ならその時間が大切だったとハッキリと言える。
 一人で考え込み過ぎず、一歩を踏み出したその瞬間から、私の人生の歯車は動き出したんだと記憶している。

「では、私ども全力でサポートいたしますので、いつでもIT道場を頼ってください」
「はい、もちろんです!」

 それが嘘偽りのない言葉だと、私は知っている。

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登場人物
最強のエンジニアを目指す人 堂城一斗(たかぎ かずと)
アカデミー事業部受付担当 上村桃香(うえむら ももか)
※この話は完全なフィクションです。
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