31.明けない夜はない

 どんなバグにも明けない夜はない。
 回避するのか保有するのか、移転か軽減か。それは時と場合によるが、私はリスクを回避(解消)する茨の道を突き進んだ。なぜならこれは課題であるからだ。
 
 一つ一つを紐解いていく道は、膨大な時間を要したが決して遠回りではなかった。きっと顧客目線で考えた時には必ずしも正解ではないだろうし、上手く伝えられる自信はまだないが、一つの武器を持った瞬間であった。

「すべての工程が完了いたしました」
「堂城くん……おめでとう」

 無事にやりきった時は、達成感よりも安堵感の方が大きかった。
 先輩方の背中に追いついた安堵感。同じ道を辿ることにつまらなさや嫌悪感を示す人もいるだろうが、私のオリジナリティはプログラムの中に刻まれている。

「堂城君も、もうあとは成果発表会を残すのみか。早いな~」
「そんなに早く終わらなかったですよ」
 自分の中の最善ではあったが、最速だとは決して言えなかった。なぜなら――御柳さんはすでに卒業していたからだ。
 最初に会ったきりとなったできる後輩。彼がいて私は焦りに焦った。そして、あっという間に過ぎ去ってしまった。元々、自信がない自分ではあったが、目の前で『違い』をまざまざと見せつけられるとほんの少しだけ心は痛んだ。
「でも得られたものは堂城くんが一番かもしれないよ?」
 こうしていつもプラスに変えてもらえるその言葉がありがたかった。やはり、物事は受け取り方次第なのだろうとまた気づかされる。
「そうですね!」
 そう、素直に思える自分もまた変わったのだろう。

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登場人物
IT戦士を目指す人 堂城一斗(たかぎ かずと)
アカデミー事業部臨時講師 岡田啓介(おかだ けいすけ)
※この話は完全なフィクションです。
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