20.ただいま屈伸中

 堂城一斗(たかぎ かずと)は焦りに焦っていた。
 それはあっという間に2ヵ月という時が過ぎようとしていたからだ。

……

 私がやってきたことは、本当に『社会』で、『IT』で戦えるのか。
 そう思わずにはいられない。なぜなら、スライムやゴブリンを倒す実戦経験をしていないからだ。木人に剣を振りかざしていても、人斬り抜刀斎にはなれないでござるよ。IT道場どの。

 まあ木人抜刀斎にはなれているかもしれない。恐るべしスギ花粉め!成敗してくれる!

 って考えていた私がいた。
 ――課題の次のステップに進むまでは……。

「んー、んー、んんん、んー、うーん?」
「堂城くん、口からモールス信号が零れてるけど大丈夫?」

 大丈夫。とは言いたいが、私は決して大丈夫ではなかった。
 今までの課題は問題は難しいが言っている意味はわかった。しかし、新規課題はその意味すらわからない。どうプログラムを組んでいいのかわからない。何が必要なのかがわからなかった。

「いやー、わからないことがわからないと言いますか。やりたいイメージは伝わるんですけど、何が必要か書いてないじゃないですか」
「あはは、ついにその問題に直面するときがきたってことだね」
「ど、どういうことでしょうか」
「お客様から発注があった時に、やりたいイメージを伝えてくるだけの場合もあるんだ。そこからどう提案していくのか。どう設計していくのか。こちらから実現可能なことを伝えなきゃいけない」
「つまり……、単純にコーディングするだけじゃないと」
「その通りだよ!」

 岡田先生は爽やかな決め顔で親指を立てているが、私は心の中で叫んでいた(アッー!)。少しずつコーディングを覚えて、なんとなくできるような気持ちになっていた。ITの世界は広い。本当にやるべきことがなくならない。でも基礎中の基礎は覚えてきた実感はある。

 そう、私は屈伸中だ。これは飛ぶための大事な予備動作である。

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登場人物
IT戦士を目指す人 堂城一斗(たかぎ かずと)
アカデミー事業部臨時講師 岡田啓介(おかだ けいすけ)
※この話は完全なフィクションです。
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