エピローグ
とあるオフィスの日常。
「先輩、このテスト工程が上手くいかなくて……」
「えっ? ああ、それは本番と検証の違いがあるから読み替えが発生するんだよ」
「すみません! お客様から連絡が入っていて」
「あー、はいはい。ちょっと待って、あ、新島さん? いつもお世話になっております。堂城です……」
堂城一斗はWBSとガントチャート、TODOリストを見ながら、苦笑いを浮かべる。毎日が慌ただしく過ぎ去り、気づけば5年という歳月が流れていた。
正直に言うと『なんとかやれている』。
ただ、その『なんとか』が年々と積み重なった事で、私も今ではプロジェクトリーダーに任命されるまでになった。
しかし、私は勇者でもなければ魔法使いでもなく、華麗なスキルもクリティカルな問題を一撃で解決するアイディアも持ち合わせていない。日々、不甲斐なさだって感じている。これが私の理想のIT戦士かと言われたら、グゥの音もでない。
でも『なんとかなる』その経験が私の心の支えになっている。物事は素直に相談し、反省し、取り入れて改善することで『なんとかなる』のだ。
たまに、ふと、IT道場での日々を思い出す。
今思えば、技術を学んだというよりは、技術を学ぶ『術』を学んだように思える。どこでも最低限生きられる力を付けられた。付け焼刃ではなく、仕事に必要な考え方の部分だ。
もし、プログラミングだけを出来る気になって卒業していたら、痛い目にあっていたに違いない(笑)
……
私がIT業界の門を叩いた理由は「カッコいい」からだった。
そう思うことは今でも変わっていない。大きく変わったことは、映画のワンシーンのような必殺技が使えなくてもそう思えるということ。
なぜ、そう思えるのか
――それは、働く中で得られた感謝や笑顔だ。
仕事というのは必ず誰かの役に立っている。それを実感できたこと。きっと、私にとってのきっかけがIT業界だったに過ぎず、非常にありふれた理由でもある。
私は昔の自分と比べて、一歩でも『カッコいい』に近付けているのだろうか?
『最強』のエンジニアを目指せているだろうか?
みんなはどう思う?
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これにて物語は完結となります。
長い間、ご愛読いただきありがとうございました。
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