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宝物のような本たちとの出会いに祝福を #2022ベスト本


うまくいえないけれど、「この本は自分の人生にとって財産になりうる」という本のなかには、景色を忘れられない本と、言葉を忘れられず思考を促される本とがある。


そんな本を、私自身の言葉で抱きしめたい。

2022年最後のnoteは、今年読んだ72作品の中でも特別な8冊について。




ひとこと読書記録のバックナンバーはこちら↓






*ネタバレはありません


①「アートを巡る旅に出よう。きっと何か、変わるから。」

原田マハ『楽園のカンヴァス』Kindle版
(今、貸出中で画像用意できず、拾い画です)

私の2022年を語るのにマハさんのアート小説は欠かせません。

個人的に好きな作品は次に紹介する『風神雷神』や『たゆたえども沈まず』ですし、実はマハさんデビューは『ロマンシエ』だったのですが(エッフェル塔の表紙に惹かれました)、私がマハさんやアートの世界にハマったきっかけは間違いなく『楽園のカンヴァス』でした。


マハさんのアート小説を漢字一文字で表すとしたら「旅」です。

そしてその旅を終えると、心が軽くなっている自分がいます。

また、この本はルソー(≠社会契約論のルソー)というマイナーな画家についての物語ですが、読む手は不思議と止まらず、読了後には前から知っていたかのように感じると思います。

心に余裕がある時も、ない時も、おすすめの一冊です。



原田マハ『ロマンシエ』 (Kindle unlimited版




「きっとあなたも宗達を、好きになる。」

原田マハ
『風神雷神〈上〉』 (Kindle版
『風神雷神〈下〉』 (Kindle版


文庫本は12/8に発売されたところで、読了ほやほやの本ですが、1ページ目からすぐに大好きになりました。


中学・高校の日本史の知識がある人は聞き覚えがある、「天正遣欧使節」「俵屋宗達」がテーマとなる小説なので、より親近感を持って読み進めることができると思います。


俵屋宗達は風神雷神を描いたことで有名ですが、生没年も不明、史実上わかっていることも少ないようです。

その分、フィクション要素がいつもより多めだとは思いますが、「これが正史!史実だ!」と言いたくなる物語がここにあります。本当に魅力的な宗達がここにいます。

読了後はきっと、歴史上の謎は多き人物・宗達のことを好きになっていると思います。


ちなみに『風神雷神』を読むまで、マハさんの中で一番好きだった作品は、ゴッホの物語・『たゆたえども沈まず』でした。今はどちらが1番か、迷うくらいどちらも好きです。

原田マハ『たゆたえども沈まず』
Kindle版 ←1/5まで半額で読めちゃいます…)




③「あなたのお守り、ここにあります。」

原田マハ『独立記念日』 (Kindle版


マハさん3連投ですが、どうしてもマハさんはアート小説だけじゃないんだよ!ということをお伝えしたく、こちらを紹介します。


『独立記念日』は、24の物語が収録されている連作短編集です。

1つ1つは短いですが、前を向けるような物語が詰まっていて、必ず心に残るお守りのような言葉が見つかります。

余裕がないときに1話でも読むと、心の治療薬となってくれると思います。

中でも私のおすすめは、「缶椿」・「お宿かみわら」・「ひなたを歩こう」です。




④「ようこそ、瀬戸内のユートピアへ」

小川糸『ライオンのおやつ』 (Kindle版


「人生の最後に食べたい”おやつ”は、なんですか」

というキャッチコピーが帯にありますが、正直ずっとその言葉に納得がいかなくて。”人生最期のおやつ”がこの本のキーになっていることは確かなのですが、もっとあるだろ!!って思ってました。この本をただの食べ物小説にしてしまうのはあまりに勿体無いと思うのです。

冒頭に語った「景色を忘れられない本」は、まさにこの本のための言葉と言っても過言ではないと思うくらい。他の本を読んでも、本屋でこの本を見かけるたびに、ずっとこの本で訪れた瀬戸内の風景が忘れられませんでした。

ちなみにこの本が本屋大賞第2位に輝いた2020年の、本屋大賞第1位は凪良ゆうさんの『流浪の月』でした。こちらも大好きな本です。(個人的に伝説級の激戦の年だったなと思ってます。)





⑤「この愛は、現実ノンフィクション。」

凪良ゆう『汝、星のごとく』 (Kindle版 / Audible版


(あえて、読了直後に書いた感想をそのまま引用します。)


暁海たちの愛は一見「愛ではない」「いけないもの」「ニセモノ」だと、非難したくなる。だけど、この本を読み終えた時には、そんなこと言えなくなっていると思います。そして、最初の非難が暁海たちを生きづらくしている原因だと気づいて、何も言えなくなる。

実際に全く同じ状況の経験があるとかないとか関係なく、凪良ゆうさんの小説はとにかくリアル。価値観を根底から揺さぶって、「あなたの価値観はどこにある?」と問いかけてくる。


小説全体に広がるどこか薄暗いフィルターのような空気感と、それを吹き飛ばす物語の中の瀬戸内の夜空が本当に美しい作品です。





⑥「あなたがはじめに見た堀北雄介と南水智也はホンモノですか?」

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』 (Kindle版


この本はこれまで紹介した本とは違って、物語のなかにあるメッセージ性や言葉に考えさせられる作品(言葉を忘れられず、思考が促される本)だなと思います。(タイトルから秀逸ですよね)


読んで、肌で感じて、考えてほしいので、これ以上なにか言うのもな…と思うのですが。


機械的に仕事をこなすことは、高度にマニュアル化された業務に対する最適な向き合い方かもしれないし、一歩引いたところから人間関係を眺めることは、争いを回避し、無用な感情をかき立てないためのスマートな態度かもしれない。他者に期待しすぎないことはクールさの表れとも言えるし、「何者かにならねば」や「俺はまだ終わってない」といった焦りは、個々人に特性や成果を求める社会の副産物とも言える。

清田隆之さんの解説より

上記のような問題提起がされているのがこの小説です。

最初と最後で世界の見方が変わる一冊です。




⑦「傲慢は悪ですか? 善良は良ですか?」

辻村深月『傲慢と善良』 (Kindle版



こちらの作品については、以前長文の感想文を書いたので詳しくは上記を見てください。(すみません)

ですが、読了後2ヶ月経っても「また読まねば」と思わされる作品です。

こちらも「言葉を忘れられず、思考が促される本」です。




⑧「その"いつか"のために、読んでおきたい本がある。」

益田ミリ『永遠のおでかけ』


大切な人との別れを一緒になぞりながらじんわり癒してくれるようなエッセイ。しんみりしたい時に何度でも読み返したい一冊。


と2ヶ月前の私は書いています。今も変わらずそのままの印象です。


今年はエッセイもたくさん読んできた年でした。
エッセイは笑わせてくれるものから、著者の考え方が心の支えになるものまで様々ですが、ミリさんのこのエッセイは小説のようでありながら、静かに心を癒してくれる、美しいものでした。


祖父母と過ごした3日間。彼らは今も元気ですが、きっと今後忘れられず、走馬灯で流れるワンシーンになるであろう3日間。その余韻に寂しくなったときに読んで、心をあたたかくしてくれた作品です。




番外編・載せきれなかったおすすめたち(タイトルのみのご紹介)

吉本ばなな『キッチン』
青山美智子『赤と青のエスキース』
宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』
江國香織『落下する夕方』『神様のボート』『旅ドロップ』
若林正恭『ナナメの夕暮れ』
原田マハ『ジヴェルニーの食卓』『あなたは誰かの大切な人』『常設展示室』






本当はもっともっと紹介したい作品がありますが、このあたりで。


2022年も、私のnoteをお読みいただきありがとうございました!

今年は原田マハさんについて書いた記事に多くのスキがつき、想像を超える多くのnoterさんたちに読んでいただけた年で、改めて私にとって本が、言葉が、何かを表現することが、noteが、大切なものとなるきっかけとなりました。



最後に、私がここ数ヶ月愛用している読書アプリを紹介したいと思います。


ブクログ


読んだ本、読みたい本を追加すると、本棚風に並べてくれます。
追加した本に応じておすすめが出てきたり、新刊情報を見ることができたり、読書のお供に最高なアプリです。

読んだことある作品に気づくたびに追加しているので、こっちの読書記録(月間読書量)は信用しないでください(笑)

もしブクログ始めた方、やっていらっしゃる方いたらぜひ、そちらでも繋がりましょう〜!


2022年も残り6時間半。
やることたくさんあって気が狂いそうですが全部無視して、私はNHKラジオ第1を聴きながら紅白を待ち、紅白を見て、ゆく年くる年を見ます。


それではみなさん、良いお年を!
















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