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どこまで登っている?住民参加のはしご

まちづくりに関わる皆さんに絶対知っていてほしい!
「1つのスケール」を紹介します。

行政職員も市民も企業も団体も公的機関も、参加・参画・協働・共創といったことに関心のある方はぜひ押さえておくと便利です!


(行政職員向け)こんな経験ありませんか?

私は公務員時代に市役所にて3つの課を経験しました。そのどこでも同じ経験(↓のイメージご参照)をしました。
「まちの主役である市民と共に」と思い、市民の参加・参画・協働を進めようとしたときの担当者と管理職のイメージです。あくまでイメージです。

ある程度までの住民参加は、およそ全公務員が必要と認識しています。

また、ある程度までの住民参加となると、行政が住民の意見を参考としつつも最終的には行政が意思決定できるため、場合に応じて必要と考えます。

そして、ある程度の住民参加を超えると「コントロールが効かなくなる」「行政が意思決定できなくなる」という恐れがあるため、とたんにネガティブにディフェンシブになってしまいます。

その「ある程度」を表現したのが「住民参加のはしご」です。

住民参加のはしご

別名Arnstein’s ladder: Eight levels of citizen participation in government decision making

考案者について

シェリー・アーンスタイン Sherry Phyllis Arnstein (1930–1997)
アメリカの保健福祉省の秘書補佐の特別補佐として働いて、参加型意思決定の分野で活躍された女性です。
※検索したものの写真は見つかりませんでした。

アーンスタインは「住民の参加とは、住民に対して目標を達成できる権力を与えること」と定義して、どの位置にいるかを確認しながら最終的な目標である市民管理を目指して一歩一歩進んでいくことが必要であるとし、そのステップを次のように示しました。

アーンスタイン氏は、この8段階についてこう言っています。
1~2段階は、市民参加とは言わない。
3~5段階は、印としての市民参加。
6~8段階で、はじめて市民の力が生かされる市民参加だと。
6段階目で、住民が意思決定に際して初めて「決定権を共有した状態」となります。そこからが本当の意味での市民参加だとしているのです。

1969年の行政と住民の関係性を示したスケールですが、まちづくりの講演会などでしばしば引用されています。今現在も使われているなんて驚きですね。

しかし、少し分かりづらさもあろうかと思います。

現代版「住民参加のはしご」

そこで紹介したいのが、株式会社エンパブリックの広石拓司代表取締役による現代版です。

現代の具体例を示しているのでイメージがしやすいスケールとなっています。

住民参加のはしごが、より身近なものとして理解しやすくなったことと思います。
皆さんに問いかけたいのですが、何段目に大きなハードルがあると思いますか?

5から6段目で関係性は大きく変化する!

「住民参加のはしご」をはじめ、まちづくりに役立つ知識がたくさん書かれている本を紹介します。

段階5から6へと登る時に、関係に大きな変化が起きる。行政・専門職中心から、行政・専門職と住民が計画づくりや施策の実行を共有し、パートナーとして進める「創発的協働」のステージに入るからだ。

『専門家主導から住民主体へ』P40

大切なのは、段階7、8と住民に”任せる”ことが増えることは、住民に”丸投げ”することを意味していないということだ。
行政・専門職は、自分が全てを行うか、手放すかの二択に陥りがちだが、住民は専門知識や俯瞰的な視点が不足しがちなど、より良い決定をする上でよわみがある。
住民の強みと限界、行政・専門職の強みと限界が組み合わさり、より良い決定や活動が生まれる、つまり「創発的な協働」を生み出すことが最も大切だ。

『専門家主導から住民主体へ』P41~42

皆さんのまちでは、「住民参加のはしご」をどこまで登っていますか?

創発的な協働の難しさ

私は、これまでにたくさんの6~8段目の創発的協働を実践してきました。私の最も得意とすることです。その結果、市民がまちづくりにどこまで関わるのかを体験を持って理解することができ、担当の職員が変わっても揺るがないレガシーとしてしっかり定着しています。

しかし、不得意とする行政職員の方が圧倒的に多いというのも事実です。住民は当然「住民参加のはしご」なんて知らないので、パブコメや意見聴取のワークショップで満足している現状もあろうかと思います。

ぜひ、「住民参加のはしご」をはじめ、創発的な協働を目指していきたい方におかれましては、上記に載せた『専門家主導から住民主体へ』の本をお読みいただいたり、私まで講演・講座・ワークショップ・原稿執筆等のご依頼をいただければ幸いです。

また、「行政と住民」という関係性でお伝えしてきましたが、「企業と社会」「大学と地域」などと主体を変えて、関係性を理解するときの参考にもなるはずです。

実際に、ニューヨーク市立大学のロジャ ー・ハート教授が、「住民参加のはしご」を参考に「参画のはしご」を提唱しました(1992年)。
子どもの参画を8段階に分けたものです。
最初の3段が 「参画とは呼びがたいもの」。4段目以降を「本物の参画」と定義づけしています。

これをヒントに、あなたの属する組織とパートナーになり得る主体との関係性について、共通のスケールを持ってみてはいかがでしょうか?
「住民参加のはしご」は、行政職員のためだけのものではありません。行政と市民の「共通のスケール」なのです。


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