「見えない恐怖」

終電近く。僕は一人、駅に向かっていた。かなり仕事が長引いてしまった。

本当に忙しかった。途中まで終わりが見えなかったが、なんとか終わった。

 深い闇の中、近くの田んぼからカエルの鳴き声が聞こえる。それに色をつけるように鳴く鈴虫。最近,夜になるとずっとこうだ。

 子供の頃は闇夜が怖くて仕方がなかったが、今は楽しみが勝っている。

 そんな事を思っていたが、近くの立てかけ看板をみて考えが変わった。

「マムシ出るのか」
 僕は冷たい汗が流れるのを感じた。闇夜。

 もしかしたら今、足元にいてもおかしくないのだ。

 しかし、早く進まなければ僕は終電に乗れない。急げ。乗り越えろ。恐怖を。そう自分に言い聞かせて続けてようやく駅に着いた。

  あと少しで一日が終わる。改札を抜けたタイミングで終電がやってきた。ようやく闇夜を抜けられた気がした。

 
 
 

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