「定めなら」

 穏やかな朝。僕は洗面台の前で、絶望した。ハゲていたのだ。髪が薄くなっていたのだ。僕はしゃがみ込んだ。いつかは来ると思っていた。じいちゃん。親父。二代に渡ってハゲた。でもこんなに早く来るとは思わなかった。
 
 なんでハゲんだよ。抜けるなら生えるなよ。なるべくポジティブな考えをしようとハゲのメリットを考えた。まずは清潔感がある。あと金がかからない。シャンプー代も整髪剤の代金もかからない。

 あと強いていうなら男らしさを感じる。これに筋肉が付随すればジェントルマンの仲間入りだ。さあ、ネガティブになってないで前を向こう。

 僕はゆっくり立ち上がった。鏡に映る自分を見て、またしゃがんだ。

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