「ホラーの魅力」

 上映が開始した時、辺りの空気が一気に張り詰めた。ただ静かな空気とは違う。危険さを伴った張り詰めた空気だ。ホラー映画は凄い。始まった瞬間、館内をお化け屋敷に変えてしまうのだ。

 館内の各席から聞こえてくる蚊ほどの悲鳴と小さな挙動。映画ではなく、時折、目に入る観客の動作もまた面白い。

「ぎゃああああ!」

「わっ!」
 スクリーンの叫び声に驚いて思わず、声を出した。観客数人の視線が僕に向けられた。俯瞰していた側が今度は逆に見られた。恥ずかしさを感じながら、映画を見終わった。

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