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研究者間の距離と破壊的イノベーション度


📖 文献情報 と 抄録和訳

画期的なアイデアを生み出す遠隔コラボレーション

📕Lin, Yiling, Carl Benedikt Frey, and Lingfei Wu. "Remote collaboration fuses fewer breakthrough ideas." Nature 623.7989 (2023): 987-991. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06767-1
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[背景・目的] イノベーションの理論では、画期的な発見を促進するものとして、社会的ネットワークやチームの役割が強調されている。世界中で、科学者や発明家は今日、かつてないほど豊富に存在し、相互につながっている。しかし、発見をする人は増え、新しい方法で再構成できるアイデアも増えているにもかかわらず、新しいアイデアを見つけることは難しくなっていることが調査から示唆されており、組み換え成長理論と矛盾している。ここでは、この明らかなパズルに光を当てる。過去半世紀にわたる世界中の2,000万件の研究論文と400万件の特許出願を分析し、まず都市を超えた遠隔地での共同研究の増加を記録することで、科学者と発明家が世界的に相互関係を強めていることを明らかにする

[方法-結果]
■この60年間の論文や特許(発明)における共著者間の距離
・1960年の100kmから、2020年には1000km近くに達していた。
・芸術や人文科学の論文ではさらに距離が伸びている。

■ 破壊的イノベーション度を測るD score
・科学論文やパテントがそれまでの考えを変えるほどの破壊的イノベーションだったかを測る Disruptive score(D score) を用いて評価
・Dスコアの例:これまで最もスコアの高い論文がワトソンとクリックの有名な Nature 論文で、0.96(満点は1)、逆に低い例がヒトゲノム解読でー0.017になる。
・共著者間の距離が離れているほど Dスコアが低く、さらにタイムゾーンが異なるほどその傾向が強くなる。

■ 距離が離れるほどイノベーションが起こりにくい理由
・距離の離れたもの同士の研究で破壊的イノベーションが生まれにくい原因を探す目的で、研究の着想など概念形成と、実際の実験過程などに分けて共同研究のあり方を調べると、概念形成は距離が離れるほど共同では行われていないことがわかった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

近年のリモート技術の発達によって、距離を超えたコミュニケーションはとても容易になった。
だが、今回の研究は、その弊害の1つを示すものになるかもしれない。
距離を超えすぎた研究や発明は、破壊的イノベーションにはなりにくいらしい。

単純に、その現象が面白いのだが、理由が気になる。
この論文中で示されているところとして、距離が離れると概念形成(アイデア創出)の作業が共同で行われにくくなることがあるかもしれない。
近くにいれば、たくさん話し合うことが容易で、気兼ねなくできる、ということだろうか。
ここら辺の原因をしっかり突きつめ、リモートでの共同研究方法に反映させれば、遠隔でも破壊的イノベーションを起こすことが可能となるだろうか。
まず、そういう傾向があることを心に留めておきたい。

地を離れて人なく、人を離れて事なし
故に人事を論ぜんと欲せば、先ず地理を見よ

吉田松陰

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