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“若い” は最強。キャリア初期の論文が最も革新性が高い

📖 文献情報 と 抄録和訳

出版するか滅びるか キャリアを通じたイノベーションのパターンに対する統一的な説明としての選択的消耗

📕Yu, Huifeng, et al. "Publish or perish: Selective attrition as a unifying explanation for patterns in innovation over the career." Journal of Human Resources (2022): 1219-10630R1. https://doi.org/10.3368/jhr.59.2.1219-10630R1
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※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 書籍『「天才組織」をつくる』を執筆した経営学者ウォーレン・ベニスは、人類史上に残る優秀な組織の多くにみられる共通点を指摘している。そうした共通点の一つが、年齢だ。ベニスによると、Disney(ディズニー)が大きな成功を収め始めた1930年代には、同社社員の多くが20代で、中央値は26歳だった。ビル・クリントン元米大統領の選挙対策チームや、黎明期のApple(アップル)なども同じような傾向だった。ベニスが分析した組織の大部分では、35歳はもはや若くないと考えられていた。少なくとも科学の分野に関しては若さが明確な長所のようだ。本研究では、科学論文における年齢と独創性を調査している(※この文章の引用元→🌍 参考サイト >>> site.)。

[方法] 研究チームは、1980~2009年に発表された約560万件の生物医学系論文を対象に、著者の情報や、他の研究者から引用された回数を分析。この回数が多いほど、論文の革新性が高いとみなした。

[結果] 科学者はキャリアの早い段階で最大の成果を残していたことが示された。キャリアの初期に学術界から姿を消す人は多かったものの、この時期を乗り越えた人は研究を20~30年にわたり継続する傾向にあった。

研究者が年を重ねると、革新的な研究結果を出す頻度は大きく低下。データからは、キャリアの後半になると論文の引用頻度が最大3分の2に減ることが示された。

研究の影響力を測る指標としては、論文の被引用数以外にも、最新のアイデアが採用されたかどうか、複数の学問分野にまたがった研究を行ったかどうかなど、さまざまな基準で分析が行われた。この分析結果からも、研究者の革新性は年数が経つにつれ低下することが示された。さらに、キャリア初期でピークを迎える傾向は、大きな成功を収めた科学者の間で顕著だった。

[結論] これらの結果は、キャリアを通じた人的資本の蓄積に関するより広い問題や、早期キャリアを持つ研究者に資金をシフトする連邦研究政策に示唆を与えている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

研究において、常識をわきまえる作法の習得と、その研究の持つ革新性(威力)は、まったくの別のものであって、良い研究とは多分、その両者を包含するものだ。
作法とは、学術体系が研究に求める『形』のこと。
それは、同じ良い形でも、小さいものもあれば、大きいものもある。
創造性とは、これまでの学術体系の最前線から、『はみ出した面積』のこと。
それは若ければ若いほど、作法をわきまえないほど尖り、遥か彼方までいってしまいやすい。
でも、だからこそ強い、濃い、威力がある。

作法と革新性。
この両者は、まったく持って、別次元の工程だ。
それは、漁師の仕事と、寿司屋の仕事ほどに。

ベテランであればあるほど、革新性を意識しなければ、それはただ小綺麗なものであって、取るにたらない、淘汰される研究になるだろう。
若手が世界に打撃をあたえたいのならば、作法を習得しなければならない。
でなければ、舞台にも立てない、晒されもしない、生まれる前に終わる(perish)。

今回の研究結果には、強く頷けた。
なぜなら、まさに自分がその1人だから。
2018年に、はじめての原著論文を出した。

📕Kaizu, Yoichi, Hideomi Watanabe, and Takehiko Yamaji. "Correlation of upper limb joint load with simultaneous throwing mechanics including acceleration parameters in amateur baseball pitchers." Journal of Physical Therapy Science 30.2 (2018): 223-230. https://doi.org/10.1589/jpts.30.223

ひいき目にも、優れた論文とはいえないかもしれない。
だが、その論文は僕の著論文の中で、突出して被引用(AJSMからも引用)が多く、ResearchGateでは2000以上のViewがあり、メジャーリーグのコーチからメールで連絡をもらう。
あの頃の僕。
今回のスライドにも示したように、「私のアイデアは世界を変える。ただ、それだけだ。」、内心ではそう思っていた。
あれから、5年経った。
ぼくは、あの頃の、無茶で、常識がなくて、ただ熱量だけがあった、お前を尊敬している。
そして、それと同じくらいの熱量で、負けたくはないと思っている。
僕の最高傑作は、次回作である。

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