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現存のEBMは、氷山の一角である

📖 文献情報 と 抄録和訳

次世代のエビデンスベースドメディスン

📕Subbiah, Vivek. "The next generation of evidence-based medicine." Nature Medicine (2023): 1-10. https://doi.org/10.1038/s41591-022-02160-z
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[レビュー概要] 近年、ウェアラブル技術、データサイエンス、機械学習の進歩により、エビデンスに基づく医療が変革されつつあり、次世代の「深い」医療の未来を垣間見ることができるようになった。基礎科学や技術の目覚ましい進歩にもかかわらず、医学の主要分野における臨床応用は遅れている。COVID-19のパンデミックは、臨床試験環境に内在するシステム上の限界を露呈したが、新しい試験デザインや、より患者中心で直感的なエビデンス生成システムへのシフトなど、いくつかの前向きな変化にも拍車をかけた。この展望では、臨床試験とエビデンスに基づく医療の未来について、著者の経験則と最新のエビデンスに基づいたビジョンが述べられている。

✅ 現存のEBMの水面下にある課題
・現在のEBM(Evidence-Based Medicine)ピラミッドは氷山の一角であり、一般的な患者をケアするのに十分な浅いエビデンスを提供するのがやっとである。
・したがって、次世代の深いエビデンスに基づいた医療を実現するためには、利用可能なすべてのデータの深い統合と融合が必要である。
・今後20年間の主な課題は、大規模な自然史データ、ゲノミクス、オミックス解析、すべての発表済み臨床研究、RWD、IoMTの蓄積データを抽出、照合、マイニングし、次世代の深い医療に必要なエビデンスを提供することであろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

どこかで読んだのだが、司馬遼太郎と歴史の関係について、以下のように語られていた。
歴史があって、司馬遼太郎が描くのではなく、司馬遼太郎が描いたことが歴史になる。
さらに、歴史家・静岡文化芸術大学教授の磯田道史氏は、作家・司馬遼太郎を「歴史をつくる歴史叙述家」であると評する。
イメージとしては、歴史とは、すでにそこにあるものではなく、人が光を当てた、人が削り出した部分だけが歴史となる、という感じ。
だが、これは歴史だけではなく、現実世界のすべてに当てはまることだろうと思う。

現実世界の中で、我々が知っていること、知りうることは、全宇宙にほんのわずかに瞬く恒星達のように儚い。
そして、深く暗い未知の闇には目もくれず、人々が光を当ててきた現実だけが、『現実のすべて』だと思い込んでいる。
これが、EBMの大きな限界の1つだと思っている。
『スポットライトバイアス』、と呼びたい。
EBMは人が光を当てた部分だけでつくってきたもので、その手づくりの事実だけがすべてだと思い込んでしまうことは、実に危険だ。
なぜなら、それは「まだ事実に基づかない理論の軽視」を同時的に含んでいるから。

Pre-underlyingな理論は軽視されやすくなる 。
たとえば、気や魔法の存在は明らかになっていないだけで、あるかもしれない。
いまあるエビデンスは、研究者のエゴにより選り好みされ、明らかにされた偏った事実の集積だ。
光が当たっていない部分にも、もちろん現実はあり、真実はあり、原石はある。
さらに、技術進歩だって、秒刻みに進んでいて、知りうる現実の領域を広げ続けているんだ。
僕たちが生きているこの現実が、ほんの一部分であることを、胸に刻んでから進みたい。

私たちがこうして目にしている光景というのは、世界のほんの一部にすぎないんだってね。
私たちは習慣的にこれが世界だと思っているわけだけど、本当はそうじゃないの。
本当の世界はもっと暗くて深いところにあるし、その大半がクラゲみたいなもので占められているのよ。
私たちはそれを忘れてしまっているだけなのよ。そう思わない? 
地球の表面の三分の二は海だし、私たちが肉眼で見ることのできるのは海面と言うただの皮膚にすぎないのよ。その皮膚の下に本当にどんなものがあるのか、私たちはほとんど何も知らない。

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」より

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