見出し画像

遺伝子検査から、スポーツの才能を測る

📖 文献情報 と 抄録和訳

遺伝学とスポーツパフォーマンス:DNA検査に基づくスポーツの才能発掘の現状と未来

📕Varillas-Delgado, David, et al. "Genetics and sports performance: the present and future in the identification of talent for sports based on DNA testing." European Journal of Applied Physiology (2022): 1-20. https://doi.org/10.1007/s00421-022-04945-z
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 本研究の目的は、持久系およびパワー系の運動パフォーマンスに対する遺伝学の影響に関するエビデンスを包括的にレビューし、スポーツの才能の検出、トレーニングの強化、あるいは運動関連の傷害の予防に対する遺伝子型の潜在的有用性を明確に判断し、以前の調査で見つかった方法論的問題を修正しようとする最近の研究の概要を示すことであった。

[レビュー概要]
■ エリートアスリートを特定するための遺伝子型が明らかになりつつある
・遺伝子が生理学やスポーツパフォーマンスに与える影響は、スポーツ科学において最も議論されている研究側面の一つである。
・200 近い遺伝子多型がスポーツのパフォーマンス特性に影響を与えることが判明しており、20 以上の多型がエリートアスリートの状態を条件付ける可能性がある。

スライド2

✅ 図. DNA検査に基づくスポーツの才能を特定するための、パワーと持久力の遺伝的な違いの模式図。遺伝学の知識は遺伝子ドーピングを容易にする。分子生物学技術の急速な進歩を利用し、このドーピング様式を検出する方法を将来的に開発する。ACE アンギオテンシン変換酵素、ACTN3 α-アクチニン3、AMPD1 アデノシン一リン酸デアミナーゼ1、CK-MM クレアチンキナーゼイソ酵素MM、CYP2D6 チトクロームP450ファミリー2サブファミリーDメンバー6、HFE 恒温鉄レギュレータ6。IGF1 insulin-like growth factor 1、IL6 interleukin 6、NOS3 endothelial nitric oxide synthase 3、PPARγ Peroxisome proliferator-activated receptor gamma、UCP2 uncoupling protein 2、VEGFA vascular endothelial growth factor A

■ 現在の才能特定に遺伝子型を用いることの限界→近年の発展
・しかし、現在のところ、運動やスポーツのパフォーマンスを予測したり、現在のトレーニング方法を改善したりするためのツールとして遺伝子型を利用する方法を決定するには時期尚早であることは確かである。
・このテーマの研究では、有効な運動パフォーマンスの表現型が測定されていないなど、方法論的な限界があり、研究結果の解釈を困難にしている。さらに、多くの研究では、アスリートのコホートが不十分であったり、エリートとして分類されるかどうか疑わしいため、期待効果をもたらす可能性がある。
・研究において徐々に多くの多型が評価され、total genotype score(TGS)やゲノムワイド関連研究(GWAS)などの新しい解析ツールが導入されたことにより、解析力が大幅に向上し、単一バリアントの研究からパフォーマンスに関連する経路やシステムの決定に変わってきている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

親が超優秀だった競走馬の子どもは「サラブレッド」と呼ばれる。
その価格は数億円にものぼるらしい。
それほどに『遺伝的要因』(先天的要因)はパフォーマンスに多大な影響を及ぼす。
今回のナラティブレビューは、人間におけるサラブレッドを特定する方法が開拓されつつあることを教えてくれている。
遺伝子型を用いた分析によって、適するスポーツタイプ、そしてエリート度合いが把握できるかもしれないのだ。
考えたいことは、「それって、いいことですか?」ということ。

①プレイヤーにとって、②指導者にとって、という2つの次元から考察してみる。

①プレイヤーにとって
■ エリート認定された選手

メリット
・自信が持てる
・エリート意識が持てる
デメリット
・余裕を持ちすぎる
・努力しない
■非エリート認定された選手
メリット
・始める前に適性を知りスポーツを選択できる
デメリット
・先天的要因だけで不適応と判断してしまう
・自分に自信が持てない

スライド3

②指導者にとって
メリット
・ピグマリオン効果:エリート認定された選手に期待をかけることで、その選手はその期待に応えるようにより成績が向上する
デメリット
・ゴーレム効果:非エリート認定された選手に負の期待をかけることで、その選手はさらに成績が低下する

スライド4

すごい技術だとは思う。
だが、リスクがあることも事実だ。
この技術は「良いものはより良く、良くないものは置き去りに」する可能性がある。
つまり、二極化が進む可能性。
かつて、『優生学』という学問があった。
優生学とは,「人類の遺伝的素質を改善することを目的とし,悪質の遺伝的形質を淘汰し,優良なものを保存することを研究する学問」である(『広辞苑 第6版』岩波書店,2008)。
この考えは大変危険で、ナチスにより命の選別にも使われた(🌍 参考サイト >>> wiki.)。
なんか、ちょっと近づいてない?、と思ったのだが気のせいだろうか。
結局のところ、用いられ方や解釈のされ方が重要なのだろうと思う。
そして、その舵はいつだって僕たち自身が握っている。
気をつけようと思った。

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○

#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,262件