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楽観主義者が、よく生きる仕組み

📖 文献情報 と 抄録和訳

楽観主義とポジティブな健康アウトカム

📕Cobert, Julien, and Aoife O'Donovan. "Dispositional optimism and positive health outcomes: Moving from epidemiology to behavioral interventions." Journal of the American Geriatrics Society 70.10 (2022): 2754-2757. https://doi.org/10.1111/jgs.17958
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[レビュー概要]

■ Kogaらによる無作為化臨床試験と観察研究からのデータを組み合わせた二次解析
Women's Health Initiative(WHI)のデータを用いて、無作為化臨床試験と観察研究からのデータを組み合わせた二次解析を行った研究
(1)異なる人種・民族集団において、より高い楽観主義がより長い寿命と関連しているか
・楽観主義と関連する長寿の利益は、異なる人種および民族グループ間で実質的に異ならないことを示した
・楽観主義が高いほど、人種および民族のサブグループ全体で寿命が1.5~7.6%長くなることと関連していた
(2)これらの関連は様々なライフスタイル因子によって媒介されているか
・媒介分析の結果、ライフスタイル要因が暴露-結果相互作用に役割を果たしているようで、全標本における楽観主義-寿命の関連性の24%を媒介した

📕Koga, Hayami K., et al. "Optimism, lifestyle, and longevity in a racially diverse cohort of women." Journal of the American Geriatrics Society 70.10 (2022): 2793-2804.  >>> doi.

■ 楽観主義 / 悲観主義と健康アウトカムの関連図

✅ 図. 楽観主義/悲観主義と健康アウトカムとの関係に関する理論モデル
楽観主義・悲観主義に寄与するリスクおよび保護因子:健康状態、基礎となる生物学的因子、社会人口統計学的特性が含まれる。
健康状態:高血圧や高脂血症などの心血管疾患、うつ病、2型糖尿病などの代謝性症候群がある。
生物学的要因:遺伝的・遺伝子の違い、テロメアの長さ、エピジェネティックな変化、抗酸化レベル、脂質プロファイル、炎症マーカー、神経生理学的・神経解剖学的変化、自律神経機能、視床下部-下垂体-副腎軸が挙げられる。
社会人口学的因子:生物学的性別、配偶者の有無、教育、雇用形態、所得、親の伝授と指導、幼少期の社会経済的地位が含まれる。
健康および心理社会的行動:楽観主義および悲観主義と相互作用し、健康促進因子(例:服薬遵守、身体活動、食事)、有害行動(例:物質使用)の回避、社会的支援、自信と主体性、積極的およびアプローチ指向の対処を含む。
・これらはすべて、個人がストレス因子からいかに立ち直るか(すなわち、レジリエンス)に寄与し、健康上のプラスおよびマイナスの結果をもたらす可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、「楽観主義者はよく生きる」という、楽観主義と寿命の関連性を明らかにした研究の抄読を行った。

今回のナラティブレビューは、その仕組みに迫った論文である。
明快な関連図で示されると、その仕組みがよく理解されたように思う。

ところで、そもそもの話なのだが『楽観主義』とは、何だろう。
(以下は、かなり主観的な話、思いが先行する話になるので注意)
極端な2つの例をあげてみる。

■ 戦時中のネコ
どこの、何の話かは忘れたが・・・。
戦争中の話で、それはそれは凄惨な戦争だった。
だが、その戦時中の中でも、ネコは普通に生活していた。
そんな話。
このネコのように、気づかない、気にしない、ということが楽観主義なのだろうか。

■ 無誤学習
「無誤学習」とは,介入初期に誤反応が出ないようにヒントや介助を十分に与え,行動が安定して遂行されるようになったら,徐々にヒントを少なくしていくことで,それらがなくても行動がスムーズに,自発的に進むようにもっていくための学習促進方法。
間違いを多くさせずに行動を修得させること。
このように、成功にフォーカスして、失敗は減らす、重視しないことが楽観主義なのだろうか。

この仕事をやっていると、心より尊敬できる患者さんがいる。
そんな患者さんたちの共通点は、『何からでも学ぶ』、『今から生長しようとしている』である。
そして、その方たちは、決してゼロよりプラスの現実からだけ、学んだり生長したりしているわけではない。
むしろ、一見マイナス(失敗)に見える現実からこそ、多くを学び、生長しているように見える。
ぼくは、楽観主義の真の姿は、『完全に生長にベット(bet, 賭ける)している』だと思っている。
その心境は、以下の言葉に凝縮されている。

なにが起こってきても、
それは自分を生長させるに過ぎないと思った

武者小路実篤

どんな現実がきてもいい。
その現実が、成功だろうが、失敗だろうが、漏れなく『生長』するから。
その見地に立てれば。全てがプラスになる、いやプラスにする、というスタンス。
自分の意志で行動で力で。
そして、その舵なら100%自分の制御下。
だから、楽観主義のフィールドから、未来永劫、離れることはない。
そういう心の仕組み。

その成功も、失敗も、1つ生長をなすことに収束する。
空と海が、一本の地平線をなすように。
人生に、無誤学習は存在しない。
楽観主義というものは、成功だけをみて、失敗は無視する冷淡なものではないと思う。
その失敗を、なんらかの生長に転じていく柔術的なものだ。
運命ではなく、技術であり、知識と修錬がいるものだ。
「かわいいはつくれる✨」ならぬ、
「楽観主義はつくれる✨」と信じている。

悲観主義は気分によるものであり、
楽観主義は意志によるものである
アラン

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