生活空間の評価、GPSで良くない?
📖 文献情報 と 抄録和訳
GPS技術を使って高齢者のコミュニティ移動を調べる
[背景・目的] 地域社会の移動を客観的に測定することは、家庭外での移動を把握するのに有利である。主観的な自己報告手法と比較して、全地球測位システム(global positioning system, GPS)技術は、受動的でリアルタイムの位置データを活用することで、想起バイアスを減らし、測定精度を高めることができる。我々は、地域居住高齢者の地域移動度を定量化する方法を開発し、GPSから得られた指標が身体的および認知的パフォーマンスの臨床的測定値とどのように関連するかを評価した。
[方法] 歩行能力を改善するための理学療法介入であるprogram to improve mobility in aging(PRIMA)研究の参加者(n=149;M±標準偏差[SD]=77.1±6.5歳)は、GPS装置を7日間携帯した。コミュニティモビリティは、活動空間と形状、活動距離、活動時間の評価により特徴づけられた。GPSから得られた指標と認知および身体機能との関連は、スピアマン相関を用いて評価した。
[結果]
■ 活動空間と6分間歩行距離との関連
・調整モデルでは、活動空間が広いこと、活動時間(例:外出時間)が長いこと、自宅からの移動距離が長いことは、6分間歩行テストの成績が良いことと相関していた(ρ = 0.17-0.23、p's < 0.05)。
■ 活動空間とTMTとの関連
・より円形の活動形状は、トレイル・メイキング・テスト、パートAの成績不良と関連していた(ρ = 0.18、p < 0.05)。
・外出時間が長いほど、また活動空間が広いほど、トレイル・メイキング・テストBパートのタイムが速いことと相関していた(ρ = -0.18~-0.24、p's < 0.05)。
地域移動の測定値は、全体的認知、熟練歩行、通常の歩行速度とは関連していなかった。
[結論] GPS由来のコミュニティモビリティ指標は、高齢者の実世界での活動を捉えており、実行機能および歩行持久力の臨床的測定値と相関していた。これらの知見は、コミュニティモビリティを促進するための今後の介入設計の指針となるであろう。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
生活空間の評価といえば?
そう聞かれたら、多くの人がLife Space Assessment (LSA)と答えるだろう。
しかし、LSAには思い出しバイアス(≒想起バイアス, recall bias)があると思う。
このバイアスは、研究参加者に対して過去の出来事や経験を想起させて得られた回想の正確性や完全性の違いから生じる系統的な誤差のことだ。
さらに、高齢になるほどこのバイアスの弊害は大きくなることが予測される。
そのため、LSAの信頼性は常に懸念されるところとなるだろう。
だったら!
GPSでいいんじゃない?、そう思ってはいた。
GPSで活動範囲や活動距離、またその時間を算出していれば、漏れがない。
そして、そこに主観や想起といったバイアスが挟まれる心配も少ない。
いいこと尽くめではないか。
あとは、個人情報やら倫理上の問題となろう。
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