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歩行で1km,自転車で2km。その許容距離が人生を分けるかも

📖 文献情報 と 抄録和訳

日本人高齢者における歩行・自転車走行可能距離と機能障害および死亡率。8年間の追跡調査

📕Tsunoda, Kenji, et al. "Acceptable walking and cycling distances and functional disability and mortality in older Japanese adults: An 8-year follow-up study." Health & Place 79 (2023): 102952. https://doi.org/10.1016/j.healthplace.2022.102952
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✅ 前提知識:許容距離とは?
・歩⾏や⾃転⾞で移動しようと思える距離

🔑 Key points
🔹笠間市でのインベントリー調査に基づく8年間のフォローアップ調査。
🔹要介護化と死亡率のデータは、市のデータベースを介して追跡調査された。
🔹許容歩行距離≦500mは両イベントのリスクを上昇させた。
🔹自転車走行距離が1km以下であることも両イベントに関連していた。

[背景・目的] 日本の高齢者における許容距離と要介護化の発生率および死亡率との関連をプロスペクティブに調査した。

[方法] 2013年に笠間市の65歳以上の7618人を対象にベースライン調査を実施し、2021年まで市のデータベースで追跡した。許容移動距離は質問票を用いて評価した。アウトカム(すなわち、要介護化と死亡)は、生存時間とのバイナリ(incident or not)として収集された。

[結果]
■ 要介護化リスク
・歩⾏の許容距離: 500 m 以内の⼈は、1 km より⻑距離の許容者に⽐べて要介護化リスクが⾼いことが分かった。
・自転⾞の許容距離:1 km 以内の⼈は、2 km より⻑距離の許容者に⽐べて要介護化リスクが⾼くなっていた。

■ 死亡リスク
・歩⾏の許容距離:300 m 以内でリスクが高まった。
・⾃転⾞の許容距離: 1 km 以内の場合に、リスクが⾼まった。
・⼀⽅、歩⾏で 1 km 以内または⾃転⾞で 2 km 以内の移動の許容者では、より⻑距離の許容者と⽐べても、統計的な要介護化および死亡リスクの増加は⾒られなかった。

[結論] ⾼齢者において歩⾏や⾃転⾞移動の許容距離が短いことは、要介護化および死亡のリスクであり、歩⾏で 1 km、⾃転⾞で 2 km の移動を許容できることが、リスクを上げない⽬安となることが分かった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

イメージできるってことは設計図が書けるってことだ
設計図が書けるっってことは実現できるってことだ
竹原ピストル

人間が想像しうるものは、必ず実現される
ジュール・ヴェルヌ

人間にとって、イメージできることや、自信を持てることは大切だ。
それらのことは、リハビリテーションの領域では『自己効力感』と呼ばれたりする。
提案された許容距離は、生活空間/活動範囲における自己効力感と呼べるだろう。

そして、今回抄読した研究の結果は、歩行において1km、自転車において2kmを下回る場合、要介護化リスクや死亡リスクが高い状態であることを明らかにした。
これは、退院支援の問診において重要だと思う。

「家に帰ってから、どのくらいの範囲で動けそうですか」
「家からどこまで歩けそうな感じがしますか」

その質問に対しての答えが、1kmを下回った場合には、介護サービスや地域資源の活用需要が高い患者かもしれない。
その患者の頭の中の設計図を、一度展開してみる必要がありそうだ。

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