新しく、明るく、整った環境。高齢者の心身が生き生きする環境とは
📖 文献情報 と 抄録和訳
リビングルームの晩年。部屋の装飾、機能的限界、そして個性
Fingerman, Karen L., et al. "Late life in the living room: Room décor, functional limitations, and personality." The Gerontologist 62.4 (2022): 519-529. https://doi.org/10.1093/geront/gnab093
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 環境老年学と環境心理学の理論は、障害や個人の嗜好に合わせた生活空間の適応を扱っている。本研究では、これらの視点を組み合わせて、部屋の装飾（家具、デザイン、デコレーションなど）が、後期高齢者の機能制限や個性とどのように対応しているのかを検証する。
[方法] 65歳以上の高齢者（N = 286）が、生活環境、機能的制限、性格、抑うつ症状に関するインタビューに回答した。参加者は、最も長い時間を過ごす部屋の写真3-4枚を提供した。評価者は、機能的制限のための物理的適応と19の装飾的特徴（例：混雑、色）について、3つのカテゴリー（(a) 新しさ、(b) 快適さ、(c) 明るさ）に当てはめ、写真をコーディングした。我々は線形回帰モデルを推定し、機能制限や性格が部屋の装飾とどのように関連しているか、また、生活配置がこれらの関連性を緩和しているかどうかを検討した。また、部屋の装飾が抑うつ症状を予測する機能的限界や性格を修飾するかどうかを評価した。
[結果] 機能的制限は、散らかり具合と明るさの低さに関連していた。外向性は新しさ、明るさ（快適さではない）と関連し、良心性は新しさ、快適さ（明るさではない）と関連した。開放性は、一人暮らしの人ほど新しさと明るさと関連していた。モデレーションモデルでは、部屋がより散らかっている場合、機能的制限はより少ない抑うつ症状と関連することが示された。部屋の新しさや快適さが高い場合、良心は抑うつ症状と負の相関があった。
[結論] 本研究で得られた知見は、環境心理学および環境老年学の視点を概ね支持し、機能的能力、個人の欲求、および部屋の特性の「適合性」が、aging in placeの利点に寄与する可能性を示唆するものであった。
🌱 So What?：何が面白いと感じたか？
入院中の患者さんのベッドサイドでは、不思議な現象が起きる。
入院から数日しか経っていないのに、ベッド周りには如実に「その人」が滲み出るのだ。
・ものすごくすっきりと整頓されている方
・逆に床も含めとても散らかっている方
・ほんとうに物が何もおいていない方
・家族からの贈り物に溢れる方
様々だ。
そして、今回の抄読研究は、どのような環境が、どのような健康状態とリンクするかを調査した、とても興味深い研究である。
その結果示されたのは、新しく・明るく・散らかっていない・快適な環境が、高齢者の身体機能、外交性、抑うつなどと関連することが明らかになった。
環境は、人間の心身に影響を与える。
たとえば、散らかった部屋が人間に与える影響を調査した研究がある。
✅ 散らかった部屋は認知資源を枯渇させる
- プリンストン大学神経科学研究所の科学者たちは、機能的磁気共鳴画像（fMRI）などの手法を用いて、人の脳が秩序を好むこと、そして無秩序な状態が常に目に入り続けると、認知資源が枯渇して集中力が低下することを明らかにしている。
- また、彼らの実験結果によれば、散らかった作業環境を整理した場合は、集中力と情報処理能力が改善し、仕事の生産性が高まった。
📕McMains et al. Journal of Neuroscience 31.2 (2011): 587-597. >>> doi.
散らかっていることは、人間の認知に負荷を与え、負荷が加わった状態では、エネルギー量が低減するようだ。
新しさ、明るさ、整頓されている。・・・、病院環境を最適化するのに非常に重要なキーワードだと思った。
すべて、すぐにでも着手できるような環境要因である。
思い立ったが吉日。
まずは、散らかったところを整えることから始めたい。
世界を変えたいのなら「ベッドメイクから始めよう」
マクレイヴン；米海軍特殊部隊SEALsの司令官
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