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痛み × せん妄


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢入院患者における痛みとせん妄の関連性を理解する:系統的レビューとメタアナリシス

📕White, Nicola, et al. "Understanding the association between pain and delirium in older hospital inpatients: systematic review and meta-analysis." Age and Ageing 53.4 (2024): afae073. https://doi.org/10.1093/ageing/afae073
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[背景・目的] せん妄と疼痛は入院中の高齢者によくみられる。これらの関係は不明であるが、臨床的に重要である。我々は、このような集団における疼痛(安静時、動作時、疼痛の重症度)とせん妄の関連を系統的に検討することを目的とした。

[方法] PubMed、EMBASE、CINAHL、PsycINFO、CochraneおよびWeb of Scienceにおいて、Medical Subjecting Headingの用語および類義語(「疼痛」、「鎮痛薬」、「せん妄」)を検索した(1982年1月~2022年11月)。研究適格性:(1)検証された疼痛指標を曝露として、(2)検証されたせん妄ツールを転帰として、(3)参加者適格性:(1)内科的または外科的(計画的/非計画的)入院患者、(2)入院期間≧48時間、(3)コホート年齢の中央値が65歳以上。研究の質はNewcastle Ottawa Scaleで評価した。カテゴリーデータについてはオッズ比(OR)を、連続データについては標準平均差(SMD)を収集/算出し、多段階ランダム切片メタ回帰モデルを実施した。本検討は前向き登録としてPROSPERO[18/5/2020]に登録した(CRD42020181346)。

[結果] 30件の研究が選択された:14件はカテゴリーデータを報告し、16件は連続データを報告した。せん妄有病率は2.2~55%であった。全体として、疼痛を経験している患者はせん妄を経験する可能性が 2.17倍高かった (95% CI 1.35 ~ 3.06)。マルチレベル解析では、安静時疼痛(OR 2.14;95% CI 1.39-3.30)運動時の疼痛(OR 1.30;95%CI0.66-2.56)「重度」に分類される疼痛(OR 3.42;95%CI2.09-5.59)、連続測定時の疼痛重症度の増加(SMD 0.33;95%CI0.08-0.59)がせん妄リスクの増加と関連していた。カテゴリー分析(I2 = 0%-77%)、連続分析(I2 = 85%)ともにかなりの異質性がみられた。

[結論] 疼痛の増加はせん妄発症リスクの上昇と関連していた。適切な鎮痛薬による十分な疼痛管理はせん妄の発生率と重症度を低下させる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前の文献抄読より、せん妄は入院関連機能不全の要因となる大きな問題だ。

せん妄とは、注意や理解、記憶などの機能が急性に低下し、変動することを特徴とする状態。
これが入院中や、発症後、術後に急に生じるのだ。
それに対して、正直なところ、僕は手をこまねいていた。
言い換えると、何をしたらいいのかが明確に分からなかった。

今回の抄読文献は、せん妄に対してできることの1つを提示してくれた。
それが、『痛み(疼痛)』である。
「せん妄をなんとかして下さい」はわかりにくいが、「痛みをなんとかして下さい」だったら、何かができそうだ。
疼痛の評価、治療、また疼痛が生じにくいようなポジショニング。
そして、疼痛がせん妄にリンクしているのであれば、それによってせん妄リスクを下げることにつながる。
せん妄に対しては、まず疼痛治療をしっかりとする、という認識を持ちたい。

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