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鎮痛剤の威力。身体機能, 歩行能力, 疼痛への効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性股関節症または変形性膝関節症の患者において、鎮痛剤が自己申告による身体機能と歩行能力に及ぼす影響:系統的レビューとメタ分析

📕Sveaas, Silje H., et al. "Effects of Analgesics on Self-Reported Physical Function and Walking Ability in People With Hip or Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis." Physical Therapy 104.2 (2024): pzad160. https://doi.org/10.1093/ptj/pzad160
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[背景・目的] 変形性股関節症および変形性膝関節症は、世界的な身体障害の主な原因のひとつであり、その治療の主な目的のひとつは身体機能を改善することである。このレビューの目的は、身体機能(自己報告による身体機能と歩行能力)に対する鎮痛薬の効果を調査することである。

[方法] システマティックレビューとメタアナリシスを行った。鎮痛薬の自己報告による身体機能および歩行能力への影響を調査したランダム化比較試験を対象とした。鎮痛薬は経口投与のアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal antiinflammatory drugs, NSAIDs)、オピオイドとした。データはランダム効果モデルでプールされ、標準化平均差(SMD)と95%CIが算出された(standardized mean difference, SMD:0.2~0.4=小さい、0.5~0.7=中程度、0.8以上=大きい効果量)。エビデンスの質は、Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluationのアプローチに従って評価された。

[結果] 合計1454件の研究が同定され、そのうち33件が組み入れられた。自己報告による身体機能については、アセトアミノフェン(SMD = -0.13 [95% CI = -0.26 to 0.00])、非ステロイド性抗炎症薬(SMD = -0.32 [95% CI = -0.37 to -0.27])、またはオピオイド(SMD = -0.20 [95% CI = -0.32 to -0.09])の小さい有益性があるという低~中程度の質のエビデンスが示された。歩行中の疼痛に対する非ステロイド性抗炎症薬の効果が小さい(SMD = -0.34 [95% CI = -0.45 to -0.23])という中等度の質のエビデンスがあった。

[結論] 変形性股関節症または変形性膝関節症の患者において、鎮痛薬の身体機能および歩行能力に対する有益な効果が小さいことを示す低~中程度の質のエビデンスがあった。影響鎮痛薬は、運動時および歩行時の疼痛を軽減することによって身体機能を改善する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前の文献抄読の考察にも書いたが、しばしば、投稿論文の査読において「鎮痛剤の使用を調査していないけど、なんで?」というコメントをもらうことがある。
「アウトカムが歩行能力やバランス機能なんだけど、鎮痛剤、そんなに影響あるのかな?」と疑問に感じながら、査読コメントには対応してきた。
今回の論文は、『影響あるよ』ということを明らかにしてくれた。
変形性関節症者の鎮痛剤使用が自己報告の身体機能、歩行能力、疼痛に有益な影響を与えた。

この結果から考えると、例えば歩行能力を従属変数にした多変量解析を行った場合、その中に鎮痛剤を入れることが望ましい。
なぜなら、鎮痛剤を使っている人と、使っていない人では、少し歩行能力が異なる可能性があって、その因子で調整されていなければ、真に確かめたい関連性に混乱をきたすことになるからだ。
研究ベースでは、交絡因子としての鎮痛剤の重要性が示された。

そして、臨床ベースでは、痛くて歩きにくい、動きにくい、という場合には医師と相談した上で鎮痛剤の使用を検討することが望ましいかもしれない。
それによって、対症療法的であっても動作能力が高まることで、より効果的なリハビリになる可能性がある。
もちろん、その場合には、副作用の可能性や鎮痛剤を使用することでのデメリットも加味されるべきではあるが。
何にせよ、鎮痛剤について、もっと考えを巡らせたいと感じさせられた。

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