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はじめる力。新たなスキル学習が認知機能を改善


📖 文献情報 と 抄録和訳

複数の実世界スキルの学習が健康な高齢者の認知能力と機能的自立に及ぼす影響

📕Shirley Leanos et al. The Impact of Learning Multiple Real-World Skills on Cognitive Abilities and Functional Independence in Healthy Older Adults, The Journals of Gerontology: Series B, Volume 78, Issue 8, August 2023, Pages 1305–1317 https://doi.org/10.1093/geronb/gbad053
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[背景・目的] 認知的・機能的に著しい成長が認められる幼児期から成人期にかけての自然な学習経験では、複数の実世界スキルを同時に学習することが必須である。本研究では、高齢者において複数の実世界スキルを同時に学習することが可能かどうか、また、それによって認知能力(ワーキングメモリー、エピソード記憶、認知制御)と機能的自立の両方が向上するかどうかを検討した。

[方法] 2つの研究(15名と27名)において、高齢者は少なくとも3つの新しい技能(例:スペイン語、絵画の描画、iPad)を3ヶ月間同時に学んだ。参加者は両研究において、介入前、介入中、介入後に認知的および機能的評価を行った。参加者は、研究1では介入群または接触なしの対照群に順次募集され、研究2では介入群のみが含まれ、介入群も介入開始の4~6週間前に評価を完了した(すなわち、彼ら自身が対照群となった)。

[結果] 両試験の結果から、複数の技能を同時に学習することは可能であり、健康な高齢者にとって有益である可能性が示された。複数の技能を同時に学習することで、介入中期までに高齢者の認知能力が向上し、中年成人の別サンプルにおける成績と同程度のレベルまで向上した。

[考察] 我々の知見は、3つの新規技能の学習を含む実世界技能学習介入を高齢者に実施することの実現可能性と可能性を示している。我々のマルチスキル介入は、寿命の早い時期に経験される利益と同様に、広範な認知的利益をもたらす可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

継続は力なり。
何かを継続して続けることは尊く、とても難しいことだ。
だが、続けていく中で、それらの行動は次第に“無意識化”されていくことも事実。
無意識化されるということは、つまり脳皮質の活動が少なくなる、ことに近い。

何かを続けることと、何かをはじめることは、似て非なるものだ。
同じ語学学習であっても、継続的・習慣的に行われてきた語学学習と、今日から新たにはじめる語学学習では、その意味合いは全く異なってくる。
前者は既存の畑を耕し、後者は新たな土地に鋤を立てることに近い。

認知機能を向上させることには、後者が役立ちそう、ということを今回の抄読研究は明らかにしてくれた。
経験的にも、新たな体験は、とても刺激的で確かに脳をたくさん使っているような印象を受ける。
“はじめ続ける”、ということが、認知機能を保つ、向上する1つのキーワードになりそうだ。

日に新たに、日々に新たに、また日に新たなり
湯王 (中国古代の殷王朝を開いた)

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