脳フレイル(Brain Frailty)
📖 文献情報 と 抄録和訳
虚血性脳卒中またはTIAにおける身体と脳のフレイル: 発生と転帰の共有。コホート研究
[背景・目的] 脳卒中におけるフレイルという概念に対する関心が高まっており、その中には身体的フレイルと画像からわかる脳のフレイルの両方が含まれる。我々は、脳卒中生存者における脳フレイルの有病率を明らかにするとともに、長期的な認知的転帰に対する様々なフレイル尺度の同時的妥当性および予測的妥当性を明らかにすることを目的とした。
[方法] 参加した脳卒中センターの連続入院脳卒中または一過性脳虚血発作(transient ischaemic attack, TIA)生存者を対象とした。ベースラインCTスキャンを用いて、各参加者の脳フレイルスコアを作成した。フレイルはRockwood frailty indexとFried frailty screening toolを用いて測定した。脳卒中またはTIA後18ヵ月の時点での主要または軽微な神経認知障害の有無は、多成分評価により確認した。脳虚弱の有病率は、虚弱状態(頑健、予備虚弱、虚弱)により定義された群内の観察された割合に基づいて設定された。脳フレイルとフレイル尺度の同時妥当性をスピアマンの順位相関により評価した。多変量ロジスティック回帰分析を行い、年齢、性別、ベースラインの教育、脳卒中の重症度をコントロールし、各フレイル尺度と18ヵ月後の認知機能障害との関連を評価した。
[結果] 332人の脳卒中生存者が参加した。
■ 脳フレイルの分布
・Brain Frailty Score 0:84/332人(25%)
・Brain Frailty Score 1:106/332人(32%、95%CI=27-37)
・Brain Frailty Score 2:96/332人(29%、95%CI=24-34)
・Brain Frailty Score 3:46/332人(14%、95%CI=10-18)
■ 脳フレイルと身体的フレイルの関連
・フレイルであった人の4分の3は中等度から重度の脳フレイルであり、その有病率はフレイルの状態に応じて増加した。
・脳フレイルはロックウッドフレイル(Rho:0.336、p<0.001)およびフリードフレイル(Rho:0.230、p<0.001)と弱い相関があった(両尺度とも身体的フレイル尺度)。
■ 脳フレイル、身体的フレイルと18ヶ月後の認知機能障害との関連
・脳フレイル(OR:1.64、95%CI=1.17-2.32)、ロックウッドフレイル(OR:1.05、95%CI=1.02-1.08)、フリードフレイル(OR:1.93、95%CI=1.39-2.67)は、それぞれ脳卒中後18ヵ月の認知機能障害と独立して関連していた。
[結論] 虚血性脳卒中およびTIA患者における身体的フレイルと脳フレイルの評価には価値があると思われる。両者とも不利な認知転帰と関連しており、認知転帰を評価する上で身体的フレイルは依然として重要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
名前は大事だ。
名前があるから、「Aという現象」を、他者と「Aという現象」として共有することができる。
そしてその名前には、たとえ同じ現象を括ったとしても、鮮烈なものと、そうでないものがある。
その意味で、今回の文献抄読のテーマである「脳フレイル」は、名付けで完全に成功を収めている。
フレイルとは、近年非常に注目を集めているワードであり、それと脳をくっつけるとは、そしてその内実も名前とマッチしているとは。
この名付けは、嫉妬すら感じる秀逸さである。
そのスコア付けの定義がやや不明瞭であった点は、今後の改善点か。
とにかくも、脳フレイル、注目のワードである。
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