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SuperAgerの特徴


📖 文献情報 と 抄録和訳

年齢をマッチさせた高齢者と比較したスーパーエイジャーの脳構造と表現型プロファイル:Vallecasプロジェクトからの縦断的分析

📕Garo-Pascual, Marta, et al. "Brain structure and phenotypic profile of superagers compared with age-matched older adults: a longitudinal analysis from the Vallecas Project." The Lancet Healthy Longevity 4.8 (2023): e374-e385. https://doi.org/10.1016/S2666-7568(23)00079-X
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✅スーパーエイジャーとは?
・スーパーエイジャーとは、平均的な中高年と同等の認知機能を示す80代以上の人のことである
・実年齢より20~30歳若い人に匹敵するエピソード記憶を保っている
・スーパーエイジャーのエピソード記憶が維持される仕組みについては、まだあまり研究が進んでいない
・認知症や加齢に伴う記憶力の低下に対するレジスタンス(疾患を回避する能力)を持つのか、レジリエンス(疾患に適応する能力)があるのかは不明だった

[背景・目的] 通常、認知能力、特に記憶力は加齢とともに低下する。しかし、しばしばスーパーエイジャーと呼ばれる、30歳若い人と同じ記憶機能を持ったまま晩年を迎える人もいる。我々は、スーパーエイジャーの脳構造を明らかにし、この表現型に関連する人口統計学的因子、ライフスタイル因子、臨床的因子を同定することを目的とした。

[方法] 2011年10月10日~2014年1月14日に募集したVallecas Project縦断コホートから、79~5歳以上の認知的に健康な参加者を、遅延言語エピソード記憶スコアに基づいて選択した。参加者は、Free and Cued Selective Reminding Testと3つの非記憶テスト(15項目のBoston Naming Test、Digit Symbol Substitution Test、Animal Fluency Test)で評価された。参加者は、自由想起テストと手がかり選択想起テストで50~56歳の平均値以上、3つの非記憶テストで年齢と教育レベルの平均値の1標準偏差以上であればスーパーエイジャー、自由想起テストと手がかり選択想起テストで年齢と教育レベルの平均値の1標準偏差以内であれば典型的な高齢者に分類された。縦断的解析には、プロトコールに従って最大6年間の追跡調査から得られたデータが用いられた。

[結果] 64人のスーパーエイジャー(平均年齢81-9歳;女性38人[59%]、男性26人[41%])および55人の典型的な高齢者(82-4歳;女性35人[64%]、男性20人[36%])を対象とした。経過観察回数の中央値は、スーパーエイジャーで5-0回(IQR 5-0-6-0)、典型的高齢者で5-0回(4-5-6-0)であった。

■ SuperAgerの脳の特徴
・スーパーエイジャーは、内側側頭葉、コリン作動性前脳、運動視床において、断面的に高い灰白質容積を示した。
・容積の差が最も大きかったのは、運動視床の主な構成要素である外側腹側核と、辺縁系の一部である外側背側核だった。
・縦断的には、スーパーエイジャーは、典型的な高齢者よりも、特に内側側頭葉の灰白質の萎縮が緩やかであった。

■ SuperAgersのライフスタイル & 臨床因子
・89の人口統計学的要因、ライフスタイル要因、臨床要因の中で、superagerと一般高齢者の間に有意差が認められる要因を同定した。
・Superagerは、Timed Up & Go Testや指タッピング試験の成績が良好で、運動速度が速く、可動性、俊敏性、バランス感覚が一般高齢者より良好だった。
・しかし、自己申告された運動の頻度には差はなかった。また、状態・特性不安検査、老年期うつ病評価尺度、機能評価質問票、知的機能の簡易評価の結果もsuperagerの方が良好だった。

■ SuperAgersの認知症血中バイオマーカー
・両群のAPOE遺伝子型の分布は同様だった。
・また、血中の神経変性マーカー(Aβ42/40比、t-タウ値、p-タウ181値、p-タウ181/ Aβ4比、GFAP値、NfL値)のレベルには差はなかった。
・スーパーエイジャー群と典型的高齢者群における認知症血中バイオマーカーの求心性が類似していることから、群間差は典型的な加齢に伴う記憶喪失に対するスーパーエイジャー固有の抵抗性を反映していることが示唆された。

[結論] 認知症予防に関連する因子は、加齢に伴う記憶力低下や脳萎縮に対する抵抗力にも関連しており、スーパーエイジングと運動速度との関連は、記憶機能を第9の10年まで維持する方法に関する新たな知見を提供する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ぼくは、年甲斐もなく“Super Human”を標榜させていただいている。
そんな僕にとって、今回の“SuperAgers”という単語は、どうしても見逃せなかった。
そんな興味で読んでみると、とても面白かった。

どうやらSuperAgersをたらしめているのは、先天的なものによるレジスタンスというより、後天的なものによるレジリエンスの要素が大きいらしいということだ。
これは、ありがたい。
なぜって、諦めなくていいから。

「親が〇〇だから、何をしても無駄なんだ」
「生まれつき〇〇だから、もう私は××なんだ」

とか、運命論に走らなくていい。
運命論の最大のデメリットは、それが行動を何も生まない点にある。
後天的要素で何かが変わるとしたら、そこにコントロールの余地が生まれる。
それが、僕たちの生きる希望の1つになる。
この研究に、ありがとうと言いたい。

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