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体格×認知症リスク


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における体格とその変化と認知症発症との関連性

📕Wu, Zimu, et al. "Associations of body habitus and its changes with incident dementia in older adults." Journal of the American Geriatrics Society (2024). https://doi.org/10.1111/jgs.18757
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[背景・目的] 本研究では、高齢者における体格指数(body mass index, BMI)およびウエスト周囲径(waist circumference, WC)、ならびにそれらの短期および長期の経時的変化と認知症発症との関連を検討した。

[方法] オーストラリアと米国の65歳以上の地域在住者18,837人のデータであり、登録時に大きな認知機能障害がなく比較的健康であった。ベースライン時、およびベースラインから2年目(3時点)までの変化と変動を前向きに評価した。サブグループ(n = 11,176)では、18歳と70歳以上における自己申告体重が調査された。認知症症例はDSM-IV基準を満たした。Cox回帰を用いて人体計測値と認知症発症リスクとの関連を検討した。

✅ BMIとWCの定義
- BMIのカテゴリーは、低体重(20.0kg/m2未満)、標準体重(20.0~24.9kg/m2)、過体重(25~29.9kg/m2)、肥満(30kg/m2以上)と定義。
- WCについては、オーストラリア政府保健・高齢者介護省の勧告に従って、低値(男性94cm未満、女性80cm未満)、高値(男性94~101.9cm、女性80~87.9cm)、超高値(男性102cm以上、女性88cm以上)の3つのサブグループが定義された。

[結果] 正常体重と比較して、BMIが過体重(HR:0.67、95%CI:0.57-0.79、p<0.001)または肥満(HR:0.73、95%CI:0.60-0.89、p=0.002)、あるいはWCが大きい(上昇、HR:0. 71、95%CI:0.58-0.86、p<0.001;高値、HR:0.65、95%CI:0.55-0.78、p<0.001;低値に対する相対値)は、ベースライン時の認知症リスクの低下と関連していた。

この図は、ベースラインのBMI(体格指数)およびWC(ウエスト周囲長)と認知症発症リスクの関係を示している。18,621人を対象とした研究の結果である。
この図は、ベースラインのWC(ウェスト周囲長)と認知症発症リスクの関係を示している。18,621人を対象とした研究の結果である。

対照的に、ベースライン後2年間のBMIの大幅な上昇(>5%)は、認知症リスクの上昇と関連していた(HR:1.49、95%CI:1.17-1.91、p=0.001)。認知症リスクの上昇は、ベースライン時のBMIが低体重で、2年間のBMI低下(>5%)でも認められたが、これらの関連は追跡調査の最初の4年間にのみ現れた。18歳および70歳以上の両時点で正常体重であった場合と比較して、両時点で肥満であった場合は認知症リスクの上昇と関連していた(HR:2.27、95%CI:1.22-4.24、p=0.01)が、70歳以上でのみ肥満であった場合はリスクの低下と関連していた(HR:0.70、95%CI:0.51-0.95、p=0.02)。

この図は、若年期から高齢期にかけてのBMI(体格指数)の変化と認知症発症リスクの関係を示している。対象者は11,033人である。

[結論] 我々の所見は、長期にわたる肥満と晩年における体重増加が認知症の危険因子である可能性を示唆している。低体重であること、または老年期に体重が大幅に減少していることは、前臨床認知症の早期マーカーである可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

今回の抄読研究は、Obesity Paradox(関連note参照)の認知症リスクとの側面を明らかにした。
しかも、その調査は一時点の横断的なものだけではなく、長期的な変化との兼ね合いにも光を当てた。
その結果としては、横断的には低体重がリスクが高く、肥満はリスク低下と関連していた。
しかし、長期的には肥満の持続はリスクの増大と関連した。

つまり、肥満が持続することは、やはり認知症リスクにつながるのだ。
低体重には要注意、というメッセージはObesity Pradoxのいつも通りのものだが、肥満の持続にも要注意、というのは新規のメッセージのように感じる。
結局のところ、「中庸」が大事、という結論だろうか。

中庸の徳たる、其れ到れるかな。
論語

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