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腸内細菌と骨代謝。2つの骨免疫学的経路

📖 文献情報 と 抄録和訳

骨粗鬆症における微生物叢-腸-骨軸の潜在的メカニズム:総説

📕He, Yinxi, and Yanxia Chen. "The potential mechanism of the microbiota-gut-bone axis in osteoporosis: a review." Osteoporosis International (2022): 1-12. https://doi.org/10.1007/s00198-022-06557-x
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[背景・目的] 骨粗鬆症は、骨の量や質が低下し、骨格がもろくなることで骨折しやすくなる代謝性骨疾患である。骨粗鬆症による骨折は、患者のQOL(生活の質)や死亡率に深刻な影響を与える。腸内細菌叢の変化が骨量や骨格の変化と関連していることを示唆する証拠は多数ある。我々は、骨粗鬆症における腸内細菌叢の基本的なメカニズムを解明するために、前臨床および臨床研究をまとめた。

[レビュー概要] プロバイオティクス、プレバイオティクス、漢方薬は、腸内細菌叢の異常状態を回復させ、結果として骨代謝を改善する可能性がある。しかし、腸内細菌叢の骨代謝への因果関係については、より深く検討する必要がある。本総説では、腸内細菌叢-骨軸の潜在的なメカニズムと、プロバイオティクス、プレバイオティクス、漢方薬の骨粗鬆症に対するポジティブな治療効果に焦点を当てた。全体として、現在の科学文献は、腸内細菌叢が骨粗鬆症と骨折予防の治療における新しい治療ターゲットになり得ることを支持している。

✅ 腸内細菌と2つの骨免疫学的経路
①Destruction path:制御性T(Treg)細胞とTヘルパー17(Th17)細胞のバランスを調整
・図(上)は、腸内細菌叢が制御性T(Treg)細胞とTヘルパー17(Th17)細胞のバランスを調整することにより、骨代謝を調節していることを示している。ナイーブCD4+T細胞は、Treg細胞とTh17細胞に分化することができる。Treg細胞は、単球の破骨細胞への分化を抑制することにより破骨細胞形成を阻害し、骨吸収を抑制して骨量の減少を抑制することができる。一方、Th17細胞は、炎症性サイトカインを多く産生し、抗炎症性因子を少なくすることで破骨細胞形成を促進し、結果として骨量減少を促進させる。Treg/Th17細胞間のバランスは、骨のホメオスタシス維持に関連している。
②Fromation path:腸内細菌→酪酸→間欠的PTH(iPTH)→Treg→骨形成を刺激
・図(下)は、間欠的PTH(iPTH)が骨形成を刺激するために酪酸塩が必要であることを示している。腸内細菌叢によって産生される許容量の酪酸は、樹状細胞(DC)のGPR43受容体またはGPR43に依存しないシグナル伝達を介してCD4+ T細胞をTreg細胞へ分化誘導することができる。PTHは、CD4+ T細胞上のPTH受容体(PTH1R)への結合を介してシグナルを伝達した。CD4+T細胞のTreg細胞への分化を誘導するPTH/PTH1Rの能力は、酪酸によって増強された。次に、Treg細胞は従来のCD8+T細胞を刺激してWnt10bを産生させる。その後、骨形成細胞に作用するWnt10は骨芽細胞を増加させ、骨形成を促進させる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

運動への意欲、老化、椎間板変性、腹痛…。
これまで、腸内細菌と身体の関係性に迫ったたくさんの文献に触れてきた。
その中で、自分が腸内細菌にもつ印象も、以下のように変わってきた。

『まったく、猫も杓子も腸内細菌、腸内細菌。何でもかんでも腸内細菌といえばいいわけじゃないんだよ!』
自分の天邪鬼な部分は、そう思っていた。
あまりにも、腸〇〇連関、多くない?
でも最近、だんだんと、発想が転換されてきた。
いや、全部なんじゃん?、単に。というように。
つまり、それぞれのアウトカムと腸内細菌が、並列的な関連性というより、腸内細菌はそれらすべての基礎をなすものなんじゃないだろうか。
栄養のように。
いま、明らかになりつつあるのは、腸内細菌がアウトカムに対して、射的のように1 on 1に影響を与えている現象ではなく、ちゃぶ台返しのようにすべて人体の営みに影響を与えている現象である、ということかもしれない。

そんな腸内細菌が、骨代謝にも関与しているらしい。
そして、そのミクロな仕組みが美しい図とともに示された。
気になるのは、メカノスタット理論との兼ね合いだ。

✅ メカノスタット理論とは
・Frost, 1987, Frost, 2003によって提唱された骨のメカノスタット理論は、単純なフィードバックループによって骨組織が力学的環境に適応することを説明している。高い力学的負荷を受けた骨の領域は強固になり、低い力学的負荷を受けた骨の領域は除去される。

📕Lerebours, et al. Journal of Biomechanics 49.13 (2016): 2600-2606. >>> doi.

腸内細菌が舵の一部をとる骨免疫学的経路と、メカノスタット理論の影響度は、どちらが大きいのだろうか(影響度/配分性)?
はたまた、骨免疫学的経路が保たれた上で、メカノスタット理論が機能するのだろうか(順序的関係性/必要-十分関係)?
1つの知識は、たくさんの疑問と手をつないでやってくる。
いやはや、困ったものだ。
それが、面白いのだけれども。

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