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腸-椎間板連関。椎間板変性と腰痛の原因?

📖 文献情報 と 抄録和訳

腸-椎間板軸。椎間板変性と腰痛の原因?

Li, Wentian, et al. "Gut-disc axis: A cause of intervertebral disc degeneration and low back pain?." European Spine Journal (2022): 1-9.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, 日経メディカル

[背景・目的] 腰痛(LBP)は、世界中で広く蔓延し、費用のかかる疾患であり、主に椎間板(IVD)変性(IDD)が原因である。この変性過程の引き金となる要因は数多くあるが、近年、腸内細菌叢の異常が有力な原因のひとつであると考えられている。しかし、腸内細菌叢とIDDの正確な関係はよく分かっていない。このレビューでは、潜在的なメカニズムを要約し、腸内細菌叢の異常がIDDおよびLBPに及ぼす可能性のある影響について議論する。

[方法] 前向き文献レビュー。

[結果] 腸内細菌叢組成の変化とマイクロバイオータに対する宿主応答が病的な骨の発生と退縮を引き起こすことから、腸-骨髄軸および腸-骨軸という概念が生まれた。さらに、IDDやLBPにおける腸内細菌叢の役割を説明するために、腸-ディスク軸の概念も提唱された。既存のエビデンスによると、腸内細菌叢は、IVDの外部および内部の微小環境を変化させたり調節したりすることで、IDDを誘発・悪化させる重要な因子である可能性がある。腸内細菌叢がIVDを誘発し、LBPを引き起こすメカニズムとして考えられるのは、以下の3つです。

✅ 腸内細菌叢がIVDを誘発し、LBPを引き起こすメカニズム
(1). 腸管上皮のバリアを越えてIVDに移行すること:腸管の炎症によりバリア機能が衰えて透過性が高まり、腸内細菌が血流に入り、椎間板に移行する。椎間板は内部に血管がない組織だが、外傷や炎症があると新生血管が増加するため、免疫機能をかいくぐった一部の細菌が椎間板に到達しやすくなる。
(2)粘膜および全身性免疫系の制御:上皮のバリア機能の弱体化により透過性が高まると、腸内細菌叢と粘膜免疫系の接触が増加する。この過剰な接触は、活性化した免疫細胞の大量流入を引き起こし、膨大な量の炎症性サイトカイン(例えば、IL-6およびTNFα)を血流中に放出して骨代謝にも影響を与える。
(3)腸管上皮での栄養吸収および代謝物形成とIVDへの拡散の制御:エンドトキシン/LPSのような細胞壁成分、SCFAs/D-乳酸のような細菌の代謝産物が、免疫細胞が産生する炎症因子と共に血流に乗って、遠く離れた椎間板に炎症を誘発するというもの。

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✅ 図. 腸-椎間板連関モデル:椎間板変性症を制御する腸管上皮障害シグナルのモデル。腸内細菌は、腸内細菌叢の移動と組成を調節し、腸管知覚能力と炎症を増大させ、代謝物の吸収を変化させることによって、腸内環境を変化させる。これらの変化は、IDDを引き起こす可能性のある局所的および全身的な反応を引き起こす可能性があります。A 病原体の移動、B 免疫系の変化、C 微生物代謝産物の産生とサイトカイン

さらに、IVDが病原性細菌によって開始されるかどうかを調べ、特定の微生物群の存在と当該疾患との相関を確立するために、16S rRNAデータに基づく腸内細菌叢多様性分析を用いて、IVD患者の便/血液微生物叢を特徴付けることが可能である。

[結論] 今後、体外受精疾患における腸内細菌叢、真菌、ウイルスに関する研究が、体外受精疾患発症におけるそれらの役割の可能性に関する我々の考えを一新するために必要である。また、腸内細菌叢をターゲットにした炎症の抑制やカスケード反応の増幅の抑制は、IDDやLBPの治療において意義があると考えられる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『まったく、猫も杓子も腸内細菌、腸内細菌。何でもかんでも腸内細菌といえばいいわけじゃないんだよ!』

自分の天邪鬼な部分は、そう思っていた。
あまりにも、腸〇〇連関、多くない?
でも最近、だんだんと、発想が転換されてきた。
いや、全部なんじゃん?、単に。というように。
つまり、それぞれのアウトカムと腸内細菌が、並列的な関連性というより、腸内細菌はそれらすべての基礎をなすものなんじゃないだろうか。
栄養のように。
いま、明らかになりつつあるのは、腸内細菌がアウトカムに対して、射的のように1 on 1に影響を与えている現象ではなく、ちゃぶ台返しのようにすべて人体の営みに影響を与えている現象である、ということかもしれない。
「ちゃぶ台の上にある一つ一つの挙動が、ちゃぶ台の傾きと相関します」なんて、当たり前のことだろう。
そんな壮大なことが、明らかになりつつあるのかもしれない。
これ大陸だぞ、多分。

栄養は補給であり、戦場における兵糧であり、リハビリにおける改善の基礎をなす。

そのイメージは、みんな持ちつつある。

腸内細菌は衛生であり、戦場における衛生兵であり、栄養と同じくリハビリにおける改善の基礎をなす。

このイメージは、まだ持っていない、というかそれが妥当なイメージなのかもわからない。
だが、血流が運ぶのは栄養だけではないことは確かだ。
毒を洗い流し、清潔を保つ・免疫を届ける。
その免疫の陣営地が、『腸』、なのか。
そうだとすれば、腸内細菌は改善の、同化のピラミッドの基盤をなす一要素となる。
今後、栄養とともに改善の基礎要因(Basic Factor of Recovery:BFR)と呼んでみる。
間違っていたら、すぐに頭のイメージを改良すればいい。
近い将来、アルブミンとともに腸内細菌についてのデータ収集がマストになるかもしれない。

椎間板が引き起こす疼痛についての関連note ⬇︎

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