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高齢脳卒中者の視空間無視の有病率


📖 文献情報 と 抄録和訳

老年脳卒中リハビリテーションにおける視空間無視の有病率、重症度、影響に関する横断的研究

📕Bosma, Martine S., et al. "Prevalence, Severity and Impact of Visuospatial Neglect in Geriatric Stroke Rehabilitation, a Cross-Sectional Study." Journal of the American Medical Directors Association 24.11 (2023): 1798-1805. https://doi.org/10.1016/j.jamda.2023.06.038
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[背景・目的] 視空間無視(Visuospatial neglect, VSN)は、脳卒中後によくみられる側方注意の認知障害であり、患者の日常生活や地域社会への参加、介護者の負担に悪影響を及ぼす可能性がある。VSNの有病率はいくつかの混合年齢集団で調査されているが、高齢者集団のみで調査されることはまれである。老年期リハビリテーション(geriatric rehabilitation, GR)におけるVSNの有病率については十分な研究がなされておらず、VSNはGRにおけるリハビリテーション目標(在宅復帰)に影響を及ぼす可能性があるため、我々はVSNの有病率だけでなく、VSN(重症度)と集団特性との関連、およびGR後の機能、入院期間、退院先に対するVSNの影響についても検討した。

[方法] デザイン:多施設横断研究。設定および参加者:GRに入院した脳卒中患者。方法:3つのVSNテスト(星印キャンセル課題、線分二等分課題、Catherine Bergego Scale)をGR入院後2週間に実施した。VSNの重症度を検討するため、3つの検査のスコアに基づいて複合スコアを算出した。

✅ VSNサブタイプの概要
・自己中心性無視(egocentric neglect):対人刺激に注意するのが遅いか、できない。星形キャンセルのような図形キャンセレーション課題は、自己中心性無視を捉える感度が高いことが知られている。
・物体中心性無視(allocentric neglect):空間内の位置に関係なく、物体の片側を処理できない。線分切断課題は、より物体中心性無視の評価に適している。

[結果] 合計114名の脳卒中患者が対象となった[55.3%が女性、平均年齢80.2歳(SD 8.0)]。VSNの有病率は47.4%で、日常生活動作中のVSNよりも物体中心性無視と自己中心性無視の方が多かった。
※成人全体の有病率は30%と報告+ (📕Esposito et al., 2021 >>> doi.)

VSNの患者は、VSNのない患者と比較して、GRでの滞在日数が長く(中央値68.5日対35.5日)、在宅復帰回数も少なかった。さらに、VSNの参加者は、VSNのない参加者と比較して、移動能力が低く、認知機能が低く、セルフケアにおける自立度が低かった。移動能力、セルフケア、認知機能、リハビリテーション期間、在宅復帰は、VSNの重症度と負の相関を示した。

[結論] VSNはGR脳卒中集団に非常に多くみられる。VSNは高齢者の日常生活やリハビリテーションに大きな支障をきたし、個人的にも社会的にも大きな影響を与える。したがって、老年期リハビリテーションの初期段階において、複数のVSNスクリーニング検査を用いてVSNを系統的に評価することが推奨される。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

有病率などの疫学は、なぜ知っておくことが重要なのだろうか?
1つには、評価や治療の無駄打ちをなくす、効率化があると思う。
例えば、仮に脳卒中者のVSN有病率が0.01%だったとして、VSNの評価を定期評価に組み込むことは、非効率であろう。
逆に、今回の研究で明らかになったように、47.4%がVSNを有病しているとすれば、VSNの有病、重症度や特徴を捉えるための評価が定期評価に組み込まれることは、むしろ効率的、効果的なことであると思われる。
全体の大きな分布や動向を知っておくことは、集団としてどう動くかに役立つかもしれない。

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