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脳卒中者へのミラーセラピーの威力

📖 文献情報 と 抄録和訳

亜急性期および慢性期脳卒中における下肢運動回復、バランス、歩行に対するミラーセラピーの有効性: システマティックレビュー

📕Kundi, Maryam Khan, and Nicola J. Spence. "Efficacy of mirror therapy on lower limb motor recovery, balance and gait in subacute and chronic stroke: A systematic review." Physiotherapy Research International (2023): e1997. https://doi.org/10.1002/pri.1997
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✅ 前提知識:ミラーセラピーとは?
・ミラーセラピー(Mirror therapy, MT)とは、手足に鏡を挟み、患部以外の手足が動いているように見えることで、患部の手足が正常に動いているように錯覚するリハビリテーション療法。
・これにより、運動、感覚、痛みに関するさまざまな脳領域が刺激される。

📕Thieme, Holm, et al. Cochrane database of systematic reviews 7 (2018). >>> doi.

[背景・目的] ミラーセラピー(Mirror therapy, MT)は、脳卒中の下肢リハビリテーションに有効な治療法であると提唱されている。本総説は、脳卒中の亜急性期および慢性期における下肢運動機能、バランス、歩行に対するMTの有効性を、脳卒中の特定の段階に焦点を当て、特異度の高い評価指標で評価した最初の総説である。

[方法] PRISMAガイドラインに従い、「PIOD」フレームワークを用いて、2005年から2020年までの関連するすべてのソースを検索した。検索方法は、電子データベース、ハンドサーチ、引用文献の検索を行った。スクリーニングと品質評価は、2名の個人査読者によって行われた。10件の研究からデータを抽出し、総合的に判断した。テーマ別分析を考慮し、ランダム効果モデルを使用し、フォレストプロットを用いてプール分析を行った。

[結果]
■ 運動機能の回復に対するミラーセラピーの効果
・Fugl-Meyer AssessmentとBrunnstorm stagesをアウトカム指標として、MTは対照群と比較して統計的に有意な効果を示した(SMD 0.59; 95% CI 0.29 to 0.88; p < 0.0001; I2 = 0%).

■ バランス機能の回復に対するミラーセラピーの効果
・MTのバランス機能に対する効果は、Berg Balance ScaleとBiodexを用いたプール解析において、コントロールと比較して統計的に有意な改善が報告された(SMD 0.47; 95% CI 0.04 to 0.90; p = 0.03; I2 = 0%)。
・電気刺激や動作観察トレーニングとの比較では、MTはバランスについて有意な改善を示さなかった(SMD -0.21; 95% CI -0.91 to 0.50; p = 0.56; I2 = 39%).

■ 歩行の回復に対するミラーセラピーの効果
・歩行については、MTは対照群と比較して統計的かつ臨床的に有意な改善を示した(SMD 1.13; 95% CI 0.27-2.00; p = 0.01; I2 = 84%)。
・行動観察トレーニングや電気刺激と比較すると、10m歩行テストとモーションキャプチャシステムを用いて統計的改善を示した(SMD -0.65; 95% CI -1.15 to -0.15; p = 0.01; I2 = 0% ) 。

■ ミラーセラピーの良い適応、推奨される頻度・方法
・重度の認知障害がなく、MMSEスコア≧24、FACレベル≧2の18歳以上の脳卒中患者において、MTが亜急性期および慢性期の下肢運動回復、バランス、歩行に有効であることが示された。
・MTは30分/日、5日/週、4週間、運動回復とバランスに単独で、または歩行に電気刺激を補助的に使用することで、有益な効果が得られると考えられる。

[結論] これらの結果は運動回復、バランス、歩行について、亜急性期および慢性期の脳卒中に注意しながら一般化することができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ミラーセラピーといえば、以前に幻肢痛を軽減させる介入として文献抄読で紹介した。

今回は、脳卒中患者へのミラーセラピーの効果、特に回復期と維持期の脳卒中患者に対する威力が示された。
個人的に気になったことは、この介入を行うタイミングである。
介入開始時(筋トレ前)なのか、歩行前なのか、それとも自主トレーニング時なのか…。
具体的にどのように実践することが望ましいか。

個人的には筋トレ前が望ましいのかとも思われたが、これはもう少し勉強したい。
何にせよ、本格的な臨床実践を見据えて、勉強を進めていきたい。

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