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脳卒中後の運動器リハビリテーション


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後の運動器リハビリテーション: 欧州脳卒中機構(ESO)のコンセンサスに基づく定義と指導の枠組み

📕Kwakkel, Gert, et al. "Motor rehabilitation after stroke: European Stroke Organisation (ESO) consensus-based definition and guiding framework." European Stroke Journal (2023): 23969873231191304. https://doi.org/10.1177/23969873231191304
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[背景・目的] 脳卒中後の運動リハビリテーションについて、コンセンサスに基づいた定義と枠組みを提案すること。

[方法] 欧州の専門家によるワーキンググループが文献を検討し、外部からのフィードバックを経て内部的なコンセンサスを得た。

[結果]
■ 脳卒中後の運動器リハビリテーションの定義
・運動器リハビリテーションとは、脳卒中患者の日常生活における運動機能、活動能力、パフォーマンスを向上させるためのプロセスである。運動機能、自立性、参加性を向上させることを目標とする、運動機能障害が残存するすべての人々にとって必要なものである。
・運動器リハビリテーションは、学習と使用依存(use-dependent)のメカニズムを通して、運動障害を軽減し、活動機能を向上させることに努めている。運動機能回復の軌跡は、患者や回復の段階によって異なる。初期の段階では、運動機能の行動的回復は、神経学的自然回復の基礎となるメカニズムに依存する。後期段階では、代償によってさらなる機能改善が達成される
・運動器のリハビリテーションは、患者報告によるアウトカムを含む、コンセンサスに基づいた測定法を用いて、運動機能と活動性を定期的に評価することによって導かれる。その結果は、個人的な目標を設定するために、患者やその介護者と話し合われる。
・運動器リハビリテーションの核となる要素には、運動制御の原則が組み込まれており、患者は、適切な量の反復的、目標指向的、漸進的、課題特異的、状況特異的な訓練を通して、運動機能、感覚機能、認知機能を最適化し、適応させることを学ぶ。
・運動器リハビリテーションは、脳卒中患者が健康、幸福、生活の質を最大化できるよう支援する。
※定義段落の冒頭のトピックセンテンスは91.7%の同意を得た。次の3つのサポート・センテンスは、コンセプトのさらなる説明であり、それぞれ75%、91.7%、81.8%の同意を得た。最後の結論文は91.7%の一致率であった。

■ 脳卒中後のパターン、プロセス、治療の機会
・いくつかの縦断的研究から得られた知見によると、ほとんどの脳卒中患者において、自発的な神経学的回復と行動回復は、年齢や完了した治療の種類や量にかかわらず、脳卒中後最初の10週間以内に停滞するロジスティックパターンをたどることが示されている(📕Dobkin, 2016 >>> doi.)
・急性期の治療戦略:回復は神経学的自然回復の基礎となるメカニズムに依存。一般に血栓溶解や再開通などの治療。
・回復期-維持期の治療回復:回復は代償による機能回復が加わる。組織の再構築を促し機能回復を図る。

■脳卒中後の運動器リハのプロセスの要約

本フレームワークは、脳卒中の文脈における機能・障害・健康の国際分類を説明し、行動回復と代償の神経生物学的機序を説明し、臨床診療ガイドライン(2016-2022)からの強い推奨とともに、臨床評価、予測ツール、運動介入に関する推奨事項を要約している。

[結論] この定義と枠組みは、臨床教育者を導き、臨床医に現在の推奨とガイドラインを知らせ、エビデンスベースのギャップを明らかにするものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この論文に記載された脳卒中後の運動器リハの定義は、そうそうたるメンバーによるコンセンサスのようだ。

その内容を見てみると、近年の脳卒中リハ領域における基本的事項の総まとめのように感じた。
脳卒中後の回復の経時的プロセスと治療パターンについての図は、参考になる。
当たり前のことかもしれないが、理学療法士は縦軸(治療領域の広がり)と横軸(治療時期による適応)を頭に描きながら治療を進めていくものだお再認識した。

特に、脳卒中リハにおいては病態レベルの回復過程が経時的に全然変わってくるので、そのときにどのようなリハビリが適するのかも、刻々と変わっていく、という感覚が望ましいだろう。
枝葉に出会ったときに、いつも戻るべき幹のような論文だと感じた。

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