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薬としての笑い


📖 文献情報 と 抄録和訳

薬としての笑い:自然な笑いがコルチゾールレベルに及ぼす影響を評価した介入研究の系統的レビューとメタアナリシス

📕Kramer, Caroline Kaercher, and Cristiane Bauermann Leitao. "Laughter as medicine: A systematic review and meta-analysis of interventional studies evaluating the impact of spontaneous laughter on cortisol levels." Plos one 18.5 (2023): e0286260. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0286260
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※ Connected Papersとは? >>> note.

✅前提知識:コルチゾールとは?
・コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一種です。ストレスを感じると多く分泌されることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれている。
・コルチゾールの主な役割は、一時的なストレスから身を守り、体の正常な状態を維持すること。
・コルチゾールは、私たちの健康維持に必要不可欠な存在。
・しかし、慢性的なストレスにより過剰なコルチゾールが分泌され続けると、以下のような症状を引き起こすリスクが高まる
→免疫力が低下する、血圧や血糖値、コレステロール値が上昇する、脂肪がつきやすくなる、うつ病を発症しやすくなる

🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] ユーモアの表現としての笑いは、何世紀にもわたって良薬として認められてきた。しかし、ユーモアがもたらす幸福の健康への有益性については依然として不明な点が多い。そこで我々は、介入研究の系統的レビューとメタアナリシスを行い、自然発生的な笑いがコルチゾール値で測定されるストレス反応に及ぼす影響を評価した。

[方法] デザインシステマティックレビューおよびメタアナリシス。データソースMEDLINE/PubMed、EMBASE、PsycINFO、Scopus、Clinicaltrials.gov。適格基準成人を対象に実施された介入研究(無作為化プラセボ対照試験(RCT)または準実験的研究のいずれか)で、自発的な笑いの介入を対照環境と比較し、コルチゾール値の変化を報告したものを選択した。データの抽出と統合ランダム効果モデルを用いて、介入前後の算術平均値の絶対差のプール推定値を算出し、コルチゾール値の変化率に対する笑いの影響を検討した。

[結果] 8件の研究(315人;平均年齢38.6歳)が組み入れ基準を満たした;4件はRCT、4件は準実験研究であった。5つの研究ではユーモア/コメディビデオの視聴の影響を評価し、2つの研究では訓練を受けた笑い療法士による笑いのセッションを評価し、1つの研究では自己管理型の笑いのプログラムを評価した。これらのデータをプールしたところ、出版バイアスの証拠はなく(P = 0.66)、対照群と比較して笑いの介入によってコルチゾールレベルが31.9%(95%CI -47.7%〜-16.3%)有意に減少したことが示された。感度分析では、1回の笑いのセッションでもコルチゾールが36.7%(95%CI -52.5%〜-20.8%)有意に減少した。さらに、4つのRCTを含む分析では、プラセボ群と比較して、笑いによって促進されたコルチゾールレベルの有意な減少が示され、これらの結果を補強した[-37.2%(95%CI -56.3%~-18.1%)]。

[結論] 自発的な笑いは、通常の活動と比較して、コルチゾールレベルをより低下させるという現在のエビデンスが証明され、笑いが幸福感を向上させる補助的な医療療法となる可能性が示唆された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ユーモアや笑い、明るい気分が病気の回復に結びつくことは、今では数えきれないほどの研究によって証明されている・・・・・・あまり笑わない人、いつも暗い気分でいる人は、心理学者のアイゼンクが言う「疾病誘発パーソナリティ」の持ち主である。こういう人は、楽観的な人より病気にかかりやすく、病気にかかると、ほかの人が同じ病気になったときより治りにくい。こういう言い方もできる。病気になったとき、その病気をどう受けとめるかによって、病気は治りやすくも治りにくくもなるし、治る早さも違ってくる。
パッチ・アダムス

パッチ・アダムスの言っていたことは、近年になって、科学的に証明されつつある。
文献抄読「あり」の中でも、楽観主義者と寿命の関連、TKA術後の転帰との関連があることや、気質と健康アウトカムの関連の理論モデルなどの抄読をしてきた(関連 note参照)。

そして、これらのことは臨床経験からも、至極納得のいく話なのである。
初回の理学療法において、悲観的な発言が多いことや、疼痛に対して必要以上にセンシティブであることは、「この方の機能予後や改善速度は、あまり良いものにはならないだろう」という推察をもたらす。
そして実際に、そうなることが多いのだ。
その負の感情が負のアウトカムを呼ぶ連鎖を打開する1つの手立てとして、「笑い」があるかもしれない。

相手に笑いをもたらすことは、「コルチゾールレベルの減少」を引き起こす。
ストレスホルモンと呼ばれるこのホルモンが減少すると、その過剰分泌による身体への弊害が軽減され、異化(分解方向)に傾いた身体の代謝を同化(合成方向)に寄せることができる可能性がある。
パッチ・アダムスはジョークを連発するユニークな療法で、人々の心と体を癒した。
患者さんの悲観傾向を、少しでも楽観傾向に変えることができる技術があるなら、それは徒手療法と同等か、それ以上の働きをするかもしれない。
ユーモアを、学ぼう。
笑い療法士の一人に、なりたい。

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