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車椅子使用者の転倒


📖 文献情報 と 抄録和訳

長期療養環境における車椅子使用者の転倒の特徴と結果

📕Snyder, Makenna B., et al. "Characteristics and consequences of falls in people who use wheelchairs in long-term care settings." Journal of the American Medical Directors Association 25.5 (2024): 796-801. https://doi.org/10.1016/j.jamda.2024.03.108
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[背景・目的] 本研究の目的は、長期療養環境において車椅子を使用している人の転倒の特徴と結果を理解することである。

[方法] 研究計画:長期介護における実際の転倒の観察分析。設定および参加者カナダのブリティッシュ・コロンビア州にある2つの長期介護施設で車椅子を使用している入所者(n = 32人、平均年齢 = 84.7歳、女性12人)。方法:車椅子からの転倒の原因的側面、行動的側面、環境的側面を評価するために、2名の評価者が、有効な転倒ビデオ分析質問票(オリジナル版から改変)を使用した。

[結果] 2007年から2014年までに収集された全動画300件のうち、合計58件の車椅子転倒動画が確認された。

この図は、車椅子を使用している参加者における転倒の原因とパターンを4つの側面から分析している。具体的には「転倒の原因」「転倒時の活動」の2つの円グラフで構成されている。

1. 転倒の原因:
・最も一般的な転倒の原因は「不適切な体重移動や移乗操作」であり、全体の71%を占めている。次に多いのが「つまずき」(19%)、続いて「意識喪失(LOC)」が5%、「ぶつかり」(3%)、そして「すべり」(2%)である。
2. 転倒時の活動:
・転倒が発生した状況を示しており、46%が「移乗中にバランスを失った」ことによるものである。33%が「座位または車椅子を自分で動かしているとき」に、21%が「支持基底面外での手を伸ばしていたとき」に転倒している。

この図は、車椅子を使用している参加者における転倒の原因とパターンを4つの側面から分析している。具体的には「転倒の方向」「着地の配置」の2つの円グラフで構成されている。

3. 転倒の方向:
・転倒の方向としては「後方への転倒」が57%と最も多く、「前方への転倒」が21%、「横方向への転倒」が19%、そして「真下への転倒」が3%である。
4. 着地の配置:
・着地の仕方では「後方に着地」が62%で最も多く、次いで「横方向に着地」(33%)、そして「前方に着地」が5%となっている。

■ 転倒による損傷部位

この図は、車椅子を利用する人々が転倒した際に、どの部位がどれくらいの頻度で損傷を受けたかを示すものである。横軸には体の部位(骨盤、体幹、手首/手、肘、膝、肩、頭)が、縦軸には転倒の全体に占める割合(パーセンテージ)が表示されている。

🥇骨盤:骨盤が最も多く影響を受け、全体の89.7%の転倒で損傷を受けている。
🥈体幹:次に多いのが体幹で、51.7%の転倒で損傷が見られる。
🥉手首/手:手首や手は41.4%の転倒で影響を受けている。
④肘:肘も同様に41.4%の転倒で損傷を受けている。
⑤膝:膝は34.5%の転倒で損傷を受けている。
⑥肩:肩は31.0%の転倒で損傷を受けている。
⑦頭部:頭部は15.5%の転倒で損傷を受けている。

車椅子を使用している人の保護反応は限られており、ステップ反応を示したのはわずか10.3%であった。ブレーキ位置が不適切であったことが転倒の67.2%に関与していた。転倒に関連した重傷は報告されなかった。

[結論] この調査結果は、長期介護環境で車椅子を使用する高齢者の転倒の特異な性質を浮き彫りにしている。全体として、本研究の結果は臨床実践を支持し、長期ケアで車いすを使用する個人のための専門的な転倒予防および転倒検知介入を開発する重大な必要性を支持するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、「移乗動作時の転倒」だけに着眼した文献を抄読した(関連note参照)。
その文献においては、移乗動作を立ち上がり期、安定期に分けて分析していたが、転倒方向としては、後方、側方が多かった。
今回抄読した研究においては、転倒方向としてはやはり後方が最も多い結果で、これはある程度一貫した真実に近いのかもしれないと感じた。

注目すべきは、転倒原因の一位で「不適切な体重移動や移乗操作」(71%)。
なぜここに注目したかといえば、リハビリテーションの練習で変化させうる項目、だと思ったからだ。
体重移動、移乗動作の手順獲得・指導などは、リハビリテーションの主戦場の1つだろう。
そこを徹底する、看護師、看護補助者と情報共有をしっかりする、それで71%の車椅子使用者の転倒が防げるかもしれない。
重心移動、移乗動作練習への熱量が、さらに高まりそうだ。

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