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転倒ビデオ分析。移乗中の転倒状況と傷害リスク

📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における座位から立位への移乗時の転倒状況。長期介護におけるビデオ撮影された転倒のコホート研究

📕Komisar, Vicki, et al. "Circumstances of falls during sit-to-stand transfers in older people: A cohort study of video-captured falls in long-term care." Archives of physical medicine and rehabilitation (2022). https://doi.org/10.1016/j.apmr.2022.10.012
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[背景・目的] 長期介護(long-term care, LTC)における座位から立位への移乗時の転倒状況(頻度、方向、踏み込みと把持の反応、傷害リスクなど)を、実際の転倒のビデオ分析に基づいて特徴付けること。

[方法] デザイン:コホート研究。実施場所:長期療養施設。参加者数:2007年から2020年にかけて収集された、183名のLTC居住者による座位から立位への移乗中に発生した306件の実際の転倒のビデオ映像を解析した。平均年齢は83.7歳(SD=9.0歳),93名が女性(50.8%)であった。主なアウトカム指標:一般化推定方程式(GEE)を用いて、座位から立位の立ち上がり期と安定期の間に居住者が少なくとも1回転倒する確率の差を検定し、転倒が発生した移乗の段階(立ち上がり期と安定期)と以下の転帰との関連を検定した:(1)最初の転倒方向、(2)ステップ反応の発生、数、方向、(3)環境支持物の把握、(4)文書化された傷害。

✅ ビデオ分析における転倒と時期分けの定義
・立ち上がり期:転倒は、転倒の始まりが、入居者が明らかに椅子から立ち上がろうとしている(胴体の動き、足の位置の変更、アームレストやその他の支持物を押すことで示される)ものの、まだ膝を伸ばして立つ姿勢に至っていない場合
・安定期:転倒は、入居者が立ち上がり後にバランスを崩し、立ち上がり後15秒以内に転倒した場合、安定期に発生したものと分類した。

[結果] 転倒の発生頻度は、立ち上がり段階が安定段階の2倍であった(それぞれ64.0%、36.0%)。立ち上がり時の転倒は後方に向かうことが多く、安定期の転倒は横向きに向かうことが多かった(オッズ比=1.95;95%信頼区間=1.07-3.55)。立ち上がり時の転倒は把持動作を伴うことが多く、安定時の転倒はステップ動作を伴うことが多かった(把持. OR = 0.30; 95%CI = 0.14-0.64; ステップ. OR = 8.29; 95%CI = 4.54-15.11). 転倒による傷害リスクは、立ち上がり段階よりも安定化段階の方が高かった(OR = 1.73; 95%CI = 1.04-2.87)。

🌍 図の引用サイト >>> site.

[結論] 座位から立位への移乗中の転倒の多くは、移乗の立ち上がり段階でのアンバランスから生じていた。しかし、その後の安定期における転倒は、怪我を引き起こす可能性がより高かった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、移乗動作についてはいくつかの文献抄読をしてきた。
そこで学んだことは、
①移乗時の転倒はFIMスコア4(自立する目前)の患者で最も多く、

②車椅子の準備や手すりの操作が難しい、ということだった。

今回の研究は、②の観点に近く、移乗動作をサブタスクに分けたとき、転倒時の頻度や特徴はどのようなものかを詳細なビデオ分析にて明らかにしてくれた。
具体的には、転倒は立ち上がり期に多いが、安定期の転倒の方が傷害リスクにはつながりやすかった。

臨床現場においては、各患者ごとに苦手な局面は特定できそうだ。
立ち上がりが難しいのか、立位バランス-Stepが難しいのか、またはその両面か。
その部分の特定によって、介入や環境調整の考え方も、大いに変わってくるだろう。
やはり、動作全体をサブタスクに分けて考える、評価する、介入することは有用だと感じる。

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