股関節形成不全の寛骨臼・骨頭被覆の評価方法12選
📖 文献情報 と 抄録和訳
股関節形成不全における寛骨臼蓋被覆の特徴の性差とは?
[背景・目的] 発育性股関節形成不全(developmental dysplasia of the hip: DDH)による変形性股関節症を予防するために、遠心性回転臼蓋骨切り術が行われる。 十分な臼蓋被覆率を得るためには、DDHにおける臼蓋被覆の特徴を理解する必要がある。 しかし、DDHの男性における臼蓋被覆の特徴は不明のままである。 臼蓋被覆における男女差は、男女間の骨盤形態の差に関連している可能性があると考えた。
■ 目的:(1) 変形性股関節症の女性と男性における寛骨臼被覆面積の違いは何か? (2) 変形性股関節症の女性と男性における腸骨と坐骨の回旋の違いは何か? (3) 変形性股関節症の女性と男性における各高さでの腸骨と坐骨の回旋と寛骨臼被覆面積の関係は何か?
[方法] 2016年から2023年の間に、当院で遠心性回旋臼蓋骨骨切り術を受けた患者は114名(138股)であった。Tönnisグレード2以上、外側中心縁角25度以上、骨盤や大腿骨の変形を認める患者は除外し、最終的に100名(122股)が対象となった。女性患者(98例)の年齢中央値(範囲)は40歳(10歳~58歳)であり、男性患者(24例)の年齢中央値(範囲)は31歳(14歳~53歳)であった。全例の術前AP像とCTデータを使用した。AP像でクロスオーバーサイン、後壁サイン、骨盤幅指数を評価した。軸位面上の恥骨結合の回旋は、CTデータにおいて2つの異なる高さ、具体的には上前腸骨棘を通るスライスと恥骨結合および坐骨を通るスライスで評価した。さらに、寛骨臼前方および後方のセクター角を評価した。各患者における女性と男性の寛骨臼測定値および寛骨臼被覆率測定値に関する変数の比較を行った。骨盤形態測定値と寛骨臼被覆率の相関関係は、女性と男性で個別に評価し、その結果を比較して性差を特定した。連続変数についてはスチューデントのt検定を、二値変数についてはフィッシャーの正確検定を用いた。p値が0.05未満の場合は統計的に有意であるとみなした。
■ 股関節形成不全の寛骨臼・骨頭被覆の評価方法12選
[結果] AP 撮影の評価では、臼蓋後捻の指標であるクロスオーバーサインに男女差は認められなかったが、後壁サイン(女性 46% [98 例中 45 例] 股関節 対 男性 75% [24 例中 18 例] 股関節、OR 3.50 [95% 信頼区間 (CI) 1.20 ~ 11. 71;p = 0.01)および骨盤幅指数が56%未満(女性1% [1/98] 対男性17% [4/24]、OR 18.71 [95% CI 1.74~958.90]; p = 0.005)は、女性よりも男性でより頻繁に発生した。腸骨回旋パラメータに差は認められなかったが、恥骨では男性の方が外旋が大きいことが示された(女性30°±2°、男性24°±1°;p < 0.001)。寛骨臼のカバー率については、前方寛骨臼角において男女間に差は認められなかった。一方、後方寛骨臼角では男性の方が女性よりも値が小さかった(85° ± 9° 対 91° ± 7°;p = 0.002)。女性では、腸骨回旋と寛骨臼角(前方寛骨臼角:r = -0.35 [95% CI -0.05 to 0.16]; p < 0.001、後方寛骨臼角:r = 0.42 [95% CI 0.24 to 0.57]; p < 0.001)との間に相関関係が認められた。同様に、坐骨回旋は両方の寛骨臼角と相関関係を示した(前方寛骨臼角:r = -0.34 [95% CI -0.51 to -0.15]; p < 0.001、後方寛骨臼角:r = 0.45 [95% CI 0.27 to 0.59]; p < 0.001)。したがって、女性では、外側腸骨筋の回転と坐骨の内部回転が、前方の寛骨臼被覆の増加と後方の被覆の減少と相関していることが観察された。一方、男性の寛骨臼被覆は腸骨筋の回転と相関を示したが(前方の寛骨臼角:r = -0.55 [95% CI -0.78 to -0.18]; p = 0. 006、後部寛骨臼角:r = 0.74 [95% CI 0.48 to 0.88]; p < 0.001)との相関関係が認められたが、坐骨回転との相関関係は認められなかった。
[結論] 男性では、臼蓋後捻は女性よりも多く発生し、臼蓋後被覆の減少が原因である。女性では、臼蓋後被覆の増加は坐骨の外旋角度と相関していたが、男性では、坐骨回旋と臼蓋後被覆との間には相関は認められなかった。男性のDDHを遠心性回旋臼蓋骨骨切り術で治療する際には、後臼蓋被覆の不十分を防ぐために骨片を調整することが不可欠である。今後の研究では、さまざまな肢位における男性と女性の後臼蓋被覆の違いを調査し、骨片の回転方向を考慮する必要があるかもしれない。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
抄読部分が長文となったので、考察は短めに。
股関節形成不全の寛骨臼・骨頭被覆の評価方法には、たくさんの方法があって、難しい印象があった。
今回の抄読研究は、その結論もさることながら、測定方法を美しい図でしっかりと示してくれた。
これは、研究ベースだけではなく、臨床ベースでもとても参考になった。
個人的に、特に参考になったのは知ってはいたがぼんやりした知識だったクロスオーバーサイン、後壁サイン。
しっかり測って、しっかり解釈し、しっかり治療に生かしていきたい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓
‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び