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股関節における関節包, 関節軟骨の付着


📖 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨頭頚部前方接合部における関節包の付着: 大腿骨寛骨臼インピンジメントに関する仮説

📕Tsutsumi, Masahiro, et al. "Capsular attachment on the anterosuperior femoral head–neck junction: A hypothesis about femoroacetabular impingement." Journal of Anatomy (2024). https://doi.org/10.1111/joa.14046
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[背景・目的] 大腿骨寛骨臼インピンジメント(Femoroacetabular impingement, FAI)は、大腿骨近位部と寛骨臼の病的な接触を特徴とし、変形性股関節症の一般的な前駆症状である。カムの形態は、FAIの原因となる骨隆起であり、大腿骨頭と頚部の接合部の前上方に形成されることが多い。大腿骨頭頸部接合部は関節軟骨と関節包に覆われた境界領域であるという解剖学的コンセンサスがあるにもかかわらず、関節包が前上方関節軟骨と連続しているかどうかは依然として不明である。本研究では、カムの形態形成を解剖学的に考察するために、大腿骨頭頸部前方接合部の関節包付着部の組織学的特徴、特に関節包と関節軟骨との連続性の有無に着目して検討することを目的とした。

[方法] 本研究では、7股関節(男性3名、女性4名、死亡時平均年齢68.7歳)から採取した合計21個の前上方領域(12時、1時30分、3時の位置について各7股関節)を組織学的に解析し、Massonのトリクローム染色による組織切片を用いて関節包の厚さを定量的に評価するとともに、関節包の付着状態を定性的に評価した。

[結果] 本研究の結果、関節包は凹部から大腿骨頭頸部接合部に向かって近位に折れ曲がり、線維性と滑膜性の領域が混在していることが示された。注目すべきは、関節包が関節軟骨の表層に続いているだけでなく、線維軟骨を介して関節軟骨に付着していたことである。この連続領域は比較的繊維質で、縦方向に密な結合組織が走っていた。

前上方関節包が関節軟骨の表層まで続いており、線維軟骨(アスタリスク)を介して関節軟骨に付着していることが明らかになった。このように、カム形態の頻発部位では、何らかの力学的ストレスが関節包から関節軟骨に伝達される可能性が解剖学的に示された。

陥凹部における関節包の厚さ(平均、1.7±0.9mm)および関節軟骨遠位端における関節包の厚さ(0.35±0.16mm)は、関節軟骨の最表層厚さの対照値(0.019±0.003mm)よりも有意に大きかった(DunnettのT3、いずれもp値<0.001)。

[結論] 関節包と関節軟骨の間の線維性連続性とその厚さに基づき、本研究は、カム形態の頻発部位において、何らかの機械的応力が関節包から関節軟骨に伝達される可能性を解剖学的に示唆している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

今回の研究から、これまで連続しないと考えられていた「関節包が関節軟骨と連続する」ことが明らかとなった。
これによって、臨床思考過程にどのような影響を与えるだろう。

実行のなかにのみ学問がある。行動しなければ学問ではない。
王陽明「伝習録」

知識は、それそのものでは学問にはならない。
行動につながってはじめて、学問といえるのだ。
臨床思考過程との関連においては、論文中において以下のような考察がなされていた。

1. メカニカルストレスの伝達: 関節包が関節軟骨と連続していることは、関節包から関節軟骨にメカニカルストレス(力学的な負荷)が伝達されることを意味する。この連続性により、特に関節包と関節軟骨の接続部位でストレスが集中する可能性がある。これは、カム変形(cam morphology)の形成と関連している可能性がある。カム変形は股関節の骨および軟骨の異常成長であり、関節痛や運動制限の原因となることがある。
2. カム変形の発生メカニズム: 研究によると、カム変形は関節軟骨の肥厚に先行して発生することが示唆されている。関節包と軟骨の連続性により、関節包から軟骨へと伝わるメカニカルストレスが、カム変形の発生に寄与する可能性がある。この連続性がカム変形の頻発部位である股関節頭-頸部接合部において重要な役割を果たすと考えられている。
3. 臨床的意義: この連続性の理解は、関節包と関節軟骨の相互作用を通じた関節の病態生理学を解明する手がかりとなる。例えば、関節包の肥厚や線維軟骨の形成がカム変形の進行を助長する可能性があるため、これらの構造の変化を早期に検出し、適切な治療を行うことが、将来的な関節症の予防につながる可能性がある。

これを読んで感じたのは、これまでの理解では主に摩擦やインピンジメントストレスがFAIを引き起こすトリガーとして認識されていたが、関節包と関節軟骨が連続していることから、関節包の伸張ストレスもFAIを引き起こすトリガーになりうる可能性がある、ということ。
しっかりとした解剖学に基づいて、地に足がついた臨床思考過程をとっていきたい。

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