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Wall-Slide Exerciseの微調整。3種類の味変

📖 文献情報 と 抄録和訳

セラバンドを用いた上肢のウォールスライドエクササイズの改善について

📕Uysal, Özgün, et al. "Theraband Applications for Improved Upper Extremity Wall-Slide Exercises." Journal of Athletic Training 57.8 (2022): 795-803. https://doi.org/10.4085/1062-6050-0305.21
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

✅ 前提知識:ウォールスライドエクササイズとは(以下YouTube参照;35秒〜)?

🔑 Key points
🔹肩甲骨を安定させるために、臨床家は上肢のウォールスライド+手首セラバンドを使用する必要がある
🔹肩の外転に重点を置くには、ウォールスライド+肘セラバンドを使用しべきである
🔹上肢ウォールスライド運動の+セラバンドは、より目標に沿ったアプローチをとるために臨床の場で使用することができる

[背景・目的] ウォールスライドエクササイズは、臨床や研究の場でよく使用されている。股関節の運動におけるセラバンドによるポジショニングのバリエーションは検討されているが、上肢のウォールスライド運動におけるセラバンドによるポジショニングのバリエーションは、一般的には使用されていないにもかかわらず、検討されていないのが現状である。目的:セラバンド(肘、手首)の位置の違いが、ウォールスライド運動における肩甲骨筋と肩関節筋の活性化に及ぼす影響を評価し、これらのバリエーションを互いに、また通常の上肢のウォールスライド運動と比較することである。

[方法] 記述的実験研究。実施場所は大学の研究室。健康な肩を持つ計20名(年齢=23.8±3歳、身長=176.5±8.14cm、体重=75.3±12.03kg、肥満度指数=24.23±4.03)。介入(複数):参加者は、ウォールスライド運動(通常と2つのバリエーション:+肘セラバンドと+手首セラバンド)を無作為化された順番で実施した。主なアウトカム評価項目:僧帽筋(僧帽筋上部[upper trapezius, UT]、僧帽筋中部[middle trapezius, MT]、僧帽筋下部[lower trapezius, LT])、棘下筋、三角筋中部(middle deltoid, MD)、前鋸筋(serratus anterior, SA)の表面筋電図の活動性。

[結果] 通常のウォールスライド運動(Normal)では、MD筋の活動は低く、SA筋の活動は中程度であった(SA筋の最大随意筋収縮率[MVIC]の32%)。一方、肘セラバンド(+Theraband elbow)および手首セラバンド(+Theraband wrist)では、MT筋、LT筋、MD筋の活動は低く、SA筋の活動は中程度(それぞれSAのMVICの46%と34%)。手首セラバンドでは、Normalや肘セラバンドと比較して棘下筋の活動が高かった。UTの活動は、すべてのウォールスライド運動バリエーションにおいて、ない、または最小限(MVICの0%から15%に分類される)であった。手首セラバンドは、通常のウォールスライド運動や肘セラバンドと比較して、UT:MT、UT:LT、UT:SAレベルが低いことが示された。

[結論] 肩のリハビリテーションにおいて、肩甲骨安定化筋の活性化を望む臨床家は、手首セラバンドの使用を検討するべきである。肩関節外転筋をより活性化し、肩甲骨安定化筋をより活性化したい場合は、上肢ウォールスライド運動の肘セラバンドを使用することを検討する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

重錘というのは便利だ。
ただ巻き付けるだけで、負荷量の調整ができて、漸進性の法則に沿うことができる。
だが、大きな限界がある。
それは、『方向性』である。
重錘は、重力の僕だ。
常に重力の方向にしか負荷を加えることができない。
そのため、重錘に行うことができるのは、自重負荷の増強だけ。
それは量的であり強度的な調整である。
食事でいえば、大盛りでありおかわりである。

一方、今回の研究で使用しているセラバンド。
重錘の限界である『方向性』を克服している。
引っ張られた方向の逆に負荷を加える、という特徴がある。
だから、とてもオーダーメイド性の高い負荷調整ツールといえる。
あとちょっとだけ、この方向に負荷を加えたい、この運動に「+1 factor」を加えたい。
そんな要望に応えてくれるツールだ。
それは質的な調整である。
食事でいえば、七味であり、ワサビであり、味変である。

今回は、具体的なエクササイズとしてもとても勉強になったが、それ以上にセラバンドの使い方として、『+ 1 factor』という用途が知れてよかった。
ミクロだが、確かな漸進だ。

およそ真に偉大な事業は、徐々に、目立たぬように達成される
セネカ

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