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フレイルの性差


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者におけるフレイルの性差

📕Zeidan, Rola S., et al. "Sex differences in frailty among older adults." Experimental Gerontology 184 (2023): 112333. https://doi.org/10.1016/j.exger.2023.112333
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🔑 Key points
🔹女性の方が平均寿命は長いが、フレイルの発生率も高い。
🔹制御可能な因子と制御不可能な因子がフレイルと長寿の性差を調節している。
🔹制御可能な因子には、心理社会的な違いやライフスタイルの違いがある。
🔹制御不可能な因子には、染色体的、遺伝的、エピジェネティック、生理学的なものがある。
🔹これらの因子を理解することで、フレイルを軽減し長寿を増進するための性特異的介入を開発することができる。

[レビュー概要] 定義によれば、老化は自然で緩やかかつ継続的な過程である。一方、フレイルはストレス要因に対する脆弱性の増大を反映し、疾病のない期間(健康寿命)を短縮させるが、長寿は生命の長さ(寿命)を意味する。平均寿命はここ数十年の間に著しく伸びた。寿命の延長は、高齢者におけるフレイルの増加や自立度の低下を伴っており、男女間には大きな違いがある。例えば、女性は男性よりも長生きする傾向があるが、同時にフレイルや障害の割合も高い。性差は、フレイルを効果的に予防するための生活習慣への介入や治療法の最適化を妨げている。フレイルと加齢における性差は、制御不可能な因子(遺伝的、エピジェネティック、生理学的)と制御可能な因子(心理社会的、ライフスタイル的因子)の間の複雑な相互作用に根ざしている。したがって、フレイルと加齢における性差の根底にある原因を理解することは、高齢男女のヘルシーエイジングを促進し、QOLを向上させるための個別化介入を開発するために不可欠である。本総説では、加齢とフレイルにおける性差に関連する主要な貢献者と知識のギャップについて論じた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「性差医療」という言葉がある。

✅ 性差医療とは?
- 性差医療とは、男女の様々な差異により発生する疾患や病態の差異を念頭において行う医療である。
- また、これらの差異を研究する学問は性差医学と呼ばれる。
- これまでの医学は成人男性を標準として、病態とその推移、診断方法、治療方法などを確立してきた。しかし近年では、同じ疾患に対する危険因子でも寄与度に男女差がある場合があること、同じ医薬品でも効果に男女差がある場合があることなどが明らかになりつつある。
- 原因として男女のホルモンバランスの違い(生物学的要因)や生活習慣の違い(社会文化的要因)などが挙げられているが、いずれにしても男性を基準として作成した診断方法や治療方法をそのまま女性に適用した場合、最良の医療とはならない可能性がある。
- 性差医療とは、これらにおける男女差を研究し、医療に反映させようという行いである。

🌍 参考サイト >>> site.

男女平等という旗印のもと、社会的には次第に平等に近づいていている印象がある。
しかしながら、身体の構造や機能、老化の進行においては、やはり違いはあるようだ。
今回抄読した論文は、フレイル発症、寿命の性差についてレビューしてくれた。

興味深かったのは、その差を生み出している要因に、制御不可能な因子(遺伝的、エピジェネティック、生理学的)と制御可能な因子(心理社会的、ライフスタイル的因子)があることだ。
制御可能な因子については、性別による違いを加味した指導や介入が可能になるかもしれない。
変えられる部分に光を当てたい。

神よ、変えることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。
変えるべきものを変える勇気を、
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えて下さい。

ニーバーの祈り

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