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魚油の摂取が、骨格筋タイプ割合を変える


📖 文献情報 と 抄録和訳

エイコサペンタエン酸はラットにおいてPPARδおよびAMPK経路を介してタイプ1筋線維の割合を増加させる

📕Komiya, Yusuke, et al. "Eicosapentaenoic acid increases proportion of type 1 muscle fibers through PPARδ and AMPK pathways in rats." Iscience 27.6 (2024). https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.109816
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, プレリリース
🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 骨格筋を構成する細胞である筋線維は代謝や収縮特性の違いから遅筋タイプ(type1)、速筋タイプ(type2B)および中間タイプ(type2A, 2X)に分類される。筋線維タイプごとに性質が異なり、遅筋タイプの筋線維は収縮速度が遅く、ミトコンドリアを豊富に含み、脂質酸化能力に優れ、疲労しにくい特徴を持つ。一方の速筋タイプの筋線維は収縮速度が速く、解糖系能力に優れ、疲労しやすい。中間タイプはおおよそ両者の中間的な性質を有している。このような特徴の違いから、筋線維タイプ構成は代謝特性と密接に関連しており、遅筋線維の増加は抗疲労性かつ脂質を燃焼しやすい体質づくりに貢献できる。以前、食餌性の魚油摂取がラットにおいて筋線維タイプを遅筋方向へ移行することを報告した(📕Mizunoya et al., 2013, PLoS ONE >>> doi.)。しかし、その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。そこで、本研究では魚油に含まれる特徴的な脂肪酸に着目し、ラットの骨格筋線維タイプ、骨格筋機能や全身代謝に対する作用やその機序を明らかにすることを目的とした。

[方法-結果] 魚油に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)のPPARδアゴニスト活性を調査した結果、EPAが合成アゴニストに匹敵する高い活性を示し、DHAではこの活性が確認されなかった。EPAを4週間ラットに投与すると、酸素消費量が増加し、筋力と筋持久力も向上した。さらに、EPA投与により筋線維タイプが遅筋タイプへ変化し、MyHC1の発現が増加した。網羅的解析からは、EPAがPPARδおよびAMPK経路を活性化し、TCAサイクルを促進することが示唆された。

[結論] 以上より、私たちは魚油に含まれるEPAの新規機能性として「骨格筋の遅筋線維割合を増加し、全身脂質代謝・筋機能を向上する」ことを明らかにした。本研究の成果は、古くから知られていた魚油摂取が脂肪燃焼を促進する理由の一端を解明するとともに、魚油摂取が脂質燃焼作用の亢進や抗疲労性体質の獲得といった運動トレーニングと類似した効果を引き起こすことを明らかにした。上記の成果は健康科学分野やスポーツ科学分野に貢献できると考えている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「Fish or Beef?」

そう聞かれたならば、真っ先に『Fish🐟』と答えた方が良いだろう。
僕は、そう思う。
これまでの文献抄読においても、そのことを学んできた(関連文献を参照)。

このうちの1つの研究において地中海食は、心血管疾患発症リスクを低減させた。

✅ 地中海食とは何か?
・地中海食とは、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理のことで、以下のような共通の特性がある
・地中海食の特性
①果物や野菜を豊富に使用する
②乳製品や肉よりも魚を多く使う
③オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う
④食事と一緒に適量の赤ワインを飲む

🌍 参考サイト >>> site.

言うなれば、心血管疾患リスク低減のためには、Beef < Fishでバランスの取れた食事が善、だ。
そして、今回抄読した研究は、Fishを選択すべき理由をさらに1つ追加してくれた。
それは、『EPAの摂取は、骨格筋タイプ割合を遅筋を多くし、疲れにくい身体を作る!』である。
この理由は、心血管リスクの低減より強力だと思う。
なぜならば、骨格筋タイプや疲労は、心血管疾患リスクよりも、普段の生活により密着したアウトカムだからだ。

「Fish or Beef?」→(食い気味に)『Fish🐟』!

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